mixiユーザー(id:7410632)

2019年06月06日16:17

57 view

5月の。

5月に観たのは『アンダー・ザ・ウォーター』『シェイプ・オブ・ウォーター』の2本。
両方とも『ウォーター』なのは全くの偶然です。纏めるまで気づかなかった。

●『アンダー・ザ・ウォーター』
真水が失われ滅びに瀕した地球。解決の鍵は78年前に研究者の急逝で失われた実験データ。その入手のため、『ふたつに分かれた』主人公の片方が過去に向かう。入手は成功したモノの両者のリンクが途絶え、そして歴史改変の危機が検知され……。
ええと。一部「何云ってんの?」だと思うケド、肝は原題にもなって居る『QEDA』て云う存在。簡単に云えば量子力学のアレのヤツで『2人の自分に分かれる』。リンクは保たれるため片割れを過去に送り込んでも感覚共有が可能だが、お定まりの『過去改変の危険性』から時空移動もQEDAも禁止。
そんな背景で展開するこの映画。何か映像付きの小説みたいだったな。主人公のモノローグで起きて居るコト全部説明しちゃってるのだよね。判り易いし親切だけど映画にする意味は・・・みたいな。
でも硬質で煤けた画面作りは割と好み。主人公は前述の任務のため愛する娘、塩害で死にかけてるインのひいひいお婆ちゃん、科学者モナに接触するんだけど、まだ衰えて居ない過去の世界を愛して仕舞うのね。絶滅した動植物、豊かな甘い香り、生き生きとした人々、駆け回る子供たち、そんな世界を。
コレ自体はまぁ割とある筋立てなのかもだけどでも説得力はある。そのせいで『過去に来た半身』と『未来に残る半身』は異質になって仕舞う。明示はされてないけどリンクが切れたのも多分それが原因。この辺の流れは良かったな。半身を探しに未来の主人公が命令に背いて過去に飛び、事態を収めようとするんだけど改変の流れは止められない。コレも好み。悲しいけど。彼の胸にインが描いた犬の絵がね。
まぁああなって仕舞ったら彼はそもそもココに来れなくなるハズなのでパラドックスがヘンはヘンなのだけどもね。娘が消えたのにその記憶が残って居たりね。まぁいいけど。平行世界解釈てコトで。
「可能なら過去を変えたいと思う?」てモナに訊く主人公。「簡単に過去を変えられたら現在が無意味になる。人間には選び取る力があり、結果も受け入れなくては」て云うモナの答え。コレがまぁ、この映画で云いたかったコトなのかもね。それもガッツリとコトバにして仕舞って居るワケだけどご愛敬。
真水は超貴重品、貨幣として流通して居るけど『靴一足100リットル』て相場はそんな貴重って感じでもないなーと感じて仕舞う。靴が数万としてもリッター数百円だモンな。まぁ些細なコトだけど。
ま、全体としてはかなり好きなタイプの映画でしたよ。全体の静謐な雰囲気も。自分とただ2人で雨に打たれボンヤリと水に浮かんで居る、まるで世界の全てが消えて仕舞ったような雰囲気の終わり方も。

●『シェイプ・オブ・ウォーター』
南米の川で捕獲されメリケンに連れて来られた『対象物』。虐待を受けつつ実験材料にされる彼と職場である研究所で出会い、心通わせた掃除人イライザは彼が解剖され殺される運命にあるコトを知り、彼を逃がし自宅バスルームにかくまうが……。
喋れないイライザは水槽の中の半魚人たる彼に興味を持ち、茹で卵を媒に交流を深め、その思いは次第にシンパシーから愛情へと変わってゆく。イライザは孤独ではない。隣室の絵描きジャイルズや同僚ゼルダなど優しいヒトにも恵まれて居る。でも「ひとりぼっち?我々も同じだ」て云うジャイルズのコトバ通り、労り合い親しく穏やかに優しく接して居ても、各々のココロの核は癒やせず混じり合わず永久凍土のように孤立して居る。でもそれは仕方のないコトなのだよね。各々の抱える事情は各々のモノだし。
でも、だからこそ、イライザは同じく喋らない彼に惹かれる。「彼は私に欠けてるものを知らない」て云う彼女の手話。コレが彼女のホントに欲しかったモノなんだとしたら、それは人間には難しいよね。
半人半魚で特別な呼吸機構を持つ彼。彼を生体解剖しその機構を解明して宇宙時代の優位性確保を望む米国。先を越されるくらいなら彼を殺してそのチャンスを叩き潰そうとするソ連。研究者としてこの複雑で美しいイキモノを殺したくないソ連のスパイ。それぞれがそれぞれの立場で彼に関わって居る。
サディスティックなストリックランドにしたって元帥にプレッシャーを掛けられ自分の居場所を守るために必死。買ったばかりの成功者の象徴キャディラックは壊されるしな。アレはほんの少し同情する。
「私に出来るのはふたつ。彼を救うか死なせるか」て云うイライザの悲壮な覚悟に付き合うジャイルズはとても穏やかな隣人。可愛がってた猫を一匹、彼に喰われても「本能だから」で許すのだよね。
そしてソ連のスパイ、ホフステトラー博士。とても人間臭くてね。彼を殺したくない思いとか、ストリックランドに責められてイライザたちのコトを吐いて仕舞うのとか『愛すべき弱い人間』だと思う。
川に捨てられて居た孤児のイライザ。首筋にはエラブタのような古傷だかアザだか。其処から帰結するハッピィなラスト。彼女は彼と同じ存在だったのか、彼が彼女をそう変えたのか。どちらともつかないけど『ジャイルズの希望、想像』て解釈も成り立つよね。せめてこうあって欲しい的な。哀しいけど。
海中の洞窟からシームレスに続く水の満ちる室内に浮遊する家具、浮遊して眠る女。やがて時計が鳴り、全てがゆっくり沈んで現実へ。て云うオープニング、超好み。恐らく『大アマゾンの半魚人』ぽい彼の造形もグロテスクで優雅でか弱くて気品に溢れてて、そのバランスがとてもよい。美しい物語でした。

●●●
月間賞は『シェイプ・オブ・ウォーター』に。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2019年06月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      

最近の日記

もっと見る