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2019年10月02日22:44

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SWEET SIXTEEN

映画『SWEET SIXTEEN』を視聴しました。かつて予告編だけ見た覚えがあります。

純粋だが愚かであるが故に環境に押し流されていく無力な子供の物語。

作品単体として観た場合は良作です。ただ、わたしは北野武作品が好きで、とくに初期作品を何度も繰り返し視聴してしまっているため、どうしても既視感を覚えずにはいられません。ストーリーラインは『キッズリターン』。映像は『ソナチネ』。

『キッズリターン』では名シーンと名高いネガティブな印象を払拭するあのエンディングが、『ソナチネ』ではすべての負債を清算する無情なエンディングが、それぞれの作品を引き締めていたのですが、『SWEET SIXTEEN』にはそれがありませんでした。そのため、物語というよりはドキュメンタリー的な味わいに。

粗削りな印象すらある『キッズリターン』や『ソナチネ』に比べると手慣れた感じで綺麗に作られていますが、その分勢いが失われており、それ故に「ビッグ・ジェイはなぜあの短期間でリアムを認めたの?」「ピンボールはなぜ家に放火したの?」「ピンボールはどうなったの?」「どういう顛末でビッグ・ジェイはピンボールを始末できないリアムに部屋を与えたの?」といった細かな疑問が浮かび上がってきてしまいます。

――ということで、独断と偏見によるわたし的『SWEET SIXTEEN』は以下。

リアムとピンボールの関係はもう少し密に描き、決裂前の時点でピンボールが約束を破って薬を使用していることに気が付いたリアムの葛藤が欲しいところ。そのうえでリアムはビッグ・ジェイに認められるために母親との幸せな生活とピンボールとを天秤にかけて、自らピンボールを売ることを決断。損切りができるリアムはビッグ・ジェイにとっても有効な捨て駒となるが、ここが大きなターニングポイント。自分を売ったリアムに激昂したピンボールが放火する流れなら納得。その後、ピンボールを探し出したリアムが事故っぽい流れで自ら手を下すことにして後戻りできなくしたうえで、クライマックスへ。そして、この展開なら犠牲になるのはスタンではなくジーン。最後は姉側の視点に変えて、電話口に銃声を響かせて暗転エンド。

勢いを削るなら、これくらいの丁寧な描写と整合性と重さが欲しかったところです。

とは言え、前述通り作品単体として観たらその年の5本の指には入るほどの良作であり、このビターエンドに対して『SWEET SIXTEEN』というタイトルをつけたところにもセンスを感じさせられました。振り返ったときに子供だったことを思い知らされるのが切ない。
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