おはようございます。木下藤吉郎です。
今から15年前の2001年(平成13年)の今日、東京都調布市に建設された多目的ホール「東京スタジアム(味の素スタジアム)」が開業しました。
■会社概要│味の素スタジアム
http://www.ajinomotostadium.com/corp/■東京スタジアム (多目的スタジアム) - Wikipedia
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%A0_(%E5%A4%9A%E7%9B%AE%E7%9A%84%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%A0)
また、今から60年前の1956年(昭和31年)の今日は、弁護士の北村晴男(きたむら はるお)さんの生まれた日です。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E6%9D%91%E6%99%B4%E7%94%B73月10日 木曜日
けさは、きのうの話の続きになります。東日本大震災から5年の節目を前に、きのうの「水曜はスイスイ帳簿記入」の回では、建物や機械などの有形固定資産や、商品などの棚卸資産が災害に遭った場合の会計処理を紹介しました。被害に遭った物品が保険のかかっていないものであれば、その資産を示している分はすべて「災害損失」(火災損失、震災損失など)に振り替え、保険のかかっている分においては、いったん資産勘定を「未決算」勘定に振り替えておき、保険金給付額が確定した時点で改めて損益を決定する処理をするという旨、皆さんはもう大丈夫でしょうか？
今回は、きのうの話の応用、発展編になりますm(_ _)m
資産が災害に遭った際、その資産に保険がかけられている場合は、「未決算」勘定に振り替えますが、必ずしもその全額を「未決算」としない場合があります。
例えば、建物に最大1,500,000円の保険をかけていたとして、その建物の簿価(取得価格−減価償却累計額)が2,000,000円の時に災害で喪失した場合、その時点で保険会社がどう頑張っても契約上、500,000円相当額は取り戻せない金額である事は明らかです。
そこで、このような場合は、
(貸方)(建 物) 2,000,000円
(借方)(未決算) 1,500,000円
(借方)(災害損失) 500,000円
と、保険で取り戻せないのが明らかな分だけ、災害発生時点ですぐに「災害損失」勘定に振り替えてしまうのです。そして、保険金給付額が確定した場合は、「未決算」勘定をきのう紹介しました通り、給付確定額分は「未収金」、差額は「災害損失」もしくは「保険差益」勘定にそれぞれ振り替えるのです。
ところで、とりわけ固定資産が損害を被った場合は、保険金が下りた後、それを基にして固定資産を再度取得するという流れはしごく当然の事であります。しかしここでちょっとしたテクニックがあります。
ここで、こんな流れを想定して仕訳を切ってみましょう。
(問題) 3月15日、建物2,000,000円が火災にあい全焼した。この建物には3,000,000円の火災保険がかけられており、翌日、すみやかに保険会社に問い合わせた。結果、3月25日に保険金2,500,000円が振り込まれる事が確定し、4月25日に保険金が当座預金へ振り込まれた。この保険金を基に当社は全焼した建物に代わる新しい建物を取得した。なお、当社の決算日は12月31日であり、新建物の取得価格は振り込まれた保険金と同額であり、7月1日より事業の用に供している。(終)
こんな場合、きのう紹介した通りに処理しますと、
3月16日
(火災未決算) 2,000,000円 (建 物) 2,000,000円
3月25日
(借方)(未収金) 2,500,000円
(貸方)(火災未決算) 2,000,000円
(貸方)(保険差益) 500,000円
となります。そして、
4月25日
(当座預金) 2,500,000円 (未収金) 2,500,000円
7月1日
(建 物) 2,500,000円 (現金預金) 2,500,000円
となりましょう。
ところで、このケースでは保険金の額が損害を受けた建物の簿価を上回ったため、実際は建物を失い作り直すという「損」を被ったにもかかわらず、帳簿上は「利益」が上がっている事になります。むろんこれは売上に準ずるものではなく、災害という臨時に発生した事柄が原因で生じた「特別利益」であるため、売上や営業外収益とは区別されるものですが、利益が出た以上はそれだけの法人税(所得税)も生じる事になるため、このままでは「災害に遭ったにもかかわらず税金が高くなる」という考え方も否定できません。
そこで、さきの場合においてはこんな処理をする事があります。
7月1日
(建物圧縮損) 500,000円 (建 物) 500,000円
これはどういう事かと申しますと、3月25日の仕訳で生じている「保険差益」という利益相当分だけを、圧縮損(あっしゅくそん)という損失勘定を使って帳消しにしてしまうという会計上のテクニックであり、この手法は「圧縮会計」と言って税法上でも認められている処理であります。
トータルで見れば、わざわざ圧縮会計を施して簿価を切り下げなくても、減価償却を通じて建物の簿価は徐々に費用化されていくことになるので結末は同じですが、被害を受けた会計期間は資金繰りが大変な事態に陥るため、言ってしまえば「税額を均す(ならす)」事で財政を守るという意味がありましょう。
というわけで、今回はややレベルの高い話になりましたが、こうした処理も知っておいて損はないという事で頭の隅に置いていただけたらと思いますm(_ _)m
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