電線病とは・・・
オーディオケーブルの付属品を聴きもせずに取り外し、できるだけ高純度(99.99999999%など)銅や銀線に取り換え、壁コンセントも元のものなんかは許さず、ホスピタルグレードから超低温クライオ処理をしたオーディオグレードなどに付け替えまくる、といった行動を指す。
メッキは金メッキが穏当だが、ロジウムはありがたい感じがする。
師が福田雅光先生の場合は、ハンダにもこだわりいろいろ自作して、毎月雑誌記事が気になるので、結果的にけっこうな金額を投入。
長岡鉄男先生の場合は日曜大工店のキャブタイヤで、安いがかなり太くする傾向がある。
金持ちはケチな工作はしない。一本数十万のケーブルでチューニングを楽しむ。
キリがないのである。
こんな状況はいつ始まったのかというと、ホスピタルグレードとかを晩年の長岡先生が記事にしてたから、1990年代末からだろう。
そこからちょっとしたブームになり、この20年の中で、「電線病にかかってたけど、目が覚めた」という話題も耳にするようになった。
私自身は、最初期にホスピタルグレードのプラグ・コンセントを購入、オヤイデが高級コンセントを投入してきたときも、まっさきに買っているのだ。
また、ケチなのでいろいろと工作をして散財している。
失業時代に、アコリバのPCOCCAの3.5スケ電源ケーブルが、新製品切り替えで安くなっているのを発見。
ハローワークに行くたびに3m、3m、3mと3回買って4本ケーブルを作った。暇だし(笑)
アコリバに換えていった感想は、「ああ、金持ちの音ってこうか」というもの。ケーブルで出すんだと思った。オーディオ店の高級な雰囲気が出るのだ。
私は108ES2のスワン時代があって、あのユニットの高域張り出して貧乏くさい乾燥感はただごとでなかった。
今なら、あっさり違う路線に行くが、当時はこだわって、その状況でリッチな音色が出ないかとおもっていた。
それで、とにかく高級メッキ、高純度、極太みたいな言葉に弱く、迷いがなかった。
プロケーブルという、ネット上の電線ショップがあり、そこは、メーカー製の高級オーディオケーブルを「ボロい」「メッキ=悪」「オーディオゾンビ(キリがないので)使うと人生が終わる」とさんざんな書きようで、自分のケーブルはスタジオで伝統的に使われてきたもの中心で、「フラット」だと主張した。
「電線病から目を覚ませ」というメッセージにも思える。よいところは、確かに安価で、原価プラス利益がよくわかる値付けになっているので、金銭的に騙された感はないといえるだろう。
最初、小さな必要と興味があっていくつか発注していたのである。
RCAケーブルのモガミや88760はさほどよいと思わなかった。
デジタルケーブルはしっかりしているが、特に印象はない。
USBケーブルはWireWorld高級品に完敗。
バランスケーブルでドイツ音楽用というノイマン、これはよかった。
ワグナスという同じくネットショップ製作だが、銀メッキ線超高級ハンダみたいな路線のケーブルと交換すると、質実剛健なスタジオの音という感じになり、ドイツグラモフォンの渋い味が出た。
イチ推しのベルデン8423、これはすごくよかった。
ふっくらしていきいきして、色はつくが豊かな感じがする。ワルターの古い録音のよさがわかるなら、その路線である。
古いクラシック全般によいが、何を聴いてもおおらかで楽しい。アメリカン。
バランスケーブルは、プラグが超高級であろうがノイトリックのことが多いので、そこで差がつかないのだろう。
RCAは、メーカー製のほうがしっかりしている。
これはギャンブルと思ったが、エイとやってしまったのが、アクロリンクのしっかりしたスピーカーケーブルを、ウエスタンエレクトリックの極細単線に換えた。
価格も、処分価格で買えるぐらいなので下がった。
結果は、最初は線が細かったが、上記8423のふっくらした感じを入れ、パワーアンプのゲインを上げたりで、気にならなくなった。
そうすると、弦楽器が非常に良くなった。木質感というかニスの感じというか、なにか黄土色や赤色が頭に浮かぶのだ。
いままでは、線材もあるが、被覆のすべすべした音に相当マスクされていたような感じがした。
最後は電源ケーブルである。
あまり期待はなかったが、8423と極細単線がよかったので、ついに買ってしまった。
が、これもかなりよかった。アースとかはオヤイデのコンセントボックスでしか機能してないと思うので、効果うんぬんはあまりわからないが、素直な音になった感じだ。
オヤイデの5.5スケ「TUNAMI」は処分し、上記のアコリバも解体して線材を処分予定。
やはり、上記の弦楽器がよい。
1年ぐらい前によく聴いていた、クレーメルたちのウィーン現代音楽室内楽集。
これの弦楽器が、弦楽器らしく聴こえたのに興奮した。
変わったのは、特にスピーカーと電源ケーブルだろう。
ピアノもそれらしい。
メッキがなくて、真鍮のままで、これは古い一般家庭のコンセントへの回帰である。
真鍮臭さみたいな、安っぽいくすんだ感じはあるので、フラットなのかはわからない。ただ、キラキラしたクセは確かにつかないようだ。
金管楽器の素朴な感じもよく出る。
特に古いクラシックにいいのは、8423・WEのスピーカーケーブルと同じ。
私の聴いているソフトの、いまの路線と合っているのはありそうだ。
真空管が1960年代録音に合うとかいうのに近い話。
すっかり電線病から脱した、というか、はたからみるとプロケーブル教に入信したと思われるだろう。
ただ、低コストだがアガリ感はある。
ド文系なので、感覚的にだが、次回は経験を振り返って皆さんの参考になれば。
主に、たくさん作った電源ケーブル。
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