古戦場めぐり「関ヶ原の戦い�ァβ臙�吉継陣（岐阜県関ケ原町）」
◎『関ケ原西部地区』
○「島津義弘陣跡碑」(関ケ原町関が原1869)
神明神社の近くが、島津義弘陣跡になります。戦国の雄・島津軍団1000人を率いた島津義弘は、北国街道をおさえるため、ここ小池村に陣を構えました。西軍がことごとく敗退するなかで、「西軍に島津あり」に勇姿を家康に見せつけるため、義弘は最後の賭けに出たとされます。背進を最強の武器に変えた決断こそ、現代にまで語りつがれる敵中突破でした。名高い敵中突破の起点となった場所。ここから伊勢街道を南下した場所（烏頭坂）に、島津豊久奮戦の碑があります。
○「小西行長陣跡」(関ケ原町関が原2368)
北天満山の裾野を流れる梨木川右岸にある西田公園付近が、「小西行長陣跡」です。ここは、北は北国街道、南は中山道を押さえる重要な場所でした。小西行長は、ここ北天満山に6000余の兵を率いて、石田三成に組し、西軍として参戦しました。関ケ原合戦が始まるとともに、午前8時頃、北天満山から烽火（のろし）をあげて味方に開戦の合図をしました。合図をすると共に、西軍主力の一つとして、東軍の田中吉政・筒井定次らの軍勢と交戦し奮戦します。午後1時過ぎに、小早川らの裏切りより大谷吉継の壊滅を及ぼし、大谷隊が敗れたとの知らせを受けると、小西隊の混乱を招き、それに乗じた本多忠勝の襲撃で、兵士たちが敗退し始めたのは午後1時過ぎのことだったといいます。天満山を越えて揖斐郡の春日方面へ敗走したようです。山頂に布陣できるスペースはなく、中腹に布陣したものと思われます。行長は伊吹山中に逃れましたが捕らえられ、10月1日、六条河原にて石田三成に続き斬首されました。
小西行長は、キリスト教信者として知られていて、豊臣秀吉配下の武将で、洗礼名はアウグスティヌスといいました。一度は敗走するも、その後自首し関ケ原領主であった竹中重門の家来により家康のもとへ送られ、三成らと共に斬首されました。その際、浄土門の僧に経文を置かれることを拒否し、代わりにキリストとマリアのイコンを頭上に掲げたそうです。斬首された首は晒されましたが、改葬はキリシタンの手によりカトリック方式でとり行われたとされています。
○「開戦地碑」(関ケ原町関が原2368)
開戦地碑は、小西行長陣跡からかなり近い、西田運動広場の入り口にあります。諸説ありますが、実際の合戦では、徳川家康の部下・井伊直政が家康四男・松平忠吉とともに前線から鉄砲を撃ちかけ、開戦に至ったようです。東軍と西軍の布陣が終わったのが、現在の時刻でいう午前6時頃。この日、関ケ原では濃い霧が出ており、周辺がほとんど見渡せなかったといわれています。そのために両軍とも下手に動くことができず、霧が晴れるのを待って2時間ほど対峙しています。やがて霧が晴れて周辺の様子が見渡せるようになった頃、この日、先鋒と決まっていた福島正則隊の脇を通り抜ける小人数の隊があり、福島隊に陣借りしていた可児才蔵が呼び止めると、なんと同じ東軍の井伊直政と松平忠吉らであり、忠吉が初陣ということなので物見、つまり様子見のために通るとのこと。しかしこれが井伊直政の策略で、忠吉に一番槍の手柄を上げさせようと鉄砲隊を引き連れて宇喜多隊に向けて発砲します。すると宇喜多隊も、これに応戦するカタチで発砲します。これがキッカケで合戦が始まりますが、この時間が現在でいうと午前8時頃です。これを機に関ケ原の戦いが始まりました。松平忠吉・井伊直政の陣は、関ケ原のほぼ中心にありました。
○「宇喜多秀家陣跡碑」(関ケ原町関が原)
南天満山に陣を敷いたのが、宇喜多秀家でした。現在は天満神社が祀られていて、神社の入口に石碑があります。陣跡の一つ石碑には「浮田秀家」とありますが、当て字というよりも八丈島に流された後、浮田と改名しているため間違いではありません。秀家は、西軍最大勢力の１万7000の兵で関ケ原合戦へ挑みます。午前8時頃、東軍福島正則勢の猛攻から戦いは始まり、秀家の前衛・明石全登の隊との激突となりました。宮本武蔵が奮戦したのも、この辺りといわれています。通説では、井伊直政が宇喜多軍に抜け駆けをし、それを知った福島正則は急ぎ鉄砲隊800をもって、一斉に宇喜多軍に発砲し、決戦が開始したといいます。宇喜多軍は猛将・明石全登の奮戦で福島軍を押し込み、これを見て怒った正則は自ら前線に駆って出て、戦況は一進一退しました。しかし、小早川秀秋の裏切りで宇喜多軍は崩れ、それを知った秀家は小早川隊に突撃しようとしましたが、明石全登の諫めによって戦場を逃れたといいます。
秀家は、備前国岡山城（岡山県岡山市北区）主の宇喜多直家の次男として元亀3年（1572）に生まれました。幼名は八郎。彼の父は宇喜多直家といい、成り上がるためには手段を選ばなかったといわれ、あらゆる手段を取りついには備前一国を治めるまでになります。こういった所業で、後世に斎藤道三や松永久秀とならび、三大謀将、あるいは三大梟雄といわれたりもしました。そんな直家も、秀吉の毛利攻め時に織田家に降り、その後、直家の次男だった八郎は、秀吉の「秀」の字をもらい元服して秀家と名乗りました。その後、秀家が家督を継ぎ、豊臣政権では五大老という政権の中枢の存在にまでになりますが、秀吉没後、家康をきらい三成に加担するかたちでの関ケ原参戦でした。関ケ原の敗戦後、秀家は変装して薩摩の島津氏を頼ります。しかし秀家潜伏のウワサが流れたので、島津氏もいつまでも秀家をかばうことができず、ついに関ケ原合戦から3年が過ぎた慶長8年（1603）に幕府へ渡され、本来ならば処分されるところを島津忠垣、前田利長らの助命嘆願によって、八丈島に流されます。しかし、秀家の正室・豪姫の実家である加賀の前田家から、各年で米俵70俵を援助してもらいながらでも、八丈島ではかなり不自由な生活だったらしく、八丈島の代官におむすびをご馳走されて喜んだ話や、福島家の船が偶然難破しかけて八丈島に避難した時、いろんなものを分けてくれと、やたらしつこく頼んだというエピソードが残っています。その後、83歳まで生き、明暦元年（1655）に天寿を全うしましたが、すでに徳川幕府4代将軍・家綱の世でした。
○「平塚為広碑」(関ケ原町藤下445)
平塚為広の碑は、大谷吉継陣跡の山を下りて道の東側にあります。関ケ原に隣接した美濃垂井（1万2000石）を治めていたこともあって、合戦では為広がいち早く西軍として参戦しました。その背景には、大谷吉継と為広が盟友であったという話もあるようです。なお、平塚隊は大谷隊前方に布陣し、病身の吉継に代わって為広が両軍を指揮していたとされています。ちなみに、この碑は平塚家8代為忠の次男で、評論家・女性解放運動家として有名な、平塚らいてうの父である平塚定二郎により建立されました。
平塚隊は関ケ原合戦時、大谷隊支援のために自隊の進行方向を変え、裏切った小早川隊と激突しました。その時に詠まれた辞世の句には、「名のために捨つる命は惜しからじ 終に留まらぬ浮世と思へば」（名誉のために殉じられるなら、自分の命など惜しまない。限られた人生なのだから）とあります。これに対し大谷吉継は、「契りあらば六つの巷に待て暫し おくれ先立つ事はありとも」（共に死ぬ約束があるのだから、六道の分かれ道でしばらく待っていて欲しい。遅れて、あるいは先に死ぬことはあっても）と返歌しました。その後の奮戦で為広は力尽きてしまいましたが、義を貫き、勇を持って戦った武将として、後世に語り継がれています。
○「大谷吉継陣跡碑」(関ケ原町山中30)
大谷吉継は会津征伐に従軍するつもりで、垂井まで来ました。そのとき、石田三成に佐和山城に招かれ、家康打倒の密計を打ち明けられました。三成を諌めましたが、聞く耳を持たなかったといいます。彼の忠義心に絆され、また長年の友情に応えるべき、また吉継は死期が近いので、豊臣家のために一肌脱ぐことを決心しました。親友・石田三成の懇請を受けた吉継（吉隆）は、死に装束で、ここ宮上に出陣してきました。松尾山に面し、東山道を見下ろせるこの辺りは、古来山中城といわれるくらいの要害の地でした。9月3日の到着後、山中村郷士の地案内と村の衆の支援で、宇喜多隊ら友軍の陣造りも進めます。東山道（中山道）の押さえることが、目的だったと考えられます。決戦を前に、吉継という名は没落した三好義継と同音であり、縁起が悪いので吉隆に改名したといいます。また合戦前日、かねてから内応を疑われていた小早川秀秋が松尾山に着陣したため、小早川隊への備えとしての使命も兼ねることになりました。15日未明、やや下って藤川台(口北野)に押し出し、布陣し直したといいます。大谷隊は、戸田重政父子・平塚為広らとともに奮闘しますが、所詮、兵数に乏しく、寝返った小早川秀秋1万5000の標的となってはどうしようもありませんでした。一時押し返す場面も見られたものの、そこへまた、脇坂・小川・朽木・赤座の4隊の裏切りに遭い、壮絶な死闘の末に壊滅、ついに吉継は首を敵方に渡すな、と言い残して自害しました。あまり知られていませんが、大谷吉継陣跡碑のすぐ後ろには、東西数十ｍにわたって空堀の遺構がみられます。
【常盤御前の墓】(関ケ原町山中191)
関ヶ原町の大谷吉継陣址の近く、山中という地区があります。ここは織田信長ゆかりのエピソードが残る場所です。この山中地区は、かつて中山道の宿場があった場所で、源義経の母である常盤御前の墓があります。常盤御前の墓は全国にいくつかありますが、この地の伝承によると武蔵坊弁慶達と共に東国へ向かった義経を追って、乳母・千種と山中の地にたどり着いた常盤御前は、盗賊に襲われ亡くなってしまいます。これを知った山中の里人たちは常盤御前と千種を哀れんでこの地に葬り塚を築いて供養したそうです。
○「大谷吉継の墓・湯淺五助の墓」(関ケ原町藤下678)
大谷吉継と湯淺五助の墓は並んで建てられています。説明板には、親友三成のために死を共にする決意をしたこと、家臣の湯浅五助に首を渡すなと言い渡して自害したこと、このお墓は敵の藤堂家が建てたことなどの説明があります。吉継は、石田三成の挙兵を無謀だと諌めましたが聞き入れられず、関ケ原に参戦しました。吉継はハンセン氏病を患い、甲冑は身につけず顔を白い布で隠し、馬には乗れないので、輿に乗って采配をふるっていたといいます。吉継は寝返った小早川と激戦を繰り広げていましたが、脇坂安治の寝返りなどで包囲され、吉継は自刃します。その首は地中深く埋められたそうです。吉継の首を埋めた湯淺五助は、藤堂仁右衛門に捕らえられましたが、埋めた場所を教え供養を頼んで藤堂に討ち取られます。それに心を動かされた藤堂は、家康に問いただされても答えず、合戦の後、この場所に墓を建てたといわれています。
○「徳川家康の腰掛石」(関ケ原町今須3574)
関ヶ原の戦いに勝利した徳川家康の腰掛石が、今須峠を西に下った今須に残っています。関ヶ原の戦いで勝利した徳川家康率いる東軍は、一日明けて石田三成の居城・佐和山城がある近江（滋賀県）を目指しますが、その途中にあったかつての中山道今須宿の伊藤家で休憩をとりました。その時、家康が腰掛けたと伝わる石で、江戸時代を通じて本陣の指定を受けていた伊藤家では、代々この石を大切に保存していました。明冶3年の本陣廃止以後は、現在の青坂神社境内にて公開展示保存されることとなり、現在でも神社の境内の奥に「東照宮天下御踏台」として残っています。家康はここで休憩をとった後、いよいよ三成の佐和山城を攻めますが、実際に佐和山城を攻めたのは家康ではなく、関ヶ原合戦途中から東軍に寝返った小早川秀秋、脇坂安治などの、寝返り組を含めた数隊でした。家康は佐和山城攻めに加わらず、高みの見物でその先にある大坂城や今後の豊臣政権のあり方、そして関ヶ原での論功行賞なども、この腰掛け石に座り考えていたのかもしれません。
○「関ヶ原ウォーランド」( 関ケ原町関ケ原1701)
戦国時代を彷彿させる一風変わったテーマパークです。甲冑や具足など本物の資料の展示と野外に展示された武者人形があり体感型の資料館の珍スポットとして話題になっています。野外展示では等身大武者人形を配置し、石田三成の陣や徳川家康の床几場なども再現されています。
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