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2016年01月25日08:42

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下村文科相の人となり(4)



神渡良平「苦しみとの向き合い方」(PHP)より文科省大臣・下村 博文(61歳)について紹介しています。以下、要約。

転機となった胃ガンの告知
下村さんの人生の転換点になったのは、平成19年(2007)、第一次安倍内閣で内閣官房副長官をしていたとき、胃ガンと診断されたときだ。忙しい政治生活の中でついつい忘れていた「人間の命は有限である」という冷厳な事実を突きつけられた。安倍総理にも事実は報告せずに急遽入院し、4分の3の胃を切除した。

日頃は読書する時間もないほど忙しいので、これ幸いとばかり読書した。ベッドの中で手にした「言志四録」は、死に直面して改めて人生の意味を問い直している者には身に沁みた。

「例えばその一冊目『言志録』137条にこうあります。
『我が身は天物なり。死生の権は天に在り。まさに順(したが)いてこれを受くべし。
(中略)天これを生じて、天これを死せしむ。一に天に聴(まか)すのみ。吾れ何ぞ畏れむ。我が性は即ち天なり。軀殻は則ち天を蔵するの室なり。精気の物と為なるや、天此の室に寓せしめ、遊魂の変を為なすや、天此の室より離れしむ』。
(私の体は天の命を受けてこの世に生まれたものであって、死生の権利は天にある。だから、従順に天の命を受けるものである。天が私を生み、そして死なす。だから死生は天に任すべきものであって、畏れなくてよい。我が本性は天が与えたものであり、この体は天の与えた本性をしまっておく室である。精気が凝(かたま)って形あるものとなるや、天はこの室に寄寓し、魂が遊離すると、天はこの室より離れる。本性の本性たる所以のものは、つねに死生の外にある。だから私は死を少しも畏れない)。
私は病室にあって、天命に生きて、決してじたばた住まいと、改めて思いました」。


下村さんにとって入院は、幸いにも充電の期間となった。覚悟が決まると、逆にすっきりした。雨上がりの空に富士山がくっきり見え、覚悟を決めた自分を祝福してくれているようだ。手術後、10日目で公務に復帰した。

折から参議院選挙が始まったので、応援演説のため全国を走り回った。しかし、胃が四分の一しかないので、三ヶ月間で10キロもやせてしまった。しかし、政治家下村博文をひと回りもふた回りも大きくしてくれた。

国会内で人間学の学び舎を主催する
下村文科相は国会内で毎月木鶏(もっけい)クラブを主催している。国の舵取りをまかされる政治家こそ、宇宙の大則に立脚し、大所高所から問題点を見なければならないという信念から、人間学の勉強に余念がない。毎月、一道を極めた人々を招いて勉強会を開いており、毎回50名前後の国会議員が集まっている。

こうした会のリーダー役を務める下村文科相は、歴代の首相に師と仰がれた東洋思想家・安岡正篤の著書の古くからの愛読者でもある。

「安岡先生は古典が持つ力についてこうおっしゃってます。
『鎌倉後期から南北朝にかけての臨時宗の名僧・虎関禅師が、(古教、心を照らす。心、古教を照らす)と言っている。つまり求道の最初の段階は、聖賢の古い教えが、暗夜を行く際の提灯の役割を果たし、私たちを照らし導いてくれる。さらに道を極めていくと、いつしか自分の心に観じるものが、聖賢の説いたものと変らなくなってくる。すなわち“心、古教を照らす”段階がやって来て、生きた知識となり、力ある知識が備わってくる。それが“活学”するということだ』。

私もまったく同感です。古典は転ばぬ先の杖として私たちを支え、暗夜を導いてくれます。佐藤一斉の『言志四録』が近年とみに脚光を浴びているのは、その炯眼が見直されてきたからでしょう。

昔から『命(めい)は我より作(な)す』といいます。命は人間の努力によって、創り直すことができます。これを『立命』といい、それを抱くことで人間は努力の人とに生まれ変わります。境遇をそれも天命だと甘受して、そこで誠心誠意、精一杯努力すれば、天は自ら助くる者を助けるので、新しい運命が開けていくのだと確信します」。

僭越ながら、私も講師として今年(平成27年)3月12日「国会木鶏クラブ」に呼ばれていった。忙しい国会議員たち50数名出席され、1時間余り熱心に耳を傾けて下さった。通常こうした会合は、国会議員は少しだけ顔を出し、頃合いを見て退席して次の会合に向かうか、秘書が代理出席するかが多いのだが、この会では最期まで在席された。それを見て私は、国会木鶏クラブは単なる親睦会ではなく、中身の濃い実質的な勉強会なんだなと感心した次第だ。

昔から「温故知新――故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」という。昔から語られた知恵が、新しい意味合いを持って私たちの人生を支えてくれる。だから「人間、学ぶに如かず」である。


以上、終わり。



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