mixiユーザー(id:13668040)

2020年01月05日22:32

234 view

初出一覧の作成〜東京・高知・岡山・北海道(旭川)、植民地台湾の同人誌

地方にある各文学館がこれほど貴重だと思ったことはない。こういった文学館は、県や市町村またはNPOなどによって営まれており、細々とでも地方の文学愛好家たちが集う場所になっているように思う。そういった場所を誰が利用するのかといえば、まずはその地域の方だろうが、その地域にかつて生きて書いた詩人や作家(決して全国に知れ渡った方でなくとも)の遺品や蔵書などがときに収蔵されている場合がある。そうでない場合ももちろんある。

私が調べている戦前の詩人は、当時文壇も詩壇も「文芸復興期」(平野謙曰く「昭和10年前後」)を迎えつつあり、全国に詩誌があって交流が盛んだったようだ。たとえば鹿児島で出ていた『南方詩人』という同人誌に高村光太郎が書いている、草野心平が書いているということが普通にありえた。当の詩人は、なんと地元鹿児島はもちろん東京・高知・岡山・北海道(旭川)、植民地台湾の同人誌に約3から4年のうちに相当数の詩編を書き継いでおり、それらを探すのに先に書いた文学館が手助けしてくれるのだった。

行ってもよいがあるかどうかわかないのに、基本的には北海道まで行くわけにはいかない。そこでこういった地元の文学館の方にメールや電話で問い合わせるのだ。そうすると、相手もへーえという感じで聞いていらっしゃるが、そのうちそれならあるかもしれませんね、と言葉を聞くと震えるような気持ちが起きる。まじか、あるのかと。特に旭川から資料が届いたときは発掘のおもしろさを知った。こんなことがあるんだなという以外にない。ダメもとで探しているような探索だが、ある別な詩人の足跡からもしかしてその方が亡くなっていて、その家の資料が近くの文学館にあるとするなら、と考え問い合わせたわけであるが、それがあります!と言われると、「奇跡か」と思うのが普通だろう。

そういったことはそう何度もないが、昨年は問いあわせた資料のほとんどが手に入るような「奇跡」が続いた。1冊しか出してない詩集にある詩編が最初にどのようなところに発表されたのかを探索し「初出一覧」を作成している。どこどこの文学館に行けばホンモノもあるよ、と知らせられればよいと考えている。コピーはほとんど手元に置いている。

こういった経験はだれもが体験できることではない。しかしこういった探索を海外に広げるとまたわくわく感や困難な体験が味わえるのだろうが、何かのめぐりあわせなのだろう。無名の詩人の探索を続けてよかったと思えるのは、こちらが導いて読むという主体的な試みのつもりが、途中でこちらが学ばせてもらっているとしか言えないようなところへ導かれるということだ。

今回の論文の最終回がほぼできた。まだ少しだけ直すつもりだが、ほぼできたと思う。あとは本にするかどうかは、読んでもらった皆さんのご意見を聞きながらにしたい。私は無名の詩人の墓碑を作るつもりでこんなことをやっているわけではない。むしろ蘇える力を秘めたものをそこに感じるゆえに調べて書いてきた。何かここに現代に生かせるヒントがあると思ってもらえるならうれしい。

10 5

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する