古戦場めぐり「青山・土器山の戦い（兵庫県姫路市）」
◎『青山・土器山の戦い』
「青山・土器山（かわらけやま）の戦い」は永禄12年(1569)8月9日、播磨国で行われた、西播磨守護代・赤松政秀と姫路城主・黒田氏との間に起きた戦いです。黒田氏の敵は、龍野城主の赤松政秀です。赤松家は室町時代の有力守護の家柄で、この時代には勢力は衰えていたとはいえ、小寺家傘下の黒田家とは動員できる兵の数なども違い大勢力に違いありません。実際、赤松軍3000に対して、黒田軍は1/10の300程の兵力だったといわれています。それを奇策にて撃退し、黒田官兵衛の名前をあげたということで、青山土器山の戦いはひとつ注目すべき合戦です。
永禄元年(1558)、浦上政宗などに擁立された赤松義祐は、父・赤松晴政から赤松氏の家督と置塩城を政争によって奪い、晴政を追放し、龍野赤松氏に匿われます。以後、置塩赤松氏と龍野赤松氏が対立します。永禄7年(1564)、浦上政宗の長男清宗と黒田職隆の娘（官兵衛の妹）との結婚式当日、赤松政秀が奇襲し、政宗父子を討ち取り、室山城を奪います。永禄8年(1565)、 赤松晴政が死去し、赤松義祐と赤松政秀が一旦和睦します。しかし、和睦後も赤松政秀は義祐の意に介さない独断行動を取り、勢力拡大を図ります。永禄11年(1568)9月 、赤松政秀は将軍足利義昭と結び付きを深めるべく、自身の娘を義昭付きの侍女として側仕えさせようと、京へと向かわせます。守護職簒奪を危惧した赤松義祐は、備前の浦上宗景に援軍を要請し、赤松政秀を挟撃します。
永禄12年(1569)、挟撃にたまりかねた赤松政秀は、足利義昭に援軍を要請します。義昭は織田信長に播磨出兵を促し、池田勝正を大将とする摂津衆に別所安治が加わった軍が、播磨の義祐領に侵攻します。備前では宇喜多直家が反旗を翻し、鎮圧のため浦上宗景が帰国します。一転して赤松政秀側が優位に立ち、赤松義祐は置塩城に籠城します。赤松政秀は、義祐方の小寺政職の家臣だった黒田職隆・孝高（後の官兵衛）の守る姫路城攻略のため進軍します。5月、青山（姫路市）で両軍が激突します。織田軍は、庄山城（姫路市飾東町）まで進軍していましたが、備前から浦上宗景が赤松義祐支援のため、播磨に出兵したこともあって撤退しました。
永禄12年(1569)8月9日、織田信長による播磨侵攻の最中、播州龍野城主赤松政秀は3000余の兵を率いて姫路の城を攻めんと、この地より遙か北の龍野街道を東へ侵撃し、小丸山に布陣しました。黒田軍は、主君・小寺政職が殆どの兵を置塩城に入れて義祐と共に篭ってしまったため、動員できたのは300人程度でした。黒田官兵衛は、父職隆のもとを離れ、指揮官として龍野赤松軍を迎えうちました。構えた陣地は、この地より東の菅生川近くの土器山(姫路市下手野)に布陣し、悪戦苦闘を重ねました。その陣地の東一里には、何が何でも防護しなければならない、官兵衛が生誕した姫路城があります。官兵衛は秘策をつくして、不意撃ち、挟み撃ちし敵の軍勢をおいつめて、この地まで撃退しました。戦闘は赤松軍の土器山の黒田軍への夜襲に始まり、激戦になったのは裾野の土器坂でした。黒田軍の被害甚大でしたが、黒田官兵衛は戦闘が長引けば勝ち目は無いと判断、攻勢に出ます。しかし、官兵衛の叔父（職隆の実弟）の井手友氏や母里小兵衛などの有力な武将を失います。
夜が明けると、英賀城主の三木通秋が率いる280の兵が南から赤松軍を攻撃、さらに姫路から、職隆が出撃して赤松軍の後背を突いたことで救われました。赤松軍は優勢を保ったまま、昼には小丸山の陣に兵を収めました。黒田軍の被害は甚大でしたが、官兵衛は、対陣が長引けば勝ち目はないと判断し攻勢に出ます。先の戦いで体の7ヶ所に怪我を負った、幼い頃からの官兵衛の家臣である母里武兵衛(小兵衛の子)は、「これ程の傷を負った者に出撃せよとは死ねということか」と反駁しましたが、官兵衛は「恐らくはそうなるだろう」とだけ、言葉を返したといいます。母里武兵衛は、重傷の身を押して先頭を切って赤松軍に斬りかったとされ、奮戦の末に7本の槍に貫かれ壮絶な死を遂げたといいます。この戦いで、母里一族は24人もの戦死者を出し、後を継ぐものが居なくなってしまいましたが、功績のある母里家が絶えるのを惜しんだ黒田官兵衛は、曽我一信と母里氏の女との間の子に、母里姓を与え名籍を継がせました。これが母里太兵衛で、後に『黒田節』として歌われることになります。戦闘は引き続いており、姫路城の西方の青山(姫路市青山)が決戦場となりました。その後、黒田軍は孝高が先鋒、職隆が殿という布陣で同夜に小丸山の赤松軍を強襲しました。昼までの戦闘での戦果から、黒田軍の反撃を予想していなかった赤松軍はこの夜襲をうけて混乱し敗走しました。黒田勢は、敗走する赤松勢を追撃し、夢前川から龍野城の中間あたりの太子町あたりまで追いかけて、数百人討ち取りましたが、黒田勢の損害も、死傷者287人というひどい状況であったため、それ以上の追撃も断念しました。この戦いで、敵の首70をあげた官兵衛は、奇襲の作戦技もあって有名になりました。後に智将・黒田官兵衛といわれるその兆しを見せたのが、この青山の戦いでした。このことからも、黒田官兵衛がいかに幼少より、知略・軍略・判断力に優れた武将であったかが偲ばれます。西播磨に勢力を張った龍野赤松氏でしたが、この戦いで負けたことにより、一気に衰退することとなります。いよいよ時は戦国時代、この頃はまだ赤松氏の家臣として活躍する初々しい黒田官兵衛ですが、その後は主家を凌ぎ豊臣秀吉をも脅かす存在に成長します。
○「青山古戦場」(姫路市青山1464)
「青山古戦場」の激戦地は、現在青山ゴルフクラブとなっており、その敷地の脇に古戦場の碑があります。ここは、黒田官兵衛初陣の地といわれます。青山の戦いで黒田官兵衛が陣取った青山とは、夢前川の東岸(対岸)にある低山の一つ下手野の船越山(土器山=秩父山)のことで、当時は、瓦山と呼ばれていました。ゴルフ場にある古戦場の碑には、正面に「史蹟 黒田官兵衛古戦場跡」、側面に「ここは戦国の世 永禄12年8月姫路城主黒田職隆の姫路軍と龍野城主赤松政秀の龍野軍が戦い 黒田職隆の嫡男黒田官兵衛孝高が龍野軍を敗り 初陣を飾った古戦場である」とあります。また、ゴルフ場の敷地内に大きな千石池があり、千石池は「戦国池」とも呼ばれ、青山の戦いでの戦死者が多く沈んでいるといわれています。
○「土器山」(姫路市下手野・夢前川東岸)
「土器山」(かわらけやま)は、黒田官兵衛が24歳のとき自ら指揮をとり10倍もの敵をものともせず、多大な犠牲を払いながらも辛くも勝利を収めた「青山合戦」の舞台の一つ、船越山です。船越山は、国道2号線と夢前川が交わる地点の北東に位置する標高が60m程の低い山で、三つのピークを持ち、西から秩父山・船越山・西山といいます。この三つのピークのうち、秩父山に黒田官兵衛が陣を構え、その当時は土器山（かわらけやま、古くは瓦山）と呼んでいたといいます。船越神社・金比羅宮の入口に説明板があり、次の説明があります。
�牘箆�12年(1569)、黒田官兵衛孝高は、播州姫路城を攻略せんとする龍野藩主赤松政秀を迎え撃つために此処土器山に布陣した。時に官兵衛は24歳、正室の幸圓(てる)は17歳のときのことである。龍野城を出た赤松軍勢は、龍野街道(古代山陽道)一路に、青山桜峠にさしかかり、はるか東に望む姫路城を手中に治めんと意気を挙げ、菅生川を渡りたむろした。官兵衛は元来御着城主・小寺政職の家臣にあらずといえども、旗下に属せしかば其の職を勤めんと、官兵衛の父・職隆の立場や義理・恩義をわきまえ、赤松政秀をむかへ打った。官兵衛の胸中では、何より姫路城中で生まれ育った郷愁の念が深く刻み込まれていた。それ故に何が何んでも、姫路城は指一本も他人に触れさせたくなかった。此処土器山東方一里足らずに姫路城を控えその防戦、敵方より味方の不意を窺ひて襲い来たり、急に囲い込むという戦法が功を奏して勝利する。姫路の城をこよなく愛した官兵衛の功績を賛美して史蹟とする。��
なぜ土器山という呼び名かというと、応仁の乱の主役の一人・山名宗全が播磨を制圧していたころ、青山の地に五重塔を擁する寺院別荘を建てたという伝説があり、この寺院別荘の瓦や土器をこの山の土を用いて焼成したという伝説があるためだそうです。また、この地が「播州皿屋敷」の元になるお話があった土地ですが、それはまた別のお話に。
【黒田官兵衛陣地跡】
階段を上って行くと「船越神社」と「金毘羅宮」があり、金毘羅宮のわきに「黒田官兵衛陣地跡」の矢印看板があります。裏手の山道を上って行くと、「土器山青山合戦・黒田官兵衛陣地跡」の山標がある、小さなピークに着きます。先ほどの説明板によれば、ここが秩父山にあたります(船越山では?)。先年のNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』では、�犂永識劼�ここに陣地を置き、赤松政秀の軍と戦った。本陣の小寺政職は赤松氏の奇襲に、戦わずに御着城へ逃げ帰ったが、黒田の軍は「姫路を守る。ここから先、赤松の兵は一人たりとも通してはならぬ！」と官兵衛の檄に、少数で奮闘する。井手友氏・母里小兵衛が討ち死にし、黒田勢の被害は甚大。だが奇襲には奇襲を、赤松に決死の攻撃をしかけ、母里武兵衛を失うも退ける�瓩箸痢△△蕕垢犬砲覆辰討い泙靴拭�
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