鎌倉市さんぽ「小袋谷・成福寺から常楽寺」
○「おしゃぶきさまと山仲稲荷」(山ノ内)
JR北鎌倉駅の南口を出ると、道路(鎌倉街道)反対側にある山ノ内交番の右横に山中稲荷への参道(路地)があります。
【おしゃぶきさま】(山ノ内1315)
山ノ内交番の右横から参道に入り右に曲がった少し先、路地の右側に小さな「おしゃぶきさま」があります。石を積んだだけの素朴なご神体ですが、関所の関から咳となって咳の神様となったようです。
【山仲稲荷】(山ノ内1326)
さらに歩いて突き当りを左折すると、「山仲稲荷」があります。創建年代は不詳。境内の左手に、安政4年(1857)銘をふくめて2基の庚申塔があります。
○「光照寺(しゃくなげ寺)」(山ノ内827)
鎌倉街道まで戻り大船方面に向かい、北鎌倉女子園入口の先の信号を左に入ると「光照寺」があります。本堂の周辺には、たくさんのシャクナゲが植えられ、別名『しゃくなげ寺』と呼ばれています。ほかにも、ハギ、ユキヤナギ、レンギョウなど、四季折々の花を楽しめます。この辺りは、北条時宗に鎌倉入りを阻止された一遍の法難霊場ともいわれています。
【クルス紋の山門】
山門の欄間にはキリスト教の十字を意味する『クルス紋』が掲げられ、隠れキリシタンを受け入れていた伝承も残されています。
○「稲荷神社」(台1795)
光照寺から切通を通って南に向かい、道標から左に上がって行くと山の中腹に「稲荷神社」があります。台上町の鎮守。祭神は受気母知命（うけもちのみこと）。弘化４年（1847）の社殿再建の勧進状には、山城国飯成山に鎮座する神を承久年間（1219〜21年）に勧請したとあるようですが、神社の起こりの詳細は不明です。『新編相模国風土記稿』には、山神、山王を合祀したとあります。稲荷神社の本殿前からは、円覚寺塔頭雲頂庵や八雲神社を臨むことができます。
【小野田泉里句碑】
�猩�ふん亭行くや鎮守の朝詣��
鳥居の先の石段下に「小野田泉里の句碑」があります。小野田(漱石庵)泉里は、この村に生まれ農業の傍ら俳句を学んだといいます。
【稲荷神社の庚申塔】
社殿の左手に1基の庚申塔があります。
【稲荷神社地蔵堂跡(台公会堂)】(台1633付近)
稲荷神社から北西に向かうと「地蔵堂跡」があり、今は台公会堂になっています。稲荷神社の本地仏が安置された地蔵堂があったところといわれ、安置されていた地蔵は地蔵菩薩像と木造稲荷明神騎像の2体で、鎌倉国宝館に寄託されています。本地仏というのは、「本来の姿をした仏さま」ということです。
○「神明神社」(台4-20)
さらに北西に向かうと「神明神社」があります。台下町の鎮守。元亀年間（1570〜73年）、疫病が流行した際に、村人四人が伊勢詣に出向いて賜った神札を祀ったのが起源とされています。そのため「お伊勢さん」とも呼ばれ、地元では「台のお宮さん」と呼ばれています。また一説には、江戸中期に悪病が流行した際に、源左衛門という者が伊勢詣をして神札を賜ったという話もあります。
【神明神社の庚申塔】
神社の石段の上り口に1基の庚申塔があります。
【江の島古道】
神明神社の石段横の道は「江の島古道」で、鎌倉街道の小袋谷から分岐し、山崎、手広、龍口を経て江の島にいたる旧道も、江の島道と呼ばれていました。この先、山崎の昌清院(山崎1482)の近くには、今でも「江の島道の道標」があります。
○「水堰橋の道標地蔵」(小袋谷2-22)
神明神社から東へと向かいます。旧鎌倉街道の小袋谷川(柏尾川支流)に架かる水堰橋（せいしく橋）に、享保12年（1727）銘の「道標地蔵」(如意輪観音)があり、道標には正面に「右とつか 左藤さわ 道」とあります。水堰橋際は、「せゐ志くはし」という石柱が建っており、奥州平泉の藤原氏調伏に向かう源頼朝の軍勢が隊列を整えたことから、それ以来、幕府の軍勢が鎌倉を出入りするときには必ずここで勢揃いしたので「勢ぞろい橋」と呼ばれ、それが転訛して「せいしく橋」となったといわれています。
【旧鎌倉街道中ノ道】
水堰橋から成福寺の脇を通る古道は、旧鎌倉街道の「中ノ道」と呼ばれる鶴岡八幡宮への参詣道になります。鎌倉街道中ノ道とは、水堰橋から大船に向かい小菅ヶ谷、舞岡公園、日限山、柏尾、川上、左近山、鶴ヶ峰本町、白根、中山、川和、荏田、牛久保、犬蔵、生田、枡形、稲城、是政を通って府中に至る旧道です。
○「成福寺」(小袋谷2-13)
水堰橋から旧鎌倉街道中ノ道を北に向かうと、間もなくJR横須賀線の踏切(第一鎌倉道踏切)があり、踏切の先右手に「成福寺」があります。貞永元年（1232）、鎌倉幕府三代執権北條泰時の末男・泰次により建立されました。泰次は、親鸞の教えを受け成仏の名をもらいました。木造聖徳太子像は、親鸞から与えられたものと伝わります。鎌倉幕府が滅亡後は、住職であった十四代執権北条高時の弟（成円）が寺を追われたことから、70年あまり無住だったといいます。映画俳優・笠智衆は、大船に暮らしこの寺に眠っています。
【亀の窟】
成仏は三代執権北条泰時の子で、「沙門院泰次入道」といわれていました。天台宗を学び、境内に残る「亀の窟」（かめのいわや）で修行を積んだと伝えられています。
【離山富士見地蔵堂】(小袋谷2-14)
旧鎌倉街道中ノ道を少し行くと「離山富士見地蔵堂」があります。開発により移転を繰り返し、昭和58年にこの地に鎮座したそうです。「旧鎌倉街道中道」と書かれた新しい石柱も建っています。裏側には、馬頭観音が2基あります。文化10年の刻像と年不明の文字塔です。
○「厳島神社」(小袋谷2-13)
戻って成福寺の門前から線路に沿って北鎌倉駅方向へ100ｍ行き、左に曲がりさらに進むと突き当たりに厳島神社への石段があります。成福寺の背後の山（亀甲山）にある小袋谷の鎮守。かつては「弁天さま」と呼ばれていた社で、成福寺の南側にありました（JR横須賀線の踏切の向こう側）。しかし、関東大震災で崩壊したため、周辺の吾妻社、八幡社とともに合祀され、厳島神社として現在地に移されました。現在地は八幡社があったところで、成福寺の鬼門除けの宮でした。吾妻社は現在の小袋谷公会堂の場所にあったといいます。
【厳島神社の庚申塔】
厳島神社の参道を上る途中、鳥居の後ろ左側に3基の庚申塔があります。そのうち寛文10年（1670）銘の舟型庚申塔は、上部に阿弥陀・観音・勢至の種子が刻んであります。阿弥陀三尊の種子をつけた庚申塔としては、鎌倉で最も古いといいます。
○「でんすけ山刑場跡(第二鎌倉道踏切)」(小袋谷2-21)
厳島神社からなおもJR横須賀線沿いを北鎌倉駅方面に向かうと、第二鎌倉道踏切があります。山ノ内道の小袋谷交差点から弘明寺方面へ向かう道の踏切です。旧鎌倉街道の踏切が第一で、新鎌倉街道の踏切が第二ということになるのでしょうか。小袋谷交差点から見て、この踏切の手前左側は「でんすけ山刑場跡」といわれています。明治のころに鉄道を敷く工事で、沢山の人骨が出たのだそうです。昔、この辺りが戦場となったときに刑場として使われていた場所だといいます。また、光照寺に近くキリシタンの殉教地でもあり、この地で処刑が行われたのではないかともいわれています。
○「八幡神社(小八神社)」(台2044)
第二鎌倉道踏切から北に向かい、右折して右手のトンネルを潜り、横須賀線沿いに北鎌倉駅方面に歩き、市場公会堂の手前を左に入ると「八幡神社」があります。地図には「小八神社」と書いてあります。八幡神社は台の鎮守で、地元では「小八幡さま」と呼ばれています。享保20年(1735)この地の領主別所氏が石清水八幡宮を勧請し、村人の守護神としたと伝えられています。この神社の石段下には観音堂があり、聖観音と地蔵像が安置されていたといいます。この辺りは「市場」と呼ばれ、毎月5日と10日に「紅花の市」が開かれていました。市場という地名もそれによってつけられました。江戸時代には、水戸の馬喰が水戸藩の牧場から馬をひいてきて馬市を開いていたといいます。
【八幡神社の庚申塔】
八幡神社の石段の途中の右手の平地の上の斜面に、3基の庚申塔と念仏供養塔があります。
○「北鎌倉美術館」(大船2135)
戻って北に向かうと、小坂小学校の向かいに「北鎌倉美術館」があります。私設美術館でありながら、日本の伝統衣装を中心に約500点と多くの収蔵品を持っています。中でも、鎌倉らしい公家や武家の小袖、能の衣装などの染織品や、中世から近世にかけての美術工芸品など多数の所蔵品があります。美術館の展示内容は季節ごとに変わり、季節の伝統行事や風物をテーマにして、収蔵品の中から選ばれ展示されています。
○「多聞院」(大船2035)
さらに北に向かうと「多聞院」があります。山ノ内瓜ヶ谷にあった観蓮寺を前身とし、永享の乱で衰えた観蓮寺を甘糟長俊がこの地に移したと伝えられます。隣接する熊野神社の別当寺院でした。別名「多聞天」ともいわれる本尊の毘沙門天が寺号の由来。「とげぬき地蔵」として知られています。
【晴明石と晴明の井戸】
山ノ内には、陰陽師・安倍晴明に関係する「石」と「井戸」が残されています。これらはかつて多聞院の所有だったといわれています。現在、晴明石は山ノ内の八雲神社の境内に置かれており、晴明の井戸は山ノ内の個人敷地内にあります。その他、山ノ内には横須賀線の踏切近くと第六天社の鳥居背後に晴明の碑が建てられています。
【十一面観音（岡野観音）】
由井の長者といわれた染屋時忠の娘が大きな鷲にさらわれ、 その後、娘の残骨が六国見山の南で発見されたため、時忠は、この地に岡野観音堂を建立し、その菩提を葬ったと伝えられています。その堂に安置されていたのが胎内に娘の骨を埋めたという十一面観音です。明治の神仏分離により多聞院に安置されました。染屋時忠の娘に関する伝説は、来迎寺、魔の淵のお地蔵さま、辻の薬師堂、妙法寺、六国見山、塔ノ辻にも残されています。
【浪切不動尊】
弘法大師（空海）が、修行のため渡った唐からの帰りに嵐に遭い船が沈みかけました。空海が不動明王に祈ったところ、不動明王が現れ剣をはらうと波が二つに割れ、船はその中を進んで無事に日本へ帰えることができたといいます。そのため、多聞院の不動明王は ｢浪切不動尊」と呼ばれるようになりました。
【多聞院の庚申塔】
門前の右手に5基の石塔あり、そのうちの3基が庚申塔です。ほかに念仏塔、 地蔵尊があります。
○「熊野神社」(大船2033)
小田原北条氏の家臣である甘糟長俊が、天正7年（1579）木造の神像を勧請したとされ、その神像は現存しています。神仏への信心が篤い人物であった長俊は、常楽寺の文殊菩薩像の修理も行ったといいます。明治時代に神仏分離令が出されるまで、隣接する多聞院が別当寺でした。末社の金刀比羅社には崇徳上皇が祀られ、寛永２年（1625）、甘糟時綱が字神明下にあったものを境内に移したと伝えられています。
○「常楽寺」(大船5-8)
西に向かうと「常楽寺」があります。三代執権北条泰時が、嘉禎3年（1237）、妻の母の供養のために建てた「粟船御堂」を前身としています。その供養には、源頼朝や北条政子が帰依した退耕行勇が導師を勤めました。仁治3年（1242）に亡くなった北条泰時はこの地に葬られました。のちに五代執権北条時頼が、中国宋から来日し壽福寺に寓居していた蘭渓道隆を招き、禅の道場が開かれました。道隆は、建長寺を開山する以前に、この地で禅を広めていたので、常楽寺は「建長寺の根本」と称されています。
【北条泰時の墓】
本堂の裏手に3基の五輪塔があり、右側の五輪塔が「三代執権北条泰時の墓」です。
【禅宗庭園と色天無熱池】
仏殿の右奥には禅宗庭園が広がり、池は色天無熱池といいます。蘭渓道隆につき従っていた乙護童子が、この池で道隆の衣類を洗濯し空中に投げると、まるで物干竿でもあるかのように宙に浮いたといわれています。乙護童子は、江ノ島弁財天が道隆を守護するためにつけた給仕役。建長寺塔頭妙高院には、乙護童子像が安置されています。蘭渓道隆の給仕役である乙護童子は、江ノ島弁財天のイタズラによって美女に変身させられてしまいました。そうとは知らない童子は、道隆に仕えていましたが、「道隆が美女をはべらせて寵愛している」という噂が広まってしまいました。一連の成り行きを知った童子は、身の潔白を示そうとして、白蛇と化し仏殿前の銀杏の木を七廻り半めぐり、仏殿わきの色天無熱池を尾で叩いたといいます。
【常楽寺の庚申塔】
銀杏の木の根本に1基の庚申塔があるというのですが、見当たりませんでした。
○「大船西の根の庚申塔」(大船6-8)
常楽寺の北、バス停本村を左に曲がると、左手のマンションの敷地内の一番手前に奉拝西国供養塔とともに1基の庚申塔があるというのですが、見つかりませんでした。
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