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2019年06月01日16:00

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「誰もがそれを知っている」〜スペインの小さな村、人間模様

ぶどう畑連なるスペインの小さな村、婚礼の宴が続くなか親族のひとりである16歳の娘が何者かに誘拐される。やがて身代金要求のメールが届き、一族は警察に知らせることなく自ら解決に乗り出す。実生活でも夫婦であるスペインの2大スター、ペネロペ・クロスとハビエル・バルデムの豪華共演、監督は「別離」「セールスマン」のアスガー・ファルハディ。

なかなかコトは起こらない。しばらくは小さな村で繰り広げられる婚礼の儀式、そして終わりなき宴を陽気に楽しむ一族の様子を見続けることになる。その後の深い悲しみとのコントラストを際立たせるべく、初めに幸せの分量を大きくしていることは誰にでもわかる。そしてそこにはイラン人監督から見た”スペイン人観”みたいなものも反映されている。

事件が起き、一族は解決に向けて動き出すも、サスペンスとしての要素は希薄なまま。二転三転が待っているわけでもなく、意外性もほとんどなし、エンディングもなんとなくすっきりしない。でもこの監督の作品であると初めから意識的に観ているひとにとっては、そんなことは十分承知のはず。事件の解決よりも一族それぞれの人間模様に重きを置きつつ物語後半は進む。

秘められた過去が暴かれ、貧富の差があらわになり、誰もが被害者の親族とはいえ事件にたいしての温度差も生じる。よく考えればほとんどヒネリのない、ごくごくシンプルな話。感情をストレートに表現するスペイン人特有の気質や、主役のふたりをはじめ共演男優・女優のあふれんばかりの色気が、そのシンプルな話を濃密にコーティングしているような印象の作品でした。
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