mixiユーザー(id:9176443)

2019年12月11日01:13

80 view

未来のカラス23

フォト



浄化される森


一本のツタが瞬く間に
大きな森を作り
いつのまにか
数百種にも及ぶ草花、植物が
身を寄せるようになった。


かつての仲間は
ウェッジの元に行った。


この広大な地球に
未完成な人間と子供が
たった数万人。


戦争も暴動も何も起きずに
人の心によって再生された。


悪魔に魂を喰われたウェッジは
肉体も魂もなかったが、
意識だけはわずかに残っていた。


目的はセシルに会うこと。


どこを探していいのか
どこにいるのか
死の世界は
抽象的で
寒かった。


悪魔も神もいない
荒唐無稽な世界に
身を任せるだけで
動きたくても動き方も分からず
ただ、そこにただずむ以外なにも
出来なかった。


かつてウェッジが撃ったメンバーすら
誰もいなかった。



セシルはセシルでウェッジと同じとこにいた。


最後にセシルが思ったことは
ウェッジへの深い愛情だと、
伝えたかった。


セシルの魂はウェッジのそばを
クルクル回るだけで
見つかることもなかった。


セシルもウェッジも
ゆくゆくは英雄扱いされるだろう。
殺して英雄になるなんて
戦争でもないのに。

しかしこれは独立運動と位置づけされるのだろう。


しかし2人にはそんな名誉などいらなかった。


人間を人間として救う、

という大義名分に生かされていただけだった。

命をかけて、仲間を守るために。


死に方としては本望だったが、
セシルもウェッジも
思いや名残が続く辛い時間だった。



まるで4次元にいる意識だけのウェッジ
世の中に魂として彷徨うセシルには
近くにいても何光年も離れた存在だった。



2人が作った新しい地球は
見違えるほど変わった。


変わっても地球からすると
生態系が変わっただけで
宇宙の歴史からしたら
一瞬の出来事だった。



ウェッジには薄れゆく意識の中で
無にらなりかけようとしていた。


ウェッジは泣いた。


一人間として
家族としての時間や
恋人としての
たった少し時間が数秒でいいから欲しかった。


不憫に思ったフクロウは
最後に口からウェッジの魂を吐き出した。


その代わり
見た目はウェッジではなく
人間が想像する悪魔のマスクを被らされた。


真後ろにいるのはセシル。
セシルも背中に気配を感じた。

フォト




セシルには見た目こそ悪魔だが
一目でウェッジとわかった。

会話は出来ない。

寄り添う魂が宙を舞った。

1分ほどだろうか、

魂は消え
元に戻った。
フォト




セシルとウェッジは愛し合い、
抱き合い、
愛情を全て示した。


そして二度と2人が触れ合うことはなかった。

やがてウェッジの魂も
セシルの魂も消えて

空はアートのような
美しい彩りで人々を魅了した。


ウェッジが用意したスクリーンに
セシルが落書きをしたように。




1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する