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2017年05月10日06:11

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オーディオトランスの計算とトランスを使ったバランスXLR接続→アンバランスRCA

以下はプロ用音響機器の設計製造設置を手がけるメーカーサイトからの抜粋引用です。
http://www.tritech.tv/column/trans3.html

アンプを自作するオーディオマニアと話しても、今はオーディオトランスの利用の機会が減っているせいか、トランス利用の計算 方法を知らない例があるようです。

こちらのサイトではアンプらでトランスを使ってゲインを稼ぐ昇圧率(増幅率)の計算 インピーダンスの考え 近時流行のバランス回路からアンバランス機器への接続でトランスを活用するテクニックら自分も採用していて好結果が得られているので紹介します。

たとえば現用のDAコンバーター ESOTERIC Grandioso D1はバランスアンプ内蔵で+側 マイナス側にそれぞれアンプが内蔵。

RCA出力ですと、このうち片方を遮断(使わない)という勿体ないことになります。

以下マイクトランスとして記載されていますが、MCトランス ライントランス全て共通なので引用
マイク・トランスの増幅率とインピーダンスの計算
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LUNDAHL の代表的なマイク・トランス LL1538 を例にとります。LL1538 の巻線比 ( Turns Ratio ) は 1+1 : 5 と表示されています。これは 1次側に同じ巻線数のコイルがふたつあり、2次側にはその 5倍の巻線数のコイルがひとつある、という意味です。(丸数字は巻線比)

ちなみに中央の縦線はコアを表し、破線は静電シールドを表しています。静電シールドはマイク・トランスのように扱う信号レベルの低いトランスに使われ、通常はグラウンドに接続して使います。

LL1538 の使い方としては、1次側のふたつのコイルをシリース(直列)に接続して、巻線比 2 : 5 (= 1 : 2.5 )として使うか、パラ(並列)に接続して 1 : 5 として使います。マイク・アンプの初段に使う場合はゲインが高いほうが後段の設計が楽なので、1 : 5 で使う場合が多いでしょう。
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トランスの増幅率は巻線比と同じです。つまり巻線比 1 : 5 のトランスの増幅率は 5倍です。これをデジベルに直すと約 +14dBになります ( 20log5 ) 。LL1538 より増幅率が高い LL1578 の場合は、1+1 : 10 という巻線比なので、 1次側巻線をパラレルにすればゲインは約 +20dBになります。LL1538 とはピン・コンパチブルでケース・サイズも同じなので、もう少しトランスだけでゲインを稼ぎたいという場合には差し替えて使うことができます。

トランスのインピーダンス比は巻線比の 2乗です。つまり LL1538 を 1 : 5 接続した時のインピーダンス比は 1 : 25 です。LUNDAHL のデータ・シートにはインピーダンス値の記載がありませんが、 200Ω : 5kΩとなっています。インピーダンス値そのものはあまり深く考える必要はありません。メーカーがデータ・シートにトランスの測定データを記載した時の測定条件、程度の意味です。実際の回路で使用するときに 2次側を 5kΩで終端 "しなくてはならない" ということではありません。そもそもそれではマイクの負荷インピーダンスが 200Ωになって、使い勝手が悪すぎます(マイクロフォンの出力インピーダンスの 5倍以上は確保したいところです)。

インピーダンス比が 1 : 25 なので、例えばトランスの 2次側を 47kΩあたりで終端したとすると、1次側のインピーダンスはその 1/25、おおよそ 2kΩ前後になる、ということがわかります。あたり、とかおおよそ、とかずいぶん大雑把な感じですが、実際にはトランスの挿入損失やら個別のバラツキなどがあるのでピッタリと計算値どおりにはいきません。この程度わかれば十分です。

トランスのデータ・シートに、巻線比ではなくインピーダンス値の記載しかない場合は、インピーダンス比からトランスの増幅率(つまり巻線比)を計算します。例えば 200Ω: 5kΩのトランスだったら、5k ÷ 200 のルート(平方根)をとってデシベルに直してみましょう。約 +14dBになりましたか?

ちなみに LL1538 の 1次側をパラレル(並列)接続して、巻線比 1 : 2.5 で使った場合、2次側を 5kΩで終端した時に 1次側に現れるインピーダンスは?答えは 800Ωです。インピーダンス比は巻線比の 2 乗に等しい、ということを思い出してください。巻線比が半分になったら、インピーダンス比は 4分の 1です。


ダイレクト・ボックス用として使う。
(下記解説の中で逆接続は使うことがあります。600Ω:数kΩの入力トランスを逆に繋げばラインアウトトランスとして使えるということですね)

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LUNDAHL には LL1530 という、 ダイレクト・ボックス用*と謳ったトランスがあります。 ダイレクト・ボックス用と言っても素性は普通のマイク・トランスです。巻線比は 1 + 1 : 3.5 + 3.5。1次側、2次側とも複巻です。 1次側をパラレル、2次側をシリースにすると巻線比 1 : 7 になるので、インピーダンス比は 1 : 49 です。

ダイレクト・ボックス用として使う場合は、信号の増幅ではなく高い入力インピーダンスを求められるので、1次側と 2次側を逆に使います。 つまりいつもの 2次側を入力に、1次側を出力にします。この時点で、インピーダンス比は 49 : 1 です。


ここで出力が一般的なマイク・アンプの入力インピーダンス 2kΩで終端されたとすると、入力側のインピーダンスは計算上 49倍の約 100kΩという高インピーダンスになります。ただし(当然ですが)ゲインは約 17dB 下がるので、それを含めてマイク・アンプで増幅して やることになります。

LL1530を使ったダイレクト・ボックスは、アメリカ製のそれによくある ず太いサウンドとは対極の、非常に繊細で肌理の細かいヨーロピアン・サウンドを醸し出してくれます。

*ダイレクト・ボックスとは : エレキ・ギターのような出力インピーダンスの高い楽器の出力を、 ミキシング・コンソールまで延々とシールド線を引っ張って接続するのは音質的によくありません。 そのためにギターのすぐ近くで高いインピーダンスで一度信号を受け、それを低いインピーダンスに変換して、バランス(平衡)伝送で コンソールに送ります。

このインピーダンス変換器のことをダイレクト・ボックス(ダイレクト・インジェクション・ボックス)と呼びます。 つまりギター・アンプの音をマイクで拾うのではなく、ギターの出力を直接コンソールに入力する、という意味です。 変換方式はトランスを使ったパッシブ型やFETプリアンプを使ったアクティブ型など様々な種類があります。


ライン・トランス

マイクロフォンのような微少信号を増幅する目的ではなく、ライン・レベルの信号を扱うトランスを総称してライン・トランスと呼びます。 ライン・トランスはバランス−アンバランス変換、グラウンド・アイソレーション、インピーダンス・マッチング、分岐回路など様々な目的に合わせた 多くの種類があります。

ライン・インプット・トランスは機器の入力部に使われ、バランス伝送されてきた信号を受けて内部回路に送ります。 ライン・アウトプット・トランスは内部回路の出力をバランス伝送路に送り出します。


 アンバランス−バランス変換


アンバランス出力の機器をバランス入力のパワー・アンプにつなぎたいのだが、というお問い合わせもよくいただきます。せっかくパワー・アンプの入力がバランスなので、1-3 ピンをショートしてアンバランスにするのは忍びないですね。トランスを使いましょう。

この場合も外来ノイズに弱いアンバランス(不平衡)部分を短く、バランス(平衡)部分が長くなるようにしましょう。ライン・アウトプット・トランスをアンバランス機器の直後に入れることをお薦めしています。接続は以下の通りです。1次側と 2次側でグラウンドが完全にフローティングになっています。
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もしアンバランス機器の出力レベルが、相手のパワー・アンプに比べて著しく低いようでしたら、 1 : 1 のライン・トランスではなくマイク・トランスで昇圧してやるという方法もあります。

マイク・トランスは最大入力レベルは低いのですが、たとえば基準出力レベルが -20dBu あたりのコンシューマ機器が最大で +10dBuも出せるとも思えないので、特に問題はないでしょう。むしろ SN 比が向上する、プレゼンス感など音質が向上するといったメリットも大きいものです。実際に LL1538 の音質を活かしてこうした用途にお使いのユーザーもいらっしゃいます。
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ただしこの場合、アンバランス機器から見た負荷インピーダンスが、パワー・アンプの入力インピーダンスより下がってしまいますので注意が必要です。

LL1538 を 1 : 2.5 接続で使った場合、パワー・アンプの入力インピーダンスが 50kΩでもアンバランス機器の負荷インピーダンスは 8kΩになります。もし『負荷インピーダンス 10kΩ以上』という機器の場合はオーバー・ロードになってしまいます。アンバランス機器のドライブ能力に注意しましょう。



LUNDAHLのライン・トランスにインピーダンス表示がない理由


「 LUNDAHL のライン・トランスのインピーダンスは何Ωですか?」というご質問を受けることがあります。一般的にライン・トランスは巻線比が同じ 1 : 1 であっても 600Ω : 600Ω、とか 10kΩ : 10kΩ などとインピーダンス指定があります。しかし LUNDAHL ではデータ・シートにインピーダンスの記載がありません。

それでは逆に、なぜ 600Ω用や 10kΩ用があるのでしょう? 下の矩形波応答波形を見てください。これは昔からある国産の 600Ω用ライン・トランスの応答波形です。測定器の入力インピーダンスを 600Ω で終端した場合(左)はまずまずの矩形波応答を見せていますが、ハイ受け( 10kΩ )にしてみると(右)、盛大にリンギングが現れます。線路インピーダンスに合わせたコイルの巻き方をしているので、設計と異なるインピーダンスでは実力を発揮できないというところでしょうか。

BTS 600Ω
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BTS 10kΩ
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次は LUNDAHL の LL1524 というライン・アウト・トランスです。600Ω 負荷でも 10kΩ 負荷でも波形にほとんど違いが見られません。LL1524 に限らず、LUNDAHL のライン・トランスはみな同じです。

LL1524 600Ω
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LL1524 10kΩ
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LUNDAHL トランスは伝送ラインのインピーダンスに関わりなくお使いいただけるため、データ・シートにはインピーダンス値の 記載がない、ということでしょう。
大変優秀なトランスとわかりますね。
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