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2019年08月27日19:54

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「アイムクレージー」人は思うようには生きられない

新人監督第1作というのは、どんな作品かと興味がわく。
意表を突かれて引き込まれるものもあれば、学生の習作?というものも。

今回は、騒がしいロックの舞台で最初のシーンが始まり、
苦手ジャンルか…?と思ったが、見ているうちに面白くなった。

最初に工藤将亮監督の挨拶があった。18歳で映画界に入り、
長く助監督をしてきたが、一時期、映画が嫌になってしまった。
その折の気持ちと復活をこの作品に込めたらしい。

「アイムクレイジー」
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=10258677&id=4796682
http://www.synca.jp/iamcrazy/

売れないミュージシャンの佑樹(古舘佑太郎)は、バイトに向かう途中、
かつての仲間のテレビスクリーンに目を奪われ、車にぶつかる。
その日は、もう音楽を止めようと、ラストライブの日だった。

運転していた美智子(桜井ユキ)は、病院にというが、
バイトに行くという佑樹をバイト先の喫茶店に送る。

美智子は、発達障害のある堅吾を育てるシングルマザー。
喫茶店長(曽我部恵一)は、堅吾の子守を気軽に引き受けて佑樹に押し付ける。

美智子はコンポーザー。注文先の無理な頼みも何とかこなそうとする。
そして喫茶店のピアノで作曲の手直しを始めた美智子に、
健吾のマスカラ、店長のドラム、佑樹のギターも加わってセッションが始まる。

音楽を止めようとしていた佑樹は、苦労しながらも自分の生き方を
貫いている美智子と出会い、様々に影響を受けていく。
でも全くクレイジーな行動に走るが、それもグダグダ…(むしろ良かった)

酔っ払いの中年オジサン(岩谷健司)が、なんともステキな人物。
「オオタニショウヘイです。ショウの字が違って日が二つ」なんて、
こんな時のご挨拶?というトボけた可笑しみを添える。

「妊娠した」と、佑樹にお金をせびる元彼女(中田絢千)や、
元の音楽仲間(田本清嵐)など、出番は少なくてもなかなかいい存在。
そしてラストライブの時間となる。

2度ばかり、「人は自分の思うように生きるか、
社会が求めるように従順に家畜化して生きるか」といったセリフがあって、
それが「選ばなければならない瞬間がある」のうたい文句につながるのかと。

でも、「それって違うだろう」と、この年になるとハッキリ思う。
選ばなくてはならない瞬間があるのは分かる。というか、いつも選択して生きる。
しかし、多くの人は、望むように、思うようには生きられない。
人は、思い通りにならない中で生きていくものなのよね。

社会が求めるように、社会の歯車の様だと思いながら食べるために、
満員電車で通勤して毎日同じ会社で働いたり、同じ労働に精を出す。
でも、それは家畜化じゃない。自分の心までは売り渡さなくていい。

日々の中で、小さな喜びを見つけられれば、充分だと思う。
ほとんどの人は、市井にひっそりとささやかに生きて死ぬ。

音楽を続けてもメジャーになれるのはほんの一握り。
それでも好きで続けられるならよいけれど、
どうしても食べるために無理になることだってあるだろう。

選べないこともあれば、選んでも上手く行かないことの方が多い。
その中で時には、何故?と煩悶し、苦労しながら、涙しながら、
それでも頑張って生きていく。それこそが人間らしい生き方と思う。

すると僅かな幸せでも尊く得難いものに思えるし、
新たな価値観を得て、人生のご褒美のような人との出会い、
小さな喜びや楽しみを見つけられると思う。

この作品も、登場人物たちが、目的を持って頑張り通すというよりも、
市井にそれぞれの形で生きる姿が垣間見られたことが良かった。
第1作への門出に期待を込めて、少々サービスの★4
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