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2016年08月22日14:32

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瓶詰の手紙(その4)

 休日の買い物は止めようと考えている。しかし、休日にかぎって足りないものが出る。買い足さなければと、スーパーに行く。この休日のスーパーほどストレスのかかる場所はない。これなら、来たお客にストレスをかけようと工夫しているお化け屋敷のほうが、よほどストレスがない。心臓に悪いのは、むしろ休日のスーパーのほうだ。
 レジ前はいつもより混雑している。人が多いからではない。要領の悪い人が多いからなのだ。品物はいつもより、散らかっている。注意しないと、つぶれた食品をカゴに入れてしまう。筆者は気が弱いので、入れた食品を元の棚にもどす勇気がない。しかし、トイレットペーパーの棚には平気で肉がのっている。パックには入っているが、何もここに戻さなくても、と、そう思う。
 いつものファミレスも休日はどこかおかしい。いつもなら見ることのないカップルがいる。ドリンクバーの前でいちゃいちゃしているのだ。筆者が飲みたいのはコーヒーだ。コーヒーだけ入れさせてもらえればいいのだが、どうやら、男が入れたコーヒーに、そのまま甘いホットドリンクの何かを加えて入れようとしているらしいのだ。女はそれはダメでしょ、と、言っている。ダメなのは、その飲み物ではなく、そうして、もう五分以上はドリンクバーを占拠しているその行為のほうなのだ。見ると、トレーの上には五個のカップが置いてある。最初にのせたものは、すでに冷めているのに違いない。
 外には幸福を無理に演じようとする休日のファミリーがいる。楽しそうだ。この店には一人掛けの席が七つある。気が利いているのだ。
 ところが、一人掛けの七つの席の四つが一人の男によって占領されている。横並びの一つに座り、その隣に荷物。その隣の席はテーブルを強引にくっつけてさらにその隣の席にベビーカーを置いている。一つ空けて、その隣には一人で空間と会話をするいつもの男がいる。この男はときどき空間とケンカになり、さすがにケンカになると、他のお客さまに迷惑ですから、と、追い出される。この男は休日だけでなく、いつも見る顔なのだ。幸い、その日は、にこやかに会話している。機嫌がいいのが男なのか、男の相手の空間なのかは分からない。分からないが、その男の隣には座りたくない。ケンカに巻き込まれることがあるからなのだ。
 仕方なく、四人掛けのテーブルに一人で座る。これが気を使わされるのだ。一人で四人掛けのテーブルを占拠してしまうのだから、普通は気を使うはずだ。いつもなら一時間ぐらい作業をさせてもらっているのだが、三十分ぐらいで遠慮しておこうと考えながら、ベビーカーの男のグラスを見ると、中は空だ。氷もなく、グラスはすっかり乾いている。三十分以上はいたらしいことが分かる。
 子育てはたいへんだろうが、一人掛けを四人分も占拠すべきではないのではないだろうか。
 そんなことを考えながら窓の外を見ると、平和が絵空事のように展開している。
 ああした人生だったら、今の筆者はどうなっていたのだろうか、と、別の人生を想像する。
 ああ、そうなのだ。ああした人生だったら、おそらく筆者は退屈で死んでいたのだから、ここで、ああした人生を羨ましく眺めることもないし、いちゃつくカップルに僻み心十分でイライラとさせられていることもないのだ。何しろ、筆者は死んでいないのだから、と、そう考えて気持を落ち着かせるが、やっぱり、こんなものしか書けない。イライラして書くことに集中出来ないのだ。
 だから、休日の買い物は嫌いなのだ。
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