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2019年10月22日09:35

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佐藤賢一著「ナポレオン3転落篇」を読んで

照る日曇る日 第1302回

第4次対フランス大同盟が成立した1806年、ナポレオンはプロイセンに遠征してベルリンに入城。翌年はロシア軍と戦って勝利し、翌々年はマドリッドが蜂起したスペインの暴動も収めるが、1809年には第5次大同盟の一角オーストリアと戦ってウイーンを占領する。

1812年には大同盟の中核を叩くにしかずとロシアに遠征するが、モスクワを焼き払ったロシアの抵抗にあって運勢が急速に傾き始める。この間ジョセフィーヌを離縁しオーストリア皇女マリー・ルイーズと思いがけない純愛の時を体験するが、翌年にはドイツに遠征してライプチヒで4国連合軍に敗れ、1914年からはフランス国内で防衛戦を戦うが、留守を預かるタレイランの陰謀でパリに臨時政府が樹立され、絶望して服毒するも失敗、ついにエルバ島へ追放される。

ところがどっこい翌15年2月26日にはエルバ島を脱出して「奇跡の100日天下」が始まるが、6月18日のワーテルローの戦いで敗れて、今度こそ帰らずの島セントヘレナに流され51歳で癌で亡くなるのである。

コルシカ生れの一介の軍人が、よくも欧州のみならず世界秩序を騒然とさせたものだと思うが、著者の導きでその航路をたどると、幾多の社会的必然性と奇跡に近い偶然性がその超個性的な覇道を成就させたことがうなづける。

それにしても彼がもう少し慎重かつ冷静にワーテルロー前夜に振る舞っていたら、宿敵フーシェの陰謀を跳ね返して、100日といわずあと千日位の天下は続けられたのではなかろうか。

著者はこの3巻の小説奈翁伝を書くためにおよそ60冊の和書と200冊の洋書(殆どが仏書)に目を通しているいるようだが、小説を書くのも大変だなあ。

     黄櫓染御袍を凛々しく身に纏い高き御座に神懸る人 蝶人


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