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2016年12月15日02:18

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明日の朝に 19

明日の朝に 19
「口伝することを止めたいと思ったら・・自分の代で終わりにしたいと思ったらどうするだろう?俺が艦長の末裔だと仮定して・・正直、俺は口伝しようと思わないよ。理沙の言う、異星人の末裔としての能力を俺は持っているかも知れない。だけど、親父から引き継いだ遺伝子は自己嫌悪と社会不適合者である自覚だけだ。他人の心を読んだりする能力などいらない。消してしまいたいよ」
「あなたのお父さんが消息不明になり、あなたもまたこの世界で篠原康則に憑依することに成功した。それが艦長の血を断ち切ることになるってこと?」
 理沙の血が騒いでいる。どう判断すれば良いかを考えている。12名のクルーは艦長の指示命令を受け、あらゆる階層に潜み、忠実に任務を果たすが、まったく自己判断をしなかったわけでは無かったらしい。現場で起こる不測の事態に対応する判断力、決断力は持っていたようだ。しばらく考えた後に理沙が言った。
「あなたが19歳の時に出会った酔っぱらいの女性・・冗談で子供が出来たのかもって言ったけど・・ひょっとしたらほんとに子供が出来たのかも知れない」
「その可能性はあるけど・・親父が消息不明になったのとは関係無いんじゃない?」
「よく考えて・・あなたはその女性と交わって・・ほかにも理由があったでしょうけど、その後・・40歳になるまで女性に興味を持たなかった・・正確には興味はあったけど関係を持たなかった・・そこへ現れたのが百合さんよ。酔っぱらいの女性との間に子供が出来たとしたら、今の年齢は19歳か20歳になると思わない?わたしたちの年齢は、地球人よりも何歳か若く見えるから女子高生でもじゅうぶん通用する・・」
「そうか、だから俺は百合を娘みたいに感じていたのか?真由美が本当の母親で無く育ての親なのか?でも・・百合は俺の子だと言うことを知っていたのだろうか?なぜ真由美と俺を結婚させ、20年も暮らさせたのだろう?」
「真由美さんと愛し合って結婚したんじゃなかったの?」
「いや、最初に俺の前に現れたのは百合だよ。そして真由美がバツイチだからと、結婚を勧めた。今考えると、真由美との結婚も離婚も、首謀者は百合だ。真由美は指示に従っただけだと思う」
 これはどういう意味を持つのか?俺は理沙と顔を見合わせた。親父の行方不明、酔っぱらい女、真由美、百合・・これはどう繋がるのだろう?真由美と暮らした20年の間に、佑大が産まれた。百合とはずいぶん歳の離れた腹違いの弟を、今思うと百合はまるで我が子のようにかわいがっていた。ずっと不思議に思っていたが、真由美の百合に対する態度は母親が娘に接する態度では無かった。百合に仕える召使のようだった。友達のような母娘の関係だとその時は思っていたのだが・・
「わたしにはこれ以上考える力がないわ。それに、そろそろ自分の世界へ帰らないと身体がもたない。いったん帰って、みんなと相談して見る。あ、そうだ。あなたも帰らないと・・いつまで脳死状態が続くかわからないのよ」
「今度はメグも連れて来いよ」
 俺の言葉に頷いて理沙は姿を消した。別人へ憑依しなくても、幽体離脱して動き回る方法があったことに、俺は改めて気づいた。理沙の指示を守って時間旅行の訓練をじゅうぶんに受けるべきだったのだ。過去へのワープと現実へ帰ることを繰り返すべきだった。そうすれば明日の朝に俺が消えても篠原康則が消えることはなかったはずだ。半端な知識で篠原康則を巻き込んでしまったことを後悔した(続く)

 (^_-)-☆クウネル日記(^_-)-☆
  撮影意欲がどうも湧きません。夏は暑いからやだ、冬は寒いからやだ・・って春と秋しか写真が撮れませんね(笑)正直桜の開花を待っています(笑)

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