(9月28日、サントリーホール)
ハイティンクとペライア。音楽的にも性格的にも二人は共通する点が多い。
誠実で謙虚に作曲家に向かい合う。滋味あふれる演奏は、誇張やハッタリとは無縁。音楽の細やかなニュアンスを大切にしながら、最も美しく響く音を探って行く。
モーツァルトのピアノ協奏曲第24番ハ短調のロンドン交響楽団(LSO)の弦の響きは淡い上品な絹糸で織られていくような味わいがあり、そこに柔らかく美しいが土台のしっかりとしたペライアのピアノが絡んでいく。白眉は第2楽章ラルゲット後半の天に上がっていくようなピアノの響き。物足りない点をひとつだけ挙げれば第3楽章で明るい旋律のあとハ短調で主題が戻る5番目の変奏部分。ピアノにもう少し悲愴味が出てもよかった。第3楽章の自由に羽ばたくようなカデンツァは素晴らしかった。ペライアの自作だろうか。
ハイティンクの穏やかな指揮はマーラーの交響曲第4番に向いている。特に第3楽章に心を奪われた。LSOの弦はヴァイオリンに加えて、ヴィオラとチェロそしてコントラバスの中低音にコクがあって響きが豊か。第1主題のチェロにヴァイオリンがからむ部分を始め、後半の壮大なクライマックスのあとの低音の弦とハープが醸し出す天国的な響きはこの夜最も感動した。
終楽章でのソプラノのアンナ・ルチア・リヒターの歌唱は透明な声だがしっかりとした骨組みができておりホールによく響いた。彼女が終演後何度目かの拍手に応えているとき、天を指さす仕草をしたのが印象的だった。ハイティンクとLSOとの共演で成し遂げた天国のような演奏を神に感謝したかったのかもしれない。
最後にLSOの金管、特にホルン首席、そしてトランペットが素晴らしかった。こうした優れた金管がいればこそ、ハイティンクも穏やかさから嵐の破局へ劇的に変化するマーラーを十全に表現できるというわけだ。木管ではフルートとクラリネット、そしてイングリシュホルンも良かった。
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