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2016年05月23日06:02

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小説・限無幻夢 (時間旅行 13)

小説・限無幻夢 (時間旅行 13)
「お爺ちゃんの記憶の中に千代子さんなんていなかった・・」
 理沙が自分のミスを悔やんでいる。メグは何も考えられないようだ。ただ愕いて思考が停止している。
「俺も忘れていた・・と言うより封印してたのかな?千代子と間違いを犯してからは・・好きとか嫌いと言う感情も無しに欲情に溺れた自分が恥ずかしくてね。その過去を知られたくなかったし思い出したくも無かった・・」
「じゃぁ・・わたしとマスターは・・」
 メグの眼に涙が浮かんでいた。諦めと悔しさの源泉は同じ場所にあり、岩のような硬い殻に覆われているようだ。こんこんと湧き出る涙では無く、眼の縁にうっすらと滲む涙である。メグの、岩から染み出るような涙が絞り出すような痛みを持っている。
 なぜ千代子のことを急に思い出したのだろう?遠い過去だった。遠い存在だった。時々工場に指示を持って来る事務員で、顔見知りではあったが親しい仲ではなかった。互いに酒に酔っていたわけでも無い。仕事帰りの電車がたまたま一緒で、なんとなく俺の部屋へ行くことになり、そのまま抱き合った。千代子とはその時だけのつながりだったのだ。恥ずかしく、早く忘れたいと願った事実・・
「過去へ戻ってみてさ」
 俺はメグの顔を見れなかった。理沙を真っ直ぐに見て話した。
「俺の意識と言うか、身体は過去の俺に同化していた。過去や未来では無く、目の前の現実に、俺として生きていたんだよ。うまく言えないけど・・理沙は意識の外にいるじゃん・・俺やメグの記憶を遡って時間旅行をしているのだとしたら、俺かメグの身体の中に在って、俺達には姿が見えないのと違うか?理沙のさっきの話しではそうだったよね?」
「ふふ、お爺ちゃんひとつ忘れてる。個体が違うのよ。お爺ちゃんがワープしたのは過去の自分へであり、わたしはお爺ちゃんの記憶を羅針盤にお爺ちゃんの生きる世界にワープした」
「あ、そう言うことなのか、納得・・訓練が進むと俺にも可能だってこと?」
「そう・・幽体離脱の出来るお爺ちゃんは早い時期にそれが出来ると思う。お爺ちゃんが産まれる前の世代・・明治やその前の徳川幕府の時代を見ることも出来るはずよ。理論上はね」
「日本が大きく動いた時代・・実際にこの目でたしかめることが出来るってすごいな。でも・・俺の故郷は奄美大島だよ。時代の流れに関係無い小さな島で、なんも知らず、ただ食うために必死だったような気がする・・」
「血が能力を決めるって言ったでしょう?ずっと昔へ溯ると源氏に追われて平家の一部が奄美大島へ流れているのよ。お爺ちゃんの故郷加計呂麻島にゆかりの神社などがあったでしょう?」
 そう言えばと俺は思った。子供の時、親父に連れられて島の外れにある神社まで夜中に歩いたことがある。村をいくつも越えた真夜中の山行き。鳥のざわめきや猪の気配に怯えながらの行軍。松明1本の灯りと槍のように穂先を尖らせた杖代わりの棒。長男が4年に一度行わねばならない行事だった。なぜ長男だけなのか?なぜ4年に一度でなぜ深夜で無ければならないのか?聞いても親父は笑うだけだった。(続く)


わーい(嬉しい顔)クウネル日記目がハート
 昨日新聞を見ると一昨日の油津キャナルマルシェの記事が載ってました。土日で行われるイベントの初日にクウネルは参加したわけですが、アイヤァ〜日曜日は堀川運河でいかだ流しをするとの事。こっちの方が写真的には面白かったかもと後悔。でも2日連荘で出かける気力は無し(笑)頑張って小説を書きました。
 途中気分転換に髭の手入れをしようと鋏を入れたら、アワワワ食い込ませてバサリ(笑)どうにもならなくなってそり落とさねばならない羽目に(笑)しばらくは髭無し元マスターです(笑)写真は一昨日撮ったあぶらつでのスナップです犬
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