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2018年04月24日14:16

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北朝鮮に騙されるな! 核兵器開発は完了した。米国の朝鮮半島専門家が明かす北朝鮮の悪魔の交渉術

 下記は、2018.4.24 付の JBpress に寄稿した、 古森 義久 氏の記事です。

                       記

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が4月20日、核兵器や長距離ミサイルの実験中止を宣言した。日本や米国を含む国際社会の大方は、北朝鮮の核兵器破棄、つまり非核化が前進するとして、この宣言を歓迎している。

 しかし、現実はまったく違うと強調したい。北朝鮮の声明をざっと読むだけでも、実は核武装の完成の宣言であることがすぐに分かる。「核の兵器化」が完了したから、核実験は中止すると述べているのだ。非核化とは正反対の宣言なのである。

 北朝鮮のこうした言動と国際社会の反応をみると、これまでの北朝鮮の欺瞞の交渉術の巧みさが想起される。1990年代以来、ワシントンで北朝鮮の核武装と米国の反応を取材し報道してきた私にとっては、不吉な予感さえ覚えさせられるのだ。

宣言の中身は「核の兵器化の完結」

 北朝鮮の今回の核実験中止宣言は、核兵器の放棄にはなにも触れていない。非核についてはまったく言及していないのだ。

 金正恩委員長の報告は、冒頭に近い部分で以下のように述べていた。

 「核戦力の建設を5年に満たない短期間に達成した勝利は、並進路線の偉大な勝利である。(中略) 経済と核建設を並進させる路線が示した課題が貫徹された。

 核開発の全工程が、科学的に、順次行われたし、運搬攻撃手段の開発も科学的に行われ、核の兵器化の完結が検証された」

 また、同時に発表された北朝鮮労働党中央委員会総会の決定書要旨には、次の記述があった。

 「並進路線の過程で核実験や運搬手段(弾道ミサイル)開発の事業を順次行い、核の兵器化を実現したことを厳粛に宣言する」

 要するに、北朝鮮は「核の兵器化の完結」を宣言したのである。だからもう核の実験も長距離弾道ミサイルの実験も必要がないということなのだ。これは非核化とは正反対の宣言である。米国が期待する北朝鮮の核兵器の「完全で検証可能で不可逆的な破棄」とはまったく逆なのだ。

 北朝鮮の核問題に関する表明や誓約が虚構であり、欺瞞だった実例はこれまでにもあった。1994年の米朝核枠組み合意では、核放棄をはっきり約束しながら密かにウラニウムでの核爆弾製造を続けていた。また、2005年には6カ国協議で「すべての核兵器と核計画を放棄する」ことを公約しながら、その直後に北朝鮮当局は「軽水炉の提供がなければ、核放棄は論じられない」という逆転の声明を発している。

繰り返される「悪魔のサイクル」

 こうした北朝鮮の過去の言動パターンを踏まえて今回の展開を見ていると、以下のような論評を思い出した。

 「北朝鮮は得たいものを得るために、協定や条約を結ぶことではなく、そのための前段階の交渉プロセスから利益を引き出す」

 この言葉は、米国政府を代表して北朝鮮との裏交渉に長年かかわったチャック・ダウンズ氏の2005年のコメントである。前記の6カ国協議での北朝鮮の誓約破りを考察して発せられた論評だった。

 ダウンズ氏は国防総省などの政府機関での活動のほか、民間の「北朝鮮人権委員会」のトップも務めた朝鮮半島情勢の専門家である。私がダウンズ氏のこの言葉を想起したのは、今の状況がこの「前段階の交渉プロセス」に合致するからだ。

 周知のように金正恩委員長はまもなく韓国の大統領との南北会談と、米国大統領との米朝会談に臨む姿勢をみせている。その両首脳会談に備えての水面下の「前段階の交渉プロセス」が、まさに今なのだ。

 ダウンズ氏は1990年代末に『北朝鮮の交渉術』という本を出している。そのなかで北朝鮮の対外交渉術として、相手に「楽観」「幻滅」「失望」という心理状態を順番に抱かせる「悪魔のサイクル」という特徴を指摘していた。

 悪魔のサイクルについて同氏は次のように説明する。

 「北朝鮮は自国の政策の基本が変化したように振る舞い、相手国に有利となりそうな寛容な態度を示唆する。相手が楽観へと転じ前に出てくると、自国が欲する制裁解除や経済援助を取りつける。だが、その後に態度を急変させ、相手を幻滅させる。北朝鮮はさらに交渉の事実上の打ち切りまでに至り、相手を失望させる。相手は最悪の状態のなかで、やがてまた北朝鮮の軟化を期待し、楽観への道を歩むことになる」

 簡単にいえば、相手を揺さぶって、騙し、取りたいものだけを取るという、したたかな交渉術だというのだった。

 ダウンズ氏がこうした考察を私に語ってからすでに十余年経ったが、また同じ歴史が繰り返されようとしているということだ。北朝鮮への楽観が生まれつつある今の日本でも、さらには米国でも念頭に入れておくべき分析だろう。

 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52937
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