mixiユーザー(id:766386)

2019年06月06日12:01

187 view

いちばん最後に残るもの

カルト宗教の教祖は、甘いアメと厳しいムチを、使い分けて、いわばツンデレを演じて見せて、ツンツンされればされるほど、ごくたまに与えられるデレが有難いものとして、信者たちに受け取られる、という効果を現して、末端の信者たちは、教祖や組織の幹部たちや直属の上司から次から次へと吹っ掛けられる無理難題で苦しめられ悩まされているうちに、デレが欲しくて夢中になり、いつもツンツンしている教祖様の優しさに包まれたくて教祖様に気に入られたくて、一心不乱になる。

カルト宗教にハマるような人間になるのは、母親の愛情に恵まれなかったからだ、と考えていいだろう。

通常は、生まれ育った家庭環境において、母親がツンデレの役割を果たし、子は、まず母親のツンがデレの価値を引き立たせる効果に影響されて、普段はツンツンしている母親のデレが欲しくて一心不乱になり、ついで、母親から「ダブルバインド」(=「板挟み」)される、ということがあり、つまり、コミュニケーションの場面において矛盾し合う二つの命令的なメッセージを送って来られた上で、矛盾を矛盾と指摘することを許さない無言の圧力が掛かり、同調圧力を掛けに来る二つのメッセージのうち、どちらの一方に従っても、もう一方に逆らうことになる、というジレンマに陥り、行動不能に陥り、人知れず悩み抜いた挙句に、ダブルバインドの解決は、一心を、表向きの建前と裏に潜まされた本音という二つに、分裂させて、使い分けることによるしかない、ということに、気付き、いわば面従腹背という対応策を、心が純粋でなくなる道を、選択させられる、という経過を辿って、もはやカルト宗教の教祖様に一心不乱になったりしない、一直線でない、屈折した不純さが、育つからだ。

ダブルバインドされる、ということは、言い換えれば、表向きの建前としては性善説を守りつつ裏に潜まされた本音としては性悪説のほうが正しいと実は認めている、というふうに、二重拘束されて、心が二重性を帯びる、ということで、表と裏を使い分けて、裏に秘密を隠し持つに至る、ということだ。

そして、この秘密の存在が、大切に守られるべきものであることに、いつしか気付く。

すべてが暴露されて、なにがなんでも明らかにされて、秘密が存在しなくなった、透明な世の中は、味気なくつまらないもので、夢も希望もない、身も蓋もないものだからだ。

秘密の存在ほど人を魅了するものはないからだ。

「秘すれば花」と世阿弥が言ったように、私秘的なものを私秘的なままにしておくことによって、興醒めさせない、配慮こそ、肝要で、科学がすべての秘密のヴェールを剥いで人々が現実に何の幻想も持てなくなった殺伐とした現代の社会状況には、何の深みも面白みもない、と悟って、ダブルバインドされた人間がダブルバインドされた人間のままで生きていこう、と、覚悟を決めて、人間は社会化される。

自分がダブルバインドされていなければ、ダブルバインドされている自分以外の者たちの、二重性を、二重性のままで、尊重することは、できない。

ダブルバインドされている者同士間でこそ、表面を真に受けて裏を見抜かないのでもなく、裏を暴いて表沙汰にしようとやっきになるのでもなく、裏が表に隠されているという二重性を二重性のままで、尊重し合える、関係性が、成り立つのだ。

カルト宗教の熱狂的な信者というのは、心が未成熟なままで、大人になったからこそ、二重性を体得できずにいて、教祖様に対して、一心不乱で、一筋で、一途で、誠心誠意なのだ。

成熟した大人というのは、表に表されたものよって覆い隠された裏を、大切に出来る。

多くを語り過ぎないことの大切さを、知っている。

露出狂のように内面を描写し過ぎるのでもなく、本心を隠し通して心を閉ざしてしまうのでもなく、程々に、自己を出したり引っ込めたりできる、融通無碍の境地に至って、人間は完成されるのだろう。

神秘性がなさすぎて人を惹き付ける要素がない人間になるのでもなく、妙に頭で考えて嫌らしいまでに勿体ぶったチラリストになるのでもなく、いつか落ち着くべきところに落ち着いて、そこに安定して停留するのだろう。

人は分かり合えないし、それでいい。

心は筆舌に尽くし得ないし、伝えようがないが、そのままでいいのだ。

それが、否定されて育った人間が、追求してきた、肯定のありかただと思う。

最後に一つ、言っておきたいことがある。

秘密を保持していることに苦しさを感じないでいられることこそ、内面生活を営むことを可能にして、ゆとりや気楽さやくつろぎを生み出して、対人恐怖症を克服させて、打ち解けられるアットホームな人間を形成して、不適応者を適応者たらしめる。

神経症や精神病が治るとはそういうことである。
6 6

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する