(6月20日、サントリーホール)
ミロ・クァルテットによるサイクル最終日。弦楽四重奏曲の頂点と言われる第14番作品131と、最終楽章に“Muss es sein?”(これでいいのか?)と書かれた第16番作品135、そして「大フーガ」の代わりに生涯最後の作品として書いた第13番作品130の第6楽章「アレグロ」の3曲が演奏された。
一昨日の第15番と第13番「大フーガ付」で受けたほどの感銘はなかった。
ミロ・クァルテットのポジティブで明るくストレートな演奏は、我々がベートーヴェンに対して持つイメージ「厳格さ」「深刻さ」という暗く重い側面には、いかにも楽天的で情緒不足に感じられる。
技術的には言う事はない。アンサンブルも温かみがあり親しみやすく完璧。4人の人間関係の良さが演奏にあふれている。
今回「ラズモフスキー全曲」の日以外4日間聴いたミロ・クァルテットの良さは充分にわかった。崇め奉られるベートーヴェンではない等身大の一人の人間としてのベートーヴェンがそこにいた。
サイン会で、リーダーのダニエル・チンにそのことを伝えると「とてもいい賛辞だ」と喜んでくれた。彼らの行き方はこれからも変わらないだろう。ストレートでポジティブ、オープンなのが彼らの個性である限り。
ただ本当に「これでいいのか?」と聞きたい気持ちは今もある。
蛇足だが、チェロのジョシュア・ジンデルにもう一度使っている楽器について確認してみた。ゴフリラー(カザルスのチェロ)のコピーで、コネティカットで作っていると話してくれた。
ログインしてコメントを確認・投稿する