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2015年08月22日22:52

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レトロプロブレムの世界(12-2)

4、キャスリング

 この特殊な手順は、解析を必要としない。キャスリングは、手を稼ぐトリックである。未発表作(9),(10)は実際のところ、“Diagramme”における私の記事に反応して、1979年から80年にかけて創作されたものである。これらは続編に採用される筈だったが、その原稿がなかなか載らないうちに、他の作者によって彼らのアイデアは発表されてしまったのだ。もしかしてJ.DupinとC.Wiedenhoffの慰めになるかもしれない、彼らのような不運の先行事例を挙げておこう。 H.A.Adamsonは所謂mutually exclusive castlingsを取り入れた一号局を作ったのだが、T.R.Dawsonはそれを投稿作を入れる箱に25年間も放置しておいたのだ!(私はもう少し早かったのだが…)結果、最初に発表されたのは、Havelの作品(1922)となったのであった。

(9) J.Dupin (Original)
フォト
SHC#7 (2+5)
b)Pa2→b2

(10) C.Wiedenhoff (Original)
フォト
SHC#8 (5+3)

(9):a)1.Be5 2.a1=R 3.Ra8 4.0-0-0! 5.Bb8 6.Rc7 7.Bd7 Sd6#
b)1.b1=R 2.Rh1 3.Rh8 4.0-0 5.Bh8 6.Rg7 7.Bf7 Sf6#
ミニチュアで表現された、2つのキャスリングによるエコーメイト。

(10) : 1.Kf8 2.Ke8 3.0-0! 4.Rxa8 5.Rf8 6.Re8 7.0-0-0! 8.Rd7 Ra8#
単解の中で、2度黒のキャスリングが実現している。

(11) J.Dupin (Rex Multiplex 1983)
フォト
SHC#6* (4+6)

 しかし(11)を見ると、キャスリングの不可能性を回避するという構想の端緒を解析によって見ることができる。この局面において1...0-0#とするのは全く問題ない。何故なら、黒が最終手で駒取りを戻すことができるし、或いはb5-b4と戻せば白Bを解放することができるからだ。しかし本手順は、より精妙な分析を必要とする。1.Kb1 2.Ka1? 0-0 ??はもはや成立しない。何故なら、白の最終手はK又はRを動かした手ということになるからだ。(訳者注 1.Kb1と指した局面をH#1としてみた場合、直前の白の手は必ずKかRを動かしているので、キャスリングは不可能という意味)従って、我々は黒が最終手を指す前の白の手を作り出さなければならない。作意はこうだ:2.a1=R 3.Rs2 4.Rxb2 5.Ra2!(これにより、白の最終手としてBによる着手が生じている)6.Ka1 0-0#。黒の2〜5手目が事前工作となっている。読者は、同様の例をR41で見ることになるだろう。

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