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2016年12月28日21:54

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12/25 クラーナハ展 500年後の誘惑@国立西洋美術館

今年最後の美術展はクラーナハ展。○○美術館展で目にする絵、人の顔や体型がどうも不自然で、昔から好きにはなれない。が、大判チラシの表裏のユディトと正義の女神の冷ややかな表情が妙に妖しくて、気になる気になる!金券ショップでチケット入手。
街はイヴの喧噪が嘘みたいにクリスマス当日なのに(だから)静か。アメ横の歳末買出しにはちょっと早いからかな。
点数は90点ほどなので、常設合せて2時間を予定していたけれど、クラーナハ展だけで2時間。音声ガイドを借りたらもっとかかったかもしれない。思った以上に見応えがあった。歴史的背景も知ることが出来たし、当時流行の衣装、髪型などもかなり興味深い。そして何より、あの、デッサンが狂ったような不自然な体型の裸婦に底知れないしたたかさをみて、ちょっと震えた。
フォト
http://www.tbs.co.jp/vienna2016/

ルカス・クラーナハ(父、1472-1553年)は、ヴィッテンベルクの宮廷画家として名を馳せた、ドイツ・ルネサンスを代表する芸術家です。大型の工房を開設して絵画の大量生産を行うなど、先駆的なビジネス感覚を備えていた彼は、一方でマルティン・ルターにはじまる宗教改革にも、きわめて深く関与しました。けれども、この画家の名を何よりも忘れがたいものにしているのは、ユディトやサロメ、ヴィーナスやルクレティアといった物語上のヒロインたちを、特異というほかないエロティシズムで描きだしたイメージの数々でしょう。艶っぽくも醒めた、蠱惑的でありながら軽妙なそれらの女性像は、当時の鑑賞者だけでなく、遠く後世の人々をも強く魅了してきました。
日本初のクラーナハ展となる本展では、そうした画家の芸術の全貌を明らかにすると同時に、彼の死後、近現代におけるその影響にも迫ります。1517年に開始された宗教改革から、ちょうど500年を数える2016-17年に開催されるこの展覧会は、クラーナハの絵画が時を超えて放つ「誘惑」を体感する、またとない場となるはずです。

1蛇の紋章とともに〜宮廷画家としてのクラーナハ
2時代の相貌〜肖像画家としてのクラーナハ
3グラフィズムの実験〜版画家としてのクラーナハ
4時を超えるアンビヴァレンス〜裸体表現の諸相
5誘惑する絵〜「女のちから」というテーマ系
6宗教改革の「顔」たち〜ルターを超えて

(以下、断りのないものは全てルカス・クラーナハ(父)の作品)

《聖母子》フォト

《聖母子と幼き洗礼者聖ヨハネ》フォト
聖母子像は定型で特に目新しくはないけれど、でもやっぱりクラーナハチック。

《聖カタリナの殉教》フォト
これもまたよく描かれる画題だけれど、少女漫画主人公のような聖カタリナと中央の人の宇宙服?のけぞる人?がなんだかツボ

クラーナハが仕えたザクセン公家の人々の肖像は衣装が精緻で美しかった。
《ザクセン公女マリア》フォト

《ザクセン選定侯アウグスト》《アンナ・フォン・デーネマルク》フォト
公女マリアのひっつめ髪を覆う髪飾りは真珠を縫い込んだものかな。袖の切り込みは当時の布に伸縮性がないため曲げ伸ばしのために入れたものが飾りとなった、とテレビ番組で知った。
選定侯夫妻の衣装の金糸刺繍はお揃いの文様。とても細かくリアルに描き込まれていた。クラーナハは全身肖像画の先駆者だと言う。
他の肖像画で気になったのが、男性の大きな毛皮のショールや首飾り。宝石を繋ぎ合わせた鎖形の大きな首飾りのヘッドは胴体を括り付けられたへにゃっとなった羊があって、それは金羊毛騎士団の勲章らしい。

《ヴィーナス》(左)《ルクレティア》(右)フォト
これぞクラーナハの真骨頂。思ったよりすごく小さな絵でびっくりした。そうか、応接間に飾るのでなく、プライベートルームに飾って愉しむものなのね。官能の象徴ヴィーナスと貞淑の象徴ルクレティアが闇に浮び上がる。バランスのおかしい体型にもちもち肌。ほとんど透明の布が視線を誘い、腫れぼったいつり眼と(個人的には)長めの足指がひどくエロっぽい。

《ルクレティア》フォト
こちらの方が貞淑の妻らしいけれど、クラーナハの女性はいつも鑑賞者に視線を投げ掛けるのでドキドキしてしまう。

《正義の寓意》フォト
更にエロっぽいのがこちら。手の持つ剣は力、天秤は正邪を測る正義を表しているが、投げかける眼差しと傾けた首、バランスの悪い体型がとても正義の女神に見えない。が、これが正義の女神なら、ひれ伏して懺悔する男性も多いのかとも思う。

レイラ・バズーキ《ルカス・クラーナハ(父)《正義の寓意》1537年によるコンペティション》
フォト
この展覧会の特徴は、クラーナハに影響受けた画家を紹介しているところ。ピカソや岸田劉生、森村泰昌なども面白かったが、これは大きさで圧巻。名画の模写を大量生産している中国大芬油画村の人たちに《正義の寓意》を描かせたものを18列5段に並べて展示。『絵画を量産しようとする欲望にそもそも「正義」などありうるのか、けれどもそれはクラーナハが500年前にその工房経営を通じて切り拓いてしまった歴史的問題でもあるのだ』とあった。

《ヘラクレスとオンファレ》フォト
女性の魔力に脂下がったヘラクレスのでれでれの顔がマンガ過ぎる。笑える。でも、これが当時受けたのだろうなぁ。

こちらは更に怖い女たち。
《洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ》(左)《ホロフェルネスの首を持つユディト》(右)
フォト
首を突き出してにやっと笑うサロメも怖いが、澄んだブルーの瞳が美しい無表情のユディドもかなり怖い。
ちなみに、ユディドの手はどうなっているんだろうという疑問があったので、実物をじっくり見てきた。透明に近い薄い手袋をはめていて、はめた指輪の部分だけ切り込みを入れているようだ。手首にも切り込みがあった。袖の切り込みのように、布に伸縮性がないため動かしやすいように入れられた切り込みである。指には沢山の指輪をはめていて、この上からぴったりした手袋をするのはかなり窮屈だろう。こんなに薄い手袋が当時あったかどうかは解らないが、クラーナハは身体を覆う布もほとんど透明のように描いているから、やはりエロティックな指先にもこんな薄い手袋をはめさせたのではないかしら。ちなみに森村泰昌氏の作品には手術用手袋を使用していた(笑)

《子どもたちを祝福するキリスト》フォト
この絵も備忘録であげておきたい。というのは、最近マイミクさんが行った台湾の奇美美術館の所蔵だからだ。大富豪が作った奇美美術館はものすごいコレクションの数らしい。いつか行ってみたい。

さて、さいごに皆が知っているクラーナハ、マルティン・ルターの肖像。教科書で有名。
フォト
これは1529年に描かれたもので、下はその4年前。
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比べると少し太って、自信に満ちている。歴史的にも面白い展覧会だった。

1月15日まで。

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