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2018年02月28日12:06

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五輪の裏で進む米韓同盟の腐食 東洋学園大学教授・櫻田淳

 下記は、2018.2.28 付の【正論】です。

                        記

 ≪露骨な「政治性」は類例がない≫

 平昌冬季五輪が閉幕した。これにパラリンピックを加えた「平昌2018」の催事は、それが帯びる濃厚な「政治色」において、過去数十年でも類例のないものであろう。平昌五輪という舞台の上で、「南北融和」という大義を確認し、「米朝対話」の実現という政治目的を追求しようとした文在寅韓国大統領の姿勢を前にすれば、露骨な「政治性」が指摘されても不思議ではあるまい。

 事実、五輪開会式直後、マイク・ペンス米国副大統領の発言を念頭に置き、文大統領は「米国も北朝鮮との対話を模索している」という機運を盛り上げようとした。

 もっとも『日本経済新聞』(電子版、2月15日配信)によれば、ペンス副大統領は「核・ミサイル開発を断念するまで米国の対北朝鮮政策に変更はないと表明した。北朝鮮が完全かつ検証可能な形で核放棄をすることで初めて『我々や国際社会は北朝鮮への態度を変更することができる』との認識を示した」とのことである。

 これに関連して、安倍晋三首相とドナルド・J・トランプ米国大統領は、2月14日の電話会談で、「対話のための対話では意味がない。完全かつ検証可能、そして不可逆的な非核化を前提としない限り、意味ある対話はできない」という認識で一致した。

 ちなみに、五輪開会式に際して北朝鮮政府は、金与正氏を派遣して南北首脳会談開催を呼び掛ける一方で、米国との接触を断ったという報が流れた。「民族融和」の大義の下、先々に「文在寅の韓国」が米国に対する「盾」、さらには自らにとっての「財布」としての役割を果たすようになれば、北朝鮮としては、米国に気を使う必要はない−。北朝鮮の姿勢には、そういう判断が働いたかもしれない。

 文政権下の韓国政府は、「まず対話を進め、非核化は然(しか)る後の目標である」という思惑を抱いたかもしれないけれども、そうした思惑には、トランプ政権下の米国政府は乗らなかったのである。文大統領の対外政策対応には、「空回り」の感が漂う。

 ≪軍事演習は内政問題なのか≫

 そもそも、戦後七十余年、日本が享受してきた平和と繁栄の条件として、自明のように語られる憲法第9条と日米安保体制に加え、米韓同盟の枠組みを忘れるわけにはいかない。

 朝鮮半島を南北に分断する「38度線」は、韓国にとっては「民族の分断線」かもしれないけれども、日本にとっては「安全保障上の最前線」である。米韓同盟の枠組みの下、その「安全保障上の最前線」が「38度線」で固定されていればこそ、日本は、冷戦期を通じて、中国や北朝鮮のような共産主義陣営諸国の「風圧」に直接に対峙(たいじ)せずに済んだ。日本を取り巻く国際環境を考える際、この事実に留意することは大事である。

 然るに、五輪開会式前、安倍首相は文大統領との会談の席上、「平昌2018」後に延期された米韓合同定例軍事演習の扱いについて、「延期する段階ではない。…予定通り実施することが重要だ」との考えを示したが、文大統領は「この問題はわれわれの主権問題であり、内政の問題である」と反発したと伝えられる。

 しかしながら、前に触れたように、米韓同盟の枠組みが日本の周辺国際環境を左右する主な条件の一つであり、米韓軍事演習の実施が米韓同盟の信頼性を担保する仕掛けの一つである以上、その扱いが純然たる韓国の「内政問題」であるはずはない。

 およそ「同盟とは、互いが必要とされるときに互いの必要に応える努力によって支えられる」という政治上の公理に従えば、そのような努力を怠けているかに映る現下の「文在寅の韓国」の姿勢は、米韓同盟の枠組みにおける「腐食」と「空洞化」を促しているのではないか。

 ≪「敵対的」な色彩帯びる文政権≫

 そうであるならば、米韓同盟の「融解」を制止するどころか、それをあえて黙過するかのような「文在寅の韓国」の姿勢こそが、歴史認識や領土紛争に絡む対日姿勢よりも、はるかに日本に対して「敵対的」な色彩を帯びている。米韓同盟が崩壊する事態が招く衝撃に比べれば、歴史認識や領土に絡む摩擦は些事(さじ)にすぎないのである。

 日本にとって、朝鮮半島情勢に絡む「真実の瞬間」は二つある。その一つは、本稿で指摘した「米韓同盟が崩壊する瞬間」であるけれども、他の間近に迫っているかもしれない一つは、「米国政府部内で検討されていると伝えられる対朝限定攻撃、すなわち『鼻血作戦』が実際に発動された瞬間」であろう。

 筆者は、そうした瞬間に際しては、米国を含む「西方世界」との提携を徹底させる対応で臨むしかないと考えているけれども、それを貫徹させる準備は果たして出来上がっているであろうか。「『決してない』とは、決して言うな」という国際政治分析の教訓が、現在ほど胸に迫る局面はない。

 (東洋学園大学教授・櫻田淳 さくらだ じゅん)

 http://www.sankei.com/column/news/180228/clm1802280005-n1.html


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