古戦場めぐり「戊辰戦争・鳥羽伏見の戦い（京都府京都市）」
◎『戊辰戦争・鳥羽伏見の戦い』
「鳥羽・伏見の戦い」は、明治元年/慶応4年（1868）1月3日から6日、長州や薩摩の官軍と、新選組を含む旧幕府軍が戦った戦いで、戊辰戦争の緒戦となった戦いです。戦いは京都南郊の上鳥羽（京都市南区）、下鳥羽、竹田、伏見（京都市伏見区）で行われました。
京都朝廷が、慶応3年（1867）12月9日に王政復古の大号令を発するとともに、徳川慶喜に辞官納地を命じましたが、慶喜は自分１個で即決はできかねるとして、とりあえずは恭順の姿勢をみせ、京都二条城を退去して大坂城に移りました。しかし、その後の慶喜の動きに不審をおぼえた薩摩藩は、もはや政治的な駆け引きでは解決は望めず、開戦あるのみと決し、江戸で挑発的な破壊活動を行いました。これに憤慨した庄内藩による薩摩藩邸焼き討ち事件の報が大坂に伝わると、旧幕臣のあいだで薩摩討伐を求める声が高まり、ついに慶喜は京都への出兵を命じました。旧幕府軍の幕府歩兵隊は、淀・伏見方面から鳥羽街道を北上して京都入りを目指し、会津藩・桑名藩・新選組は、伏見奉行所を本拠地に伏見市街に展開しました。これに対して薩摩藩を中心とした新政府軍は、城南宮から小枝橋方面に東西に長い布陣を敷き、北上軍への備えとし、また伏見の御香宮にも砲兵部隊を配置しました。
3日の夕方、鳥羽街道、竹田街道を北上した旧幕府軍は小枝橋の南、赤池付近で薩摩軍の前衛と遭遇します。旧幕軍の先鋒を務める大目付・滝川具挙(ともあき)と、薩摩軍の椎原小弥太が押し問答を繰り返しましたが、押し問答の末、薩摩兵の大砲が火を噴きます。これが戊辰戦争の始まりです。その砲弾は旧幕軍の大砲に命中、その爆発で旧幕軍は大混乱に陥ります。これによって戦端が開かれ、伏見方面でもその砲声を合図に激しい戦闘が開始されました。戦力は、旧幕府側の１万5000に対し、新政府（薩長）側は4〜5000にすぎなかったのですが、旧幕府側の拙攻と薩摩藩の大砲の威力によって、緒戦から新政府軍側が優勢となりました。この時、旧幕軍と合流した新撰組も加わっており、指揮は土方歳三がとっていました。死闘の結果、旧幕軍が拠点にしていた奉行所が焼かれ、大半が淀まで退くことになります。余談ですが、坂本龍馬はこの1ヶ月半前の慶應3年11月15日に暗殺されています。
翌4日、下鳥羽で旧幕軍は、酒樽を積み上げ陣地を作り薩長軍に抵抗していましたが、伏見からの薩摩兵に側面を突かれ南へ撤退します。伏見でも睨み合いが続いていましたが、旧幕軍の部隊間での連絡ミスが作戦ミスを招き、旧幕軍は敗走することになります。
5日、富森まで下がった旧幕軍は、狭い地形に構築した陣地を有効に使い、薩長軍を食い止めます。しかし、小銃突撃に突破され淀城に入って体勢を整えようとしますが、淀藩から拒絶され八幡へ撤退します。同じ頃、伏見方面でも千両松で激戦がありましたが、薩長軍が制し淀を占領しました。
6日、旧幕軍は男山の麓に陣地を設けます。しかし、前日までに新政府軍に土佐藩が参加し、加えて新政府側に仁和寺宮嘉彰（にんなじのみやよしあき）親王の征討総督就任と錦旗（きんき）出現があり、薩長軍は「官軍」となり、旧幕軍は戦意を奪われ、「朝敵(賊軍)」とされました。これにより、山崎を守護する津藩藤堂家が寝返り、対岸の旧幕軍に砲弾を撃ち込みます。旧幕軍は混乱し、八幡から橋本へ落ち、さらに各地で敗退し、守口を経て大坂まで逃げ帰えりました。
○「鳥羽伏見戦跡の碑」(京都市伏見区中島秋ノ山町)
京都南ICから新城南宮道を西へ折れると、「鳥羽伏見開戦の地」として名が残る小枝橋が見えます。幕末当時には、現在の小枝橋よりも手前（南側）に橋がかかっていました。古い城南宮道の先の交差点に、「鳥羽伏見戦跡」の碑が立っています。説明板に次の説明があります。
「明治元年（1868）1月3日夕方、鳥羽伏見の戦いの発端となった場所。王政復古の後、将軍の領地返納を決めた朝廷・薩摩・長州らからの処置を不満とした幕臣・会津・桑名軍は1日に挙兵、大阪から京都へ攻め入ろうとし、薩摩・長州軍はこれを迎え撃った。城南宮には、薩摩の野津鎮雄らが大砲を備えて布陣。竹田街道を北上してきた桑名軍、幕府大目付滝川具挙が小枝橋を渡ろうとするのを阻止して、談判のあと、薩摩軍から砲弾。この一弾が合図となり、戦端は開かれた。鳥羽・伏見方面で激戦が続き、6日幕府軍は敗退した。」
慶応4年（のち明治元年に改元）1月3日の夕方、幕府軍と薩長軍が鳥羽の小枝橋から城南宮付近で激突します。鳥羽伏見の戦いが始まりました。この戦いが１年半におよぶ戊辰戦争の幕開けとなりました。
○「鳥羽伏見戦勃発地の碑」(京都市伏見区中島御所ノ内町)
鳥羽離宮公園内に「鳥羽伏見戦勃発地の碑」があります。碑文は次のとおり。
「大政奉還し大坂城にいた徳川慶喜（1837〜1913）は、薩摩を討つため上洛を決意し、慶応4年（1868）正月3日、幕府軍本隊を鳥羽街道と伏見街道に分けて京都に進軍した。鳥羽街道を北上する幕府軍とこれを阻止しようと竹田、城南宮周辺に布陣した官軍は、この地小枝橋で衝突した。幕府軍1万5000人と官軍6000人の激しい戦いであった。この石碑は、翌年夏まで続いた戊辰戦争の発端となった鳥羽伏見の戦の勃発地を示すものである。」
○「淀妙教寺の砲弾痕」(京都市伏見区納所北城堀49)
「妙教寺」は、幕府軍と薩摩藩が衝突した小枝橋から南方約６�劼涼賄世砲△蠅泙后５賤箴襪半�枝橋の中間、幕府軍が進行の鳥羽街道脇に所在します。妙教寺本堂への砲弾飛び込み口の痕跡は、本堂の西側に面する土壁の地上２ｍ位の場所に見られ、それが壁を貫通して本堂の柱に当り、さらにその柱も貫通しています。その角度から、砲弾は幕府側発砲によるものと分かります。
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