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2016年02月06日23:17

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映画「あん」

若い男がやっている小さいどら焼屋。
通りすがりの主婦が思いついて買ったり、
女子高生が店主をからかいがてらおやつを食べたり。
まあどこの小さい街にもあるんじゃないか、というような。
ある日そこに、ちょっと言動が不思議な老女がやってくる。
「アルバイト募集してるって書いてあるけどわたしでいいかしら?」
店主は断る、75歳にたち仕事は無理だし。
おわびがてらに手渡したどら焼を食べて老女は言う。
「皮はいいけどあんがね。わたしに作らせてくれないかしら。」
老女が持参した手作りあんを食べてみて店主は「手伝ってください」と言う。

老女はハンセン氏病施設入居者だ。手指が曲がって不自由だがあんは作れる。
施設内でずっと、施設入居者のための和菓子を作ってきた。
16歳で入所、中で結婚したが夫は10年前に他界。
妊娠もしたが「許されない」ことだった。
でもこういうことがわかるのは、最後だ。

老女の作ったあんでどら焼は評判になり、行列までできる。
客も店主も老女もみんな、幸せ。
でもある日、この店の家主がやってきていう。
「あのおばあさん、らいびょう、でしょ?うつったら困るわ」
やめさせろ、と言う。
「でももう治ってますよ」と店主はがんばるけれど、
いつしか心ないうわさが広がって、客足が途絶える。
老女は店に顔を出さなくなる。

日本に差別がないなんていわないし、差別には根拠がある。
たとえばハンセン氏病は、ずっと前は原因もわからず治療もなく、
患者が出たら隔離するしかない病気だったことは事実だ。
でも今は薬がある。完治する。
たとえ患者と接触しても感染力は弱いこともわかっている。

でも、差別はまだ存在する。

「妊娠は許されない」の意味は
強制的な妊娠中絶だ。
もし妊娠したほうがなんとか隠して10ヶ月近くまでもっていっても、
無理に帝王切開して早産の赤ん坊を出した。
それでも生きて泣いた子はいるはずなのに、その子たちはいったいどうなった?
ハンセン氏病施設の医療資料室にはたいてい、大きなホルマリン瓶に入った
胎児たちが並んでいるのだが。

老女はその年の秋に肺炎で死ぬ。
店主は店を捨てて、露店でどら焼を売る。
老女のあんのレシピが心にある。
昔けんか相手に重い障害を負わせ、一生つぐなわなくてはならない店主にも
やりたいことがやっとできた。

人間は、どんなに不幸で不自由でも、お互い助け合い支えあうことができる。
差別なんか、気にしなきゃいい。
差別があっても、助け合う心はなくならない。
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