古戦場めぐり「天誅組・鳥ヶ峰の戦い（奈良県高取町）」
◎『天誅組・鳥ヶ峰の戦い』
文久3年(1863)8月17日、尊皇攘夷派の土佐藩出身の志士・吉村寅太郎らが公家の中山忠光を擁して、天誅組として尊王攘夷派の急進的な志士約1000名が、倒幕の狼煙を上げるため幕府の五條代官所を襲撃し、櫻井寺に幕府に支配されない日本初の政府である五條御政府を樹立しました。武力による最初の討幕運動が大和五條において行われました。大和五條は、北東に金剛山、南西に紀伊山地をひかえ、吉野川がその間を西に流れていて、大和平野から紀州に通ずる重要地点です。古来から、勤王の志の高い十津川郷の入口にあたり、また、伝統的に勤王僧を輩出してきた高野山にも近い地です。幕末の五條には、儒学の大家森田節斎がいて、吉田松陰をはじめ幕末の志士たちを指導し、自ら十津川郷に赴いて十津川郷士を訓練しています。倒幕の気運が高まると、京都の志士たちが節斎と連絡を取り合いながら、十津川郷に入って郷士たちに決起を呼びかけていました。また、五條には幕府の代官所が置かれ、周辺の幕府領を支配する政治の中心地であり、天皇行幸の神武天皇陵までも約20�辧�天嶮の山城高取城も近隣にあるといった地です。
しかし、翌18日に薩摩・会津の公武合体派の謀議により政変が起こり、三条実美ら尊皇攘夷の公卿19人が即時参内停止になり、有名な「七卿都落ち」が起こります。大和行幸は中止になり、一転天誅組は賊軍として追討軍に追われることになりました。天誅組は、尊王の志が厚い十津川で兵を募り、難攻不落の高取城を攻め取り、ここから天下の尊皇攘夷の志士たちに、倒幕の号令を挙げるため、25日に高取城を攻撃するために進軍します。
8月26日、高取の今の町役場がある鳥ヶ峰で火蓋は切られました。高取の森あたり（町立リベルテホールや高取中学校周辺）で、迎え撃つ200名ほどの高取藩士と戦います。高取藩は鳥ヶ峰の丘の上に、大坂城冬の陣・夏の陣で活躍したという高取藩の歴史物の大砲「権現砲」四門を据えて、天誅組に向かって火を噴きます。火力で劣る天誅組は一度敗走します。その夜には、吉村寅太郎率いる別働隊が夜襲を企てて、薩摩まで進軍し、警戒していた高取藩士と薩摩の木の辻というあたりでふたたび戦いますが、吉村寅太郎が味方の鉄砲玉に当たって負傷し、旧大塔村の天辻に置いていた本陣へと敗走します。
その後、天誅組は、圧倒的な幕府の追討軍との死闘をくりかえしながら、血路を開かんとして吉野山中を転戦、西吉野村・大塔村・十津川村・黒滝村・下市町・下北山村・上北山村・川上村から足の郷峠を越えて、9月24日に東吉野村の鷲家口での戦いで最後の死闘を繰り広げ、吉村寅太郎以下16名が討ち死にし、事件は終焉を向かえました。
○「鳥ヶ峰古戦場」(高取町観覚寺990)
高取での戦いの時に、大砲が据えられた役場の敷地内に、「天誅組鳥ヶ峰古戦場」の記念碑があります。
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