18940714としておく NO843 東学徒の全州城占拠まで
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駐韓日本公使館記録 3巻 四. 東学の乱と日清関係 参 (1) 朝鮮東学派の起因並びに内乱の事
文書題目 (1) 朝鮮東学派の起因並びに内乱の事
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(1) 朝鮮東学派の起因並びに内乱の事
朝鮮開国四百六、七十年（＊開国470年が西暦1861年）の頃、忠清道に崔福述 (一説に崔済愚とも云う)と言う者がいた。
東学派 (俗に神仙術、もしくは遁甲蔵身法と言う) と称する宗派を起し、衆民の帰依が日に日に盛んであったが、朝鮮政府はその説く所が人を迷わし治安を防害するものであると認め、厳令を発布してこれを禁止し、また教祖・崔福述を捕えて斬首の刑に処した (一説に崔福述を流刑に処したが、配処に送る途中の船中で病沒したと言う) 。
しかしながら信者たちは教祖とともに滅ぼし尽くされなかっただけでなく、かえって慶尙・全羅・忠清の参道に充満し、全羅道などはこの道の官吏の中にも秘かにこれを信奉するものが現れることになり、最近政府が耶蘇教の禁を解いて外人の布教を許したのに、東学派に対してだけは依然禁を解かないでいるのを見て大いにその非を論じ、しきりに不平を鳴らし、明治二十六年（＊1893年）の春、忠清道監司に迫って「東学派の布教を公許し、併せて教祖・崔福述の祠を建て奉祀することを許す」等の数件を中央政府に申し立て、「裁可を与えなければならない。事をもし聞き入れなければ直ちに京畿の監司に訴えるつもりだ」と威嚇し、檄を四方に伝へ衆徒を集めるなど、不穏の挙動を現わしたので、政府は左右捕盜庁に命じて主謀者十数名を捕えさせた。
ここに至って東徒は韓廷の役人の行為を憎み、今後大いに為すべき事があるだろう考え、密かに時機の到来を待っていた。
每年参月二十五日の世子宮（＊皇太子）の誕生日には、慶科と称する科挙を施行するをので八道の人士がこれに応じようと京城に集合するのを例としている。
そこで東徒はこの機会を利用しようと、皆で上京し京城の内外各所に散宿し、それぞれ気脈を通じ、宗徒の中心となっていた全羅道の住民・朴外浩は、明治二十六年（＊1893年）参月二十七日一枚の建言書に「敬天正心保国安民」の八題字を大書し、八十余人の仲間を率いて宮殿の門に進み伏して取り次ぎを促した。
建言書の要点は「教祖・崔福述の善行を是認し、その非命の死を弔い、祠を建て祭を催し、またこの宗教の禁令を解いて布教を公許せよ」と言う事であった。
しかしながら国王殿下はその求めを容れられず、かえって四月十四日に次の勅諭を下して、申し出た朴外浩を拿捕せよと法司並びに各地方官に命ぜられた。
伝曰爾来搢紳章甫之疏論覽之不覺駭惋詭異荒誕蠱惑煽動愚蠢之氓從以漸染失其恒性瞥不畏法良可痛歎先教後刑王法之所尙而敢以邪波之説 肆然呌閽 無憚之極 不可但誘之於無知 沒覺已也所謂疏頭另飭京外刻期譏捉余外蚩々曉飾禁斷使各安生樂業如或不悛而徒取喧啄為其官者犻不聞知乎若聞知而袖手恬視既失導率之責又稽禁戢之方是可曰尽職乎内而法司外而営邑隨其地方先論當該官長嘗用一切之法斷不�鄲濕�庙堂先将此意措辭厳飾使之反側自安亦知法令必信
（上の「勅諭」の私訳）
「このごろ搢紳・章甫（＊すべての役人と儒者をあわせて言う言葉。ここでは東学派を指す）の言う所を見れば驚きを禁じることはできない。彼らは奇怪ででたらめな話で愚かな百姓らを迷わし扇動し、百姓たちは本来の立場を失って少しも法を恐れなくなっていることは誠に嘆かわしいことだ。先に悟らせ刑罰は後にするということは王法の主旨である。
だが、彼らは恐れることも無く邪悪な言葉で思うがままに上訴し、その遠慮のない行為はただただ軽薄の至りと見えるだけであり見過ごすことはできない。彼らいわゆる指導者たちは京外に命令を下して期日中に捕らえ、その他の愚かな者は悟らせ禁断させて、それぞれ楽に生業に努めるようにしなさい。 万一悔いないで引き続き騒々しくすれば、官長は即座に手を打たなければならない。もし官長たちがこれを聞いてまだ手をこまねくならば、これはすでに指導者の責任を失ったことである。内部では法司から、外部では営邑（＊邑の役人）に至るまで、それぞれその地方でまず該当官長に刑を適用し一切の法を適用することであり、決して寛大に扱ってはならない。 政府でもこのような意で措辞して厳密に離反者を捕えて安頓させ、法令を必ず守るように知らせよ。」
ところが捕吏などは東徒の勢力の威力を恐れ、不用心に手を下すとたちまち災難を蒙ることを恐れ惑いいっこうに応じないので、東徒たちはすでに無事都門を出て帰途に就くことができた。
まもなく東徒たちは続々と忠清道報恩（ポウム）邑に集まり、盛んに砦を築き「斥洋倭唱義」の五字を書きしるした大旗を初めとして、そのほか「尙功」「清義」「水義」「義慶」などの大小の幟旗を翻し、大挙して今にも激しい戦闘を演じようとしているとの飛報があったが、国王殿下の仁愛によって、東学徒たちの無智矇眛が多くて付和雷同していることを憐れみ、ねんごろな諭しを加えて彼等を反省させ、解散してそれぞれの邑へ帰らせようと望み、容易に兵力を用いて鎮圧することを許されなかった。
参判・魚允中を全羅・忠清・慶尙参道の都御史に任じ、その地についても一々聖意のある所を諭し、穏やかに解散を命じかろうじて鎮定することができた。
下って明治二十七年五月下旬、東学党は再び全羅道・古阜、慶尙道・金海府、忠清、平安諸道の不平党たちと共謀して各所に蜂起し、頭に白巾をかぶり、手に刀搶を携え、黄色の旗を押立て、「苛稅と暴虐を加え続ける貪官・汚吏の圧制を掃き清め、政治の弊害を革新して国の基（もとい）を固めよう」と唱道し、夜に乗じて諸官衙を襲い、有司を殺し、米蔵や穀物蔵を破壞し、貢米を掠奪し、官兵を破り、土兵を追い散らし、その勢いはまた前年の比ではなかった。
朝廷はこのために震えあがり、洪啓�癲淵曠鵐殴侫鵝砲望憩せ� (招討使とは先ず首謀者をなだめ、これに応じない場合には初めて征討するとの意味) の職を授け、壮営の兵士八百を率いて現地に向い状況を観察させた。そして招討使は直ちにその兵を水・陸の二隊に分ち、その水路より進行する部隊は招討使自らがこれを率いて仁川に下り、「蒼龍」・「漢陽」の二船と清国軍艦「威遠」に搭乗し、全羅道の西南岸の群山港に向った。
招討使は群山島に上陸するや、論旨を奉じて命令を下し、暴徒に示して次のように宣言した。
「全羅道監司・金文鉉の官職を解き、前古阜郡守・趙秉甲を罷免し流罪に処して百姓たちに対する慰撫の意志を示した。これでももし帰順しないのであるならば京軍は大挙してお前たちを討滅する」云々。
しかし激昂している東徒の軍がどうしてこと諭旨に甘んずる事があろうか。東徒たちは益々勢威を盛んにし、いっこうに鎮定する様子もないので招討使は遂に策を決定して戦いを交えようと興徳（フンドク ＊現在は忠清北道清州市西部に位置する区）に向う。
丁度この時、陸路で戦地に向った京軍は既に全羅道の道境に入り各所で転戦したのだが、戦いに敗れて皆敗走し、六月一日には東徒の軍は既に南道の要地全州（チョンジュ）を襲い、奇計を設けてここを陥れ、招討使などは皆敗れて逃げた。
ここで東徒は軍兵の威力は大いに高まり、勢いは破竹のように進んで、ついに忠清道の公州（コンジュ）・石城（ソクソン）に集合し今まさに大挙して京城に迫ろうとしている。
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