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2019年10月06日07:24

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1985年 ジャマイカ旅ー15

ドレッドが運転する車はネグリルの町を通り抜け、人家も疎らな海沿いの道を走った。少しづつ標高が高くなる。眼下に海を望む、高台の雑木林の間を走っていると、赤ん坊をあやしながらウェインがアンディに言った。「この土地は幾らくらいする?アンディ」と。それから恐ろしい会話が始まった。「今は分からないよ。でも、ここはシカゴのマフィアの持ち物だぜ」「フーン、シカゴの誰だ?」「フィリップ・ナントカと言う男さ」「ああ、多分俺の知ってる奴だ。とにかく良い土地があったら俺に知らせろよ、アンディ。この辺ならいい商売になる」と言って、振り向いたウェインの目が鋭く光った。(やっぱり、マフィアだ。どうしよう)とんだ所に迷い込んだと後悔した。

ワーゲン・ゴルフは人気の無い淋しい道を走った。雑木林や野原を通り過ぎ、遠くの光る海が時々現れる。野原では、茶、黒、白と色とりどりの山羊たちが緑に埋もれるようにして、草を食べていた。

車内では、アンディがマイケル・ローズのイベントの儲けを皮算用してウェインに売り込んでいた。「何故、ラスタのお前がそんなに金を欲しがる?」ウェインが皮肉な質問を浴びせた。「金があれば、俺たちの故郷、ゲットーの子供たちに学校も作ってやれるし、飢えた子に食い物もやれるじゃないか」アンディが重々しく答えた。「俺が金を出そうか。学校なんかすぐ建つぜ」ウェインが皮肉っぽく言うと、アンディはムカツイタようだった。「俺は自分の金でやりたいんだよ!」なんとなく気まずい雰囲気・・・・・。僕は小さくなっているだけ。

車は走り続けたが、途中の道にラケットを持った白いテニスウェアの若い白人女性がこちらを見てニッコリした。「ヘイ!ジェーン。乗ってけよ!」とウェインが窓から手を出して叫んだ。「彼のワイフだ」アンディが囁いた。大胆なカットのタンクトップから豊かな胸がこぼれ落ちそうだった。
車が停まった。ジェーンが車内を覗いて言った。「何よ、一杯じゃない。無理よ」助手席のウェインは赤ん坊を抱いたまま外に出ると、彼女の手をとって、車のボンネットに無理やり乗せた。そして車に戻ると、「OK!レッツ、ゴー」と叫んだ。車はノロノロ走りはじめる。ジェーンは車のアンテナと屋根の端をつかみながら、カリブの太陽と風を気持ち良さそうに浴びていた。「ヘイ!ガール!最高のシートだな」通りすがりの男が声をかけた。「ベイビー、ご機嫌だろ?」ウェインが赤ん坊の手を振りながら大声で言った。

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