橋下徹市長の新党構想で「政界引退を明言したのに?」というモヤモヤ
水島宏明 | 法政大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター
2015年8月30日 8時48分
【略】
この時の橋下氏の「潔い引退表明」については、日頃、橋下氏が敵対視することが多かった朝日新聞を含め、多くのメディアが「ひとつの時代が終わった」と感慨と共感を込めた報道をしていた。
私自身、橋下氏の主張には必ずしも賛同できない点も多かったが、いろいろな問題を「自分の言葉」ではっきりと伝え、その言葉通りに実現していこうとする政治スタイルにはある種の「爽やかさ」を感じ、旧来型の政治を変えつつある可能性も感じていた。
だからこそ、引退表明を明言した自分の言葉をまるで忘れたかのような「新党」の報道に驚かされた。
12月18日までの大阪市長の任期満了もまだ来ていない。
政治を完全に引退する、と言っていた言葉は何だったのだろう。
橋下徹という人間にとって、「言葉」はそんなに軽いものだったのだろうか。
5月の記者会見の時とは、状況が変わった、今は国政の危機だ、とでも言うのだろうか。
国の安全保障をめぐっても、本来は憲法の条文の「言葉」を変えるかどうか議論すべきところを 「状況が変わった」などと「解釈」を変更するという安直で乱暴な手段を政権が選ぶなど、どうにもこうにも「言葉」が大事にされないこの国の政治状況で、「有言実行」の数少ない政治家の一人が橋下氏だと思っていたのだが・・・。
彼が明言していた「引退」が撤回されようとしていることに対して、新聞やテレビ各社の反応は鈍い、彼がはっきりと引退を表明していたことを問題視するわけでもない。
たとえば、NHKニュースはそのことに触れなかった。
橋下氏 新党の結成を目指す考え表明(NHK 8月29日 )
地域政党「大阪維新の会」の代表を務める大阪市の橋下市長は、大阪・枚方市で街頭演説を行い、「『大阪維新の会』という国政政党をつくる道筋をつけたい」と述べ、新党の結成を目指す考えを明らかにしました。
出典:NHK WEB NEWS
どうか徹底的に追及してほしい。橋下徹という政治家にとって「言葉」はそんなに軽いのか。新党結成で彼が国政に出る時に、いったい、どんな言い訳をするのだろうか。「状況が変わった」だろうか?
小さなことだと思う人がいるかもしれない。
だが、ことは橋下氏一人の問題ではなく、政治家と「言葉の重み」をめぐる問題だ。
簡単にそんな前言撤回を許してしまう報道機関ばかりだから、政治家たちはメディアを思い通りにコントロールしてしまう。
水島宏明
法政大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター
1957年生まれ。東大卒。札幌テレビで生活保護の矛盾を突くドキュメンタリー 『母さんが死んだ』や准看護婦制度の問題点を問う『天使の矛盾』を制作。ロン ドン、ベルリン特派員を歴任。日本テレビで「NNNドキュメント」ディレク ターと「ズームイン!」解説キャスターを兼務。『ネットカフェ難民』の名づけ 親として貧困問題や環境・原子力のドキュメンタリーを制作。芸術選奨・文部科 学大臣賞受賞。2012年から法政大学社会学部教授。近著に「内側から見たテレビーやらせ・捏造・情報操作の構造ー」(朝日新書)
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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーー
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