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2019年09月12日20:43

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【読書】 最近読んだ本 備忘録

最近読んだ本の備忘的メモ。


●「よみがえる非ユークリッド幾何」 (足立恒雄著、日本評論社)

恩師の新刊本。久しぶりに読んだがっしりとした数学の本である。ユークリッド「原論」とヒルベルト「幾何学の基礎」を出発点に、古典幾何学の厳密な基礎付けと、非ユークリッド幾何学が現代数学に果たした役割を論じている。曖昧さを排し、ユークリッド幾何と双曲幾何における定理を、公理から述語論理によって厳密に証明していく。かなりの数学的素養がないと難しい本ではあるが、少なくとも足立先生には学生時代にお世話になったことだし(出来の悪い学生だったことはおいといて)、雰囲気をつかむことだけは何とかなったか。一見当たり前のように見えることも、厳密に正しいことが証明できなければ正しいとは言えないのが数学である。


●「罪の声」 (塩田武士著、講談社文庫)

自宅で見つけた古いカセットテープに録音されていた幼い頃の自分の声。それは、かつて関西で食品会社を狙った脅迫事件に使われた男児の声そのものだった。京都でテーラーを営む曽根は、あの事件に自分の叔父が関わっていたのではないかと疑い、真相を突き止めようとする。一方、新聞記者の阿久津も、未解決事件の特集企画で、同じ事件を追っていく。やがて二人に接点が...。 もちろんこの小説はフィクションだが、「グリコ・森永事件」を題材にしたものであり、ノンフィクションのようなリアリティーがある。子供を巻き込んだ事件ということに大きな怒りを感じた著者が、「関係者」にはこのような人生があったかもしれないという視点で描いたものである。


●「昭和探偵4」 (風野真知雄著、講談社文庫)

昭和に絡む依頼の謎を鮮やかに(?)解決する「昭和探偵」熱木は、令和になっても大活躍。シリーズ4作目である。ありふれた身辺調査かと思いきや、ふりかけご飯の謎を解く依頼だったり、昭和60年の駅の伝言板のメッセージに残された「ゆうこ」と名乗る女性を探す依頼だったり、プロレス中継の話から脱脂粉乳に及んでいったり、何かと依頼は「昭和」に絡むのであった。そして、ある写真の人物を追っていくと、ついに昭和の巨悪に迫っていく。新宿駅周辺も、平成を経て令和になり、かなり様変わりしたが、いまだ昭和の色濃い新宿ゴールデン街で、昭和探偵は今宵も飲んだくれるのであった。


●「巨大ブラックホールの謎」 (本間希樹著、講談社ブルーバックス)

今年4月10日、ついに巨大ブラックホールの「穴」の撮影に成功したというニュースが全世界に流れた。その撮像プロジェクトの一員である著者による、まさにその巨大ブラックホールを捉えるまでの話である。銀河の中心にあるのが巨大ブラックホールだ。「ブラックホール」と「巨大ブラックホール」の違いから分かりやすく説明し、巨大ブラックホールを巡る研究のこれまでの経緯を概観し、いよいよ巨大ブラックホールを「見る」ことが出来る準備が整ったところまでを述べている。この本の刊行は2017年なので話はそこで終わっているが、2019年に実際に捉えることに成功したのである。人類が初めて目にするブラックホールの姿。ブラックホール研究が大きく前進した瞬間である。


●「夏の庭」 (湯本香樹実著、新潮文庫)

古びた家に一人で住んでいる、生ける屍のような老人。小学生の3人組、ぼく(木山)、河辺、山下は、「人が死ぬ瞬間を見たい」と、その老人の「見張り」を始める。老人が3人の存在に気付き、水をかけたりして叱り飛ばす。次第に老人と小学生の間に不思議な交遊が生まれ、夏休みになって、洗濯を手伝ったり、荒れ放題だった庭の手入れをしたりするうちに、老人も活動的になっていく。しかし、小学生3人組がサッカーの合宿から帰ると、老人は帰らぬ人となっていた。悪ふざけから始まった「死」に、実際に接した3人。老人からは3人への伝言が残されていた。そして、夏休みは終わり、少年たちの心に何かが残ったのである。という、心に何か訴えかけるような小説である。
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