鎌倉市さんぽ「材木座・光明寺から安養院」
○「和賀江嶋」(材木座6丁目)
鎌倉駅前から小坪経由の新逗子駅行きのバスに乗り、飯島で下車し直進するとトンネル手前の右側に「和賀江嶋」が見えます。説明板によると、現存する日本最古の築港だそうで、往阿弥陀仏という勧進僧が、三代執権・北条泰時の許しを得て貞永元年（1232）に造り上げました。相模川や酒匂川などから運ばれた石が海中に200ｍ程積み上げられ、１か月ほどで完成したといわれます。材木座（由比ヶ浜）は遠浅で風波が荒く、難破・破損する船が多かったため、防波堤の役割を果たしたと考えられます。鎌倉時代には、極楽寺の管理下に置かれ、関料徴収の権利も極楽寺に与えられており、港を利用する人や貨物から津料と呼ばれる税金を徴収していました。
【亀の子岩】
「亀の子岩」と呼ばれる岩には、和賀江嶋の石碑が建てられていて、「てんがしま」とも呼ばれています。
【よじべえ石】
「よじべえ石」は、材木座海岸の沖にあった石。大正12年の関東大震災で海底が隆起して現れた大石で、それまで漁師の網が切られたり、泳いでいる子どもが引き込まれたりして魔の場所として知られていたようです。地元の人たちによって引き上げられたこの石は、現在、鶴岡八幡宮の西の鳥居付近に置かれています。
○「六角ノ井(矢の根ノ井)」(材木座6-15)
小坪海岸に向かうと、飯島崎に「六角ノ井」(矢の根ノ井)があります。鎌倉十井の一つ。伊豆大島に流れた源為朝（頼朝の叔父）が、鎌倉光明寺裏山の天照山めがけて射た矢がこの井戸に落ちたといわれ、そのやじりが残った伝説からこの名で呼ばれており、やじりは今も竹筒に封じて井戸の中段にまつられています。井戸は石を八角に積み上げていますが、六角が鎌倉分、二角が小坪飯島分だといわれています。
○「小坪峠(小坪合戦地)」(材木座6-20付近)
戻って第一中学校に向かうと、学校南側に光明寺坂があり上って行くと「小坪峠」です。光明寺坂上から右手の階段を上り、小坪へと路地を下って行くのが小坪坂になります。峠道(鎌倉側は光明寺坂、逗子側は小坪坂)はその名の通り、鎌倉光明寺から丘陵を越え小坪・逗子方面に向かう道で、鎌倉七口に含まれてはいませんが「古東海道」にあたります。
治承4年（1180）の源頼朝の挙兵に際し、当時三浦半島に勢力を持っていた三浦氏の三浦義明・義澄親子は源氏方に付きますが、緒戦の石橋山の戦いには大雨のために合流できず、三浦に引き返すところ平家方の畠山重忠と遭遇し、8月24日この地で合戦となりました。畠山勢が由比ヶ浜に、三浦勢が小坪峠に陣を敷いたこの合戦を、小坪合戦または小坪坂合戦といいます。
○「光明寺」(材木座6-17)
戻って「光明寺」は四代執権・北条経時が、然阿良忠を招いて開いた浄土宗の大本山です。末寺56ヶ寺を有していました。寛元元年（1243）の創建と伝えられ、鎌倉四大寺にも数えられます（他は建長寺・円覚寺・遊行寺）。山門の扁額「天照山」の文字は、後花園天皇の直筆と伝えられ、後土御門天皇からは「関東総本山」の称号を受けるとともに「お十夜法要」も勅許されました。光明寺はお十夜発祥の寺になります。江戸時代には、徳川家康によって念仏信仰と仏教研鑽の根本道場として、「関東十八檀林」（浄土宗18ヶ寺）が定められ、その筆頭寺院として栄えました。檀林とは、徳川幕府が定めた僧侶の学問所のことです。
【網引延命地蔵】
光明寺の大殿右横に置かれている「網引延命地蔵」（石造地蔵菩薩坐像）は、鎌倉二十四地蔵の一つ。光明寺裏山天照山の小坪路（小坪切通）入口のやぐらから移されたもので、正中2年（1325）の銘のある貴重な石仏です。
【光明寺の板碑】
網引延命地蔵の右横にある弘長2年（1262）銘の板碑には、阿弥陀如来の種子「キリク」が刻まれています。同じく弘長2年銘のある五所神社の板碑と、対をなしているものと考えられています。
【内藤家の墓】
光明寺の内藤家の墓所には、高さ3ｍを超す宝篋印塔や五輪塔が整然と並んでいます。磐城平藩主・日向延岡藩主の内藤家歴代の墓です。
【蓮乗院】(材木座6-16)
光明寺の山門の右手に「蓮乗院」があります。光明寺の支院。鎌倉観音巡礼第19番札所（十一面観世音）。もとは蓮乗寺という真言宗の寺でしたが、光明寺が佐助から材木座に移転した以後、蓮乗院として光明寺の一院となりました。本尊の阿弥陀如来像は、源頼朝に鎌倉入りを進言した千葉常胤の守護仏です。蓮乗院は、千葉常胤の檀那寺であったといわれています。
○「補陀落寺(竜巻寺)」(材木座6-7)
光明寺の北西に「補陀洛寺」があります。養和元年（1181）に源頼朝の祈願所として建立されました。たびたび竜巻に襲われたため、別名「竜巻寺」と呼ばれています。平家滅亡の折、総大将平宗盛が持っていたとされる「平家の赤旗」が保管されています。そこには平清盛が書いたという「九万八千軍神」の文字があります。開山の文覚は、江ノ島に弁財天を勧請し奥州平泉の藤原秀衡調伏祈願を行い、勝長寿院建立の際には、頼朝の父義朝の髑髏を持ってきたといいます。鎌倉観音巡礼第17番札所（十一面観世音）。
○「九品寺」(材木座5-13)
補陀落寺から西に向かうと「九品寺」(くほんじ)があります。新田義貞が京より招いた風航順西によって開かれた寺です。この地は、義貞が鎌倉攻めの際に本陣を構えたところとされ、北条方の戦死者を弔うために建立されました。鎌倉では唯一の義貞が建立した寺で、山門の「内裏山」や本堂の「九品寺」の掲額は、義貞の筆蹟と伝えられています。本尊の阿弥陀如来立像は、宋元風様式を伝えます。その他、石造薬師如来坐像（永仁4年銘）、石造閻魔大王像、石造奪衣婆像がありましたが、鎌倉国宝館に寄託されています。鎌倉観音巡礼第16番札所（聖観世音）。
【新居閻魔堂址碑】(材木座5-11)
九品寺横の海岸通りを西に行くと、郵便局の先の左手住宅の裏庭に「新居閻魔堂址碑」が建っています。この辺りに閻魔堂があったことから、ここを流れる滑川は閻魔川と呼ばれました。閻魔堂は、元禄16年（1703）の大地震と津波によって倒潰したため山ノ内に移されました（現在の圓應寺）。
【材木座海岸】(材木座5丁目)
海岸のほぼ中央に河口を持つ滑川（なめりがわ）を境に、東側を「材木座海岸」、西側を「由比ヶ浜」といいます。明治期に海水浴場となり、夏目漱石の「こころ」に描かれて有名になりました。源実朝が宋（中国）に渡る計画を立て、大きい船を完成させましたが、遠浅のため進水できなかったとも伝えられています。名称は鎌倉時代に、鎌倉七座（米座、相物座、博労座、炭座、材木座、絹座、千朶積座）という商工組合があり、これに由来します。
○「實相寺」(材木座4-3)
九品寺の北東に「實相寺」があります。工藤祐経の屋敷跡に建てられた寺。建久4年（1193）、源頼朝が催した富士裾野の巻狩りの折、曾我兄弟に討たれた工藤祐経の孫にあたるといわれる日昭が開山しました。實相寺は、日蓮が佐渡に流されている間（龍ノ口法難）、一門の拠点として開かれた浜土法華堂をその始まりとしています。日蓮入滅後の弘安7年（1284）に、日昭が寺とし法華寺と呼ばれました。
【日昭の墓】
實相寺東方の墓地上に日昭の墓があります。日昭は、建長5年（1253）に日蓮が法華宗（日蓮宗）を開いたときに弟子となり、日蓮の直弟子六人の筆頭で日蓮亡きあとは一門の長老と仰がれました。
○「五所神社」(材木座2-9)
實相寺から北に向かうと「五所神社」があります。もとの乱橋村には三島社・八雲社・金毘羅社が、材木座村に諏訪社・視女八坂社がありましたが、乱橋村と材木座村が東鎌倉村に編入され、明治6年に三島社が材木座の鎮守として村社となり、明治41年に他の4社が合祀され五所神社となりました。
【三光尊石上稲荷】
境内右手、祠の中に材木座海岸の豆腐川の河口にあったという大きな石が安置されています。舟や海水浴客、漁師に悪さをしたりいたずらをしたため、陸に引き上げられました。その後、個人宅に安置されていましたが、昭和12年に五所神社に移されたといいます。
【五所神社の板碑】
三光尊石上稲荷社の左横に、大日如来の種子「バン」の梵字が刻まれた弘長2年（1262）の銘のある倶利伽羅龍王碑(板碑)があります。廃寺となった感應寺の境内にあった板碑を、五所神社創建のときに移しました。光明寺の阿弥陀如来の種子「キリク」が刻まれた板碑と、対をなしているものと考えられています。
【五所神社の庚申塔】
五所神社境内に20基以上の石塔(庚申塔は16基)があります。中でも、寛文12年(1672)銘の奉造立帝釈天王碑は市指定文化財になっています。
○「来迎寺」(材木座2-9)
五所神社の北に「来迎寺」があります。材木座の来迎寺は、建久5年（1194）、源頼朝が三浦大介義明の菩提を弔うために建立した真言宗の寺（能蔵寺）が始まりです。三浦一族は、治承4年（1180）の頼朝の挙兵の際（石橋山の戦い）に出陣するも間に合わず、その帰路、由比ヶ浜で当時平氏方だった畠山重忠軍と戦い、義明の孫多々良重春が討死しました。その後、衣笠城が攻められ、義明は籠城の末に討死しています（89歳）。頼朝は、義明が17回忌まで生きたものとみなすよう伝えたため、「百六つ義明公」と呼ばれるようになります。本尊阿弥陀三尊は運慶作と伝えられ、義明の守り本尊だったといわれています。鎌倉観音巡礼第14番札所（聖観世音）。
【三浦大介義明の墓】
本堂横には義明の墓(五輪塔)、左隣に多々良三郎重春(義明の孫)の墓(五輪塔)が並んでおり、本堂裏には三浦一族の墓(100基あまりの供養塔)があります。
○「長勝寺」(材木座2-12)
来迎寺の北東に「長勝寺」があります。日蓮に帰依した石井藤五郎長勝という武士が、自邸を寺にしたといわれています。その時の名は本国寺といいました。のちに本国寺は京都の六条河原に移され、その跡地に再興されたのが長勝寺だといいます。帝釈堂前の日蓮の銅像は高村光雲作。日蓮が松葉ヶ谷法難の際に帝釈天の使いである白猿に助けられたことから、帝釈天出現の霊場として知られます。長勝寺・安国論寺・妙法寺の3つの寺は、いずれも日蓮が鎌倉に来て最初に庵を結んだところとされています。
【法華三昧堂】
鎌倉時代特有の五間堂という建築様式（建立は室町時代）。この形式の建築物では関東最古といわれています。
【長勝寺の庚申塔】
長勝寺の北西角、長勝寺裏口あたりに１基の庚申塔があります。
○「日蓮乞水(大田宅前)」(鎌倉市大町5-6)
長勝寺の東、JR横須賀線の手前を線路沿いに進むと「日蓮乞水」の井戸があります。鎌倉五名水の一つ。この井戸は、建長5年（1253）5月に日蓮が鎌倉に来た際、このあたりで喉が渇き、水が飲みたくなり、杖を差すと水が出てきたものと伝えられています。日蓮は千葉から名越を越えて鎌倉の大町に入り、松葉ヶ谷に草庵を開きました。
【名越旧道の庚申塔】
JR横須賀線の北側から名越旧道(名越切通しへの道)に入ると、300ｍほど上った左側に首なし地蔵とともに1基の庚申塔があります。
○「安国論寺」(大町4-4)
安国論寺のある松葉ヶ谷は、建長6年（1254）鎌倉に入った日蓮が初めて庵を結んだ場所です。日蓮は約20年間を松葉ヶ谷で過ごしました。安国論寺には、日蓮が修行したとする「御法窟」（または日蓮岩屋）があって、ここで北条時頼に建白した『立正安国論』が書かれたとされます。
【正岡子規の歌碑】
�牾�倉の松葉が谷の道の辺に 法を説きたる日蓮大菩薩��
境内入ってすぐ、平成23年12月に建てられた正岡子規の歌碑があります。この歌は、子規が鎌倉を訪問したときに詠んだ歌で、子規は安国論寺にも足を運んだといいます。
【富士見台】
熊王尊殿の右脇の階段を上がると富士見台があり、日蓮が富士山に向って毎日法華経を唱えたと伝わります。鎌倉には安国論寺の他に、日蓮の松葉ヶ谷草庵跡といわれる長勝寺と妙法寺がありますが、いずれも富士山が望める寺です。
【北条時政の屋敷跡】
この地には、北条時政の屋敷あったといわれ、比企能員が暗殺された地であるという説があります。能員の末子能本は、四代将軍藤原（九条）頼経に頼んでこの地を譲り受け、一族の墓所としたといいます。
【名越大黒堂】(大町4-4)
安国論寺入口の南に隣接して「名越大黒堂」の小祠があります。お堂には大黒様が祀られており、境内には弘化五5年(1848)銘の庚申塔などが4基あります。
○「妙法寺(こけ寺)」(大町4-7)
安国論寺の北に「妙法寺」があります。寺のある松葉ヶ谷は建長6年（1254）、日蓮が鎌倉に入って草庵を結んだ地です。妙法寺は、「松葉ヶ谷法難」の舞台となったといわれています。中興開山の日叡は、鎌倉で悲運の最期を遂げた護良親王の子で、日蓮の遺跡を守るためと、親王の菩提を弔うためにこの寺を再興したとされます。江戸時代には興隆し、我が国最初となる「川施餓鬼」を隅田川の永代橋付近で行ったといいます。将軍徳川家斉もしばしば訪れたため、総門、仁王門、法華堂を朱塗にしたといわれています。
【那須与一邸跡】
この辺りには、「屋島の戦い」で平家が掲げた扇の的を射落とした那須与一の邸があったと伝えられています。弓の稽古をする「的場」があったので、この辺りは「的場ヶ谷」と呼ばれていましたが、それが訛って「松葉ヶ谷」と呼ばれるようになったとも伝えられています。
【鷲の宮】
由井の長者といわれた染屋時忠の娘が大きな鷲にさらわれ、その後、娘の残骨が各地で発見されました。その一つが妙法寺のある地だといいます。染屋時忠の娘に関する伝説は、来迎寺、魔の淵のお地蔵さま、辻の薬師堂、多聞院、六国見山、塔ノ辻にも残されています。
【護良親王の墓】
こけむした階段を上ると、裏山山頂には「護良親王の墓」が建てられています。妙法寺の中興開山の日叡は、鎌倉で悲運の最期を遂げた大塔宮護良親王の子で、母は親王とともに鎌倉に来た藤原保藤の娘南の方です。親王は、足利尊氏と対立して鎌倉の東光寺（現鎌倉宮）に幽閉され、北条高時の遺児時行の反乱（中先代の乱）が起こったときに、尊氏の弟直義によって殺されました。
○「大宝寺」(大町3-6)
妙法寺から北西に向かうと「大宝寺」があります。応永6年（1399）、佐竹義盛が出家し屋敷のそばに寺を建て多福寺と名付けました。それが大宝寺の始まりです。その後廃寺となりましたが、文安元年（1444）、本覚寺を開いた日出上人が再興し、多福寺の名を山号として残し、寺名を大宝寺に改めました。本堂には、本尊の三宝祖師・日蓮上人坐像・日出上人像・新羅三郎義光像・出世大黒天像・鬼子母神像が祀られています。
【新羅三郎義光の墓】
新羅三郎義光の墓と伝えられている宝篋印塔があります。実際には、後世に建てられた供養塔だと考えられます。新羅三郎義光は、源氏内の勢力争いの中心的人物でしたが、その子孫は源氏復興に功績を立てました。武田氏・佐竹氏・小笠原氏・南部氏なども、新羅三郎義光の子孫にあたります。
【子育鬼子母神祭】
大宝寺では、毎年5月9日に荒行を終えた僧たちによって、子供たちの無事成長を祈願する「子育鬼子母神祭」が行われます。
○「安養院(田代寺)」(大町3-1)
大宝寺から南西に向かうと「安養院」があります。北条政子ゆかりの寺で、政子は源頼朝の菩提を弔うため笹目（鎌倉文学館辺り）に長楽寺を建てましたが、元弘3年（1333）の幕府滅亡とともに焼け落ちたためこの地に移しました。安養院は政子の法名。しかし、再び火災に遭ったことから、頼朝に仕えていた田代信綱が建立した田代寺の観音堂を移してきました。これが別名「田代寺」といわれる所以です。田代寺は比企ヶ谷にありました。5月の連休頃にはツツジが満開になります。
【北条政子の墓】
安養院の観音堂背後には、北条政子の墓と伝わる宝篋印塔（供養塔）が建てられています。政子は、晩年を勝長寿院奥に屋敷を建てて過ごし、嘉禄元年（1225）7月11日に亡くなりました。『吾妻鏡』によれば、勝長寿院で荼毘に付されたといいます。
【良弁尊観の宝篋印塔】
政子の宝篋印塔の横には、良弁尊観の大きな宝篋印塔があります。名越流北条氏の祖朝時の子といわれ、安養院が建てられる前に、この地にあった善導寺の開山良弁尊観の塔と伝えられています。鎌倉最古の石塔といわれ、徳治3年（1308）の銘があります。ただ尊観は、正和5年（1316）没と伝えられていることから、生前に建てられたものということになります。また、銘に刻まれている「尊」の字がはっきりとせず、石工・沙弥心阿の名も刻まれていることから、極楽寺開山の良観忍性の宝篋印塔とも考えられるといいます。
【安養院の庚申塔】
本堂の裏手、宝篋印塔やその他多数の石仏とともに、杉木の前に元禄7年（1694）銘の庚申塔があります。
○「別願寺」(大町1-11)
安養院の西隣に「別願寺」があります。鎌倉公方代々の菩提寺であり、鎌倉での時宗の中心として栄えました。もとは真言宗の寺で能成寺といいましたが、弘安5年（1282）住職だった公忍が一遍に帰依し、寺の名を別願寺としました。
【足利持氏の供養塔】
境内には、室町幕府に対して「永享の乱」を起こした足利持氏（四代鎌倉公方）のものとされる供養塔（宝塔）があります。この供養塔には、持氏の怒りを鎮めるため、四方に鳥居の浮彫りが施されています。
○「上行寺」(大町2-8)
安養院の南、道路反対側に「上行寺」があります。正和2年（1313）に日範上人によって開創。瘡守稲荷と身代わり鬼子母神をまつります。皮膚病や癌封じに利益あります。山門の裏側には、名工左甚五郎作といわれる龍の彫刻があります。
○「本興寺」(大町2-5)
上行寺の南に「本興寺」があります。「辻の本興寺」とも呼ばれ、門前には日蓮の「辻説法の碑」が建てられています。第二十七世の日徑は、「不受布施法門主張」が徳川家康の怒りに触れ、京都六条河原で耳・鼻削ぎの刑に処せられました。この影響で一時廃寺となりましたが再興されています。
【本興寺のサルスベリ】
本堂前のサルスベリは見事です。
○「教恩寺」(大町1-4)
八雲神社の西に「教恩寺」があります。一ノ谷の合戦で敗れ捕らえられた平清盛の子で重衡に縁のある寺で、重衡は南都焼討ちによって奈良の東大寺や興福寺を焼いた武将で、一ノ谷の合戦で捕らえられて鎌倉に来た際に、源頼朝より一族の冥福を祈るように阿弥陀像を与えられたといいます。その像が教恩寺の本尊で、運慶作と伝えられています。もともとこの地には、光明寺末の善昌寺があったが廃寺となったため、延宝7年（1678）、貴誉上人によって光明寺境内にあった北条氏康建立と伝わる教恩寺が、移築されたといわれています。かつては、教恩寺の寺宝の中には、重衡と千手前（源頼朝の侍女）が酒を酌み交わしたという杯があったといわれています。黒の漆塗りで、梅の蒔絵が施してあった杯だったと伝えられています。
【山門の十六羅漢彫刻】
山門の表梁に立派な彫刻、十六羅漢があります。
○「延命寺」(材木座1-1)
JR横須賀線の西側に「延命寺」があります。五代執権北条時頼夫人が建てたといわれる寺で、運慶作と伝えられる木造地蔵菩薩立像は、夫人の身代わりとなったことで夫人の守護仏とされ、裸形彫刻で普段は袈裟を纏っています。本尊の阿弥陀如来像は、圓應寺の閻魔大王を彫ったあまりの木で作られたことから「木あまりの像」、また予定より早く完成したことから「日あまりの像」と呼ばれています。
【古狸塚】
江戸時代の終わり頃、延命寺には人に慣れた狸が住みつき、酒好きの和尚のために買い物に出掛けたりして可愛がられていたといいます。狸が死ぬと里人たちは碑を建てて供養しました。それが延命寺墓地にある「古狸塚」です。石碑は嘉永2年（1849）に建てられたもの。
【赤穂浪士の遺児】
延命寺には、赤穂浪士岡嶋八十右衛門常樹の遺児が住持したことがあると伝えられます。
ログインしてコメントを確認・投稿する