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2018年12月24日15:43

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井上梅次「五人の突撃隊」(ラピュタ阿佐ヶ谷)

 ラピュタ阿佐ヶ谷開館20周年記念。リクエスト特集。

 Movie Walker https://movie.walkerplus.com/mv20044/

 戦争末期のビルマ戦線。本編中で、はっきり言及はされていないのだが、
状況からして、「史上最悪の作戦」とされる「インパール作戦」を舞台に
とっていると思われる。

 弾薬も食料も補給を絶たれ、雨期を目前にひかえてすでに行動不能
になっている野上大隊。大隊長の野上(大坂志郎)は、何度も上層部に
撤退を進言するが、強硬派の大田黒将軍は、頑なに、進攻の継続を
主張し、物資がなければ、敵から奪えばよい、と言い放つ始末。

 見かねた、曽根旅団長(山村聰)も撤退を進言するが、逆に、野上
大隊長に活をいれろ、と前線へ送られてしまう。

 黙って命令に従い、戦闘の継続を指示する曽根。しかしその心中には、
思うところがあった。

 その撤退作戦で、しんがりを勤めることになったのが、題名にある
「五人の突撃隊」。
 敵から奪いとった戦車を修理し、地面に埋めて砲台として活用。
友軍が撤退するあいだ、敵戦車部隊をくいとめる重要だが危険な役割
である。

 いわば貧乏くじを引かされた五人の戦車兵たち。
 士官の野上(本郷功次郎)大隊長の息子だが、父とはうまくいって
おらず、戦線にあっても話をしようともしない。
 部下の兵隊たちもみな一癖ある連中だった。
 刑務所帰りの橋本(川口浩)ヤクザな生活のため家族から疎んじられ、
名誉の戦死を願う鉄砲玉。下手な落語家の弟子で、「お粗末」が
口癖の小林(大辻伺郎)画家で、妊娠した恋人を残しており、わざと
戦車に手をひかれて戦線離脱しようとしたため、士官から格下げ
された杉江(藤巻潤)農村の出身で、3年ごしの清らかな恋を実らせて
ついに祝言をあげ、初夜の直前に徴兵されてしまった庄司(川崎敬三)

 この5人の若者の断ち切られた青春と、撤退作戦の犠牲となり、
戦死していくさまが、その過去のドラマを折り込みながら、人間模様に
焦点をしぼって描かれる。

 若者達の生き様も、とても心に残るものだが、私は、兵のために
あくまで撤退を進言し続ける大坂志郎と、自分の命を賭して、
攻撃とみせかけて独断で撤退作戦を実施。自決する山村聰の
ヒューマンな軍人としての滋味のある演技に最も感動した。

 司令部からは「戦死」扱いされ、もっとも過酷な前線をたらい回し
にされている古参兵、安部徹も印象的。

 「戦争」と一口にいうが、戦っているのは「人間」であり、その
「人間」には、「兵士」となる前の生活があるのだ。

 戦記映画としては、戦車シーンや橋の爆破シーン、戦場の過酷な
描写など、東宝の名戦記と比較すると見劣りはするが、5人の若者の
若者にありがちな生活描写をおりこんだことで、ひと味ちがう戦争映画
の名作となっている。

 確かにどこかで観た記憶があるのだが、映画館だったか、テレビ視聴
だったか。でも、映画館で再見できて感動した。
 

   

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