中学1年生の頃の社会科のF先生は生徒たちから慕われるいい先生だったので、私もF先生（違うクラスの担任でしたが）に、ちょっと謎かけの年賀状を書いたことを覚えています。
富士山の真後ろ上方に太陽を描き、それをその年の干支（寅？）が頂上から30�劼涼賄世膿神橘未�ら眺めているイラストを描いて「寅は何県にいるでしょう？」とやったのです。
私の幼稚な計算では、年賀状に富士山と太陽なので、F先生は、これをてっきり初日の出と思い込み、太陽は東にあるから寅がいるのは富士山の頂上から西30�劼涼賄澄△垢覆錣岨獲�県にいると答えるに違いありませんでした。そして、F先生がそう答えてきたら、「残念でした。この太陽は初日の出とは限らず、夕日の可能性もあるので、寅は神奈川県にいる可能性もあります」と小生意気なことを言ってやる予定でした。
でも、F先生は、流石で、最初から「山梨県と神奈川県の可能性がある」とお答えになり、私の幼稚な企みは瞬殺されてしまいました。
この話を思い出したのは、港町ル・アーブルの夜明けを描いた『印象−日の出』という有名なモネの絵（上掲写真）にも、日の出か夕日かの問題があり（『日の出』というタイトルは本来別の絵に付けるべきタイトルを画家自身が誤ってこの絵に付けたとみる余地があった）、つい最近それが解決され、さらに日時までもが特定されたということを知ったからでした。テキサス州立大学の天文学者、ドナルド・オルソン教授が2014年9月に発表したことでした。
それによれば、オルソン教授は、まず、この絵が描かれたのとほぼ同時期のル・アーブルの地図や写真を参考に、モネが絵を描いたホテルと部屋を特定し、絵がその部屋から見た南東方向の風景であることを突き止めました。そして、港との位置関係から、太陽は日の出から20〜30分後の位置にあることを割り出したのです。
さらに、描かれた船の位置から潮の満ち引きを調べ、1872年11月から1873年1月までの複数日を候補日として導き出しました。これをさらに絞るため、当時の気象の記録を調べ、悪天候の日を除き、さらに風向きなどの条件も加えて検討したところ、1872年11月13日と1873年1月25日のどちらかが最終候補として浮かび上がりました。
ではいったいどちらなのか？
この最後の謎を解くカギは絵の中にありました。左下端に「72」とサインがあったのです。そこで、これを1872年を示すものと判断し、その結果、この絵が描かれたのは、1872年11月13日午前7時35分頃である可能性が高いと結論づけられたわけです。
いやはやすごいものです。
画面に荒い筆触を残すこの絵は、発表当時、「作り始めの壁紙の方があの海景よりは完成している」などと酷評されたようですが、今や日時までもが（ほぼ）特定されているとは、モネ自身も思いがけなかったことでしょう。
念のため：前段の私のイラストが描かれた日時は今も不明です（誰も調査・研究していませんが）。
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