1998年、ポルシェAGはGTPマシン『911GT1’98』で久々にルマンを制覇しましたが、実はこの話には続きがあったのです。
この年ポルシェAGは911GT1と共に2台のLMP−98(WSC95)を参戦させていました。
ポルシェとしては必勝態勢で臨むという意味合いが強かったのでしょうが、心のどこかではやはり『プロトタイプでの優勝』というのを思い描いていたのではないでしょうか?
その証拠に、99年、日の目を見なかった幻のLMP1マシンが存在します。
それがこのポルシェ9R3です。
98年には設計が完了している状況だったものの、旧来のフラット6ターボエンジンに限界を感じていたのも事実だったようです。
当時のフラット6ツインターボエンジンは、インタークーラまで含めた重量が実に230kgと、レーシングエンジンとしてはかなり重いものになっていました。
加えてフラット6故にボディ/シャシーには空力デザインの上で大きな制限がありました。
これはグループCカーの956/962Cから続いている問題であり、ボディ側ではフラット6ターボの弱点でもある熱の問題を解消するために、エンジンを冷却するためのエアダクトを効率的に配置する必要があり、シャシーでは特にリヤディフューザーのデザインが制限されていました。
ここで持ち出されたのが、これもまた幻のV型10気筒エンジンでした。
時を遡って1992年、ポルシェはフットワークF1のためにセンターアウトプット方式の3.5リッターV型12気筒エンジンを開発していました。
このエンジンは信頼性にも問題がありましたが、当時のV12エンジンの中でもかなり重く、その重量もネックとなっていました。
実は当時、ポルシェは3.5リッターV型10気筒のF1エンジンを別に開発していたそうで、数年の時を経て、その基本設計を踏襲した5〜5.5リッターの排気量を許容するLMP1用のV型10気筒エンジンを開発し、この9R3へ搭載することとなりました。
しかし、このマシンが完成する前にLMP1のプロジェクトは中止となってしまいます。
ポルシェ初のSUVである初代カイエンの開発プロジェクトの始動により、人材をそちらへ集中するためでした。
完成した9R3 LMP1はバイザッハで2日間だけテスト走行が行われました。
テストではボブ・ウォレクとアラン・マクニッシュのふたりがドライブしたようです。
参考→【
http://www.mulsannescorner.com/porschelmp1.html】
ここで使用されたV10エンジンは、のちにポルシェ・カレラGT搭載されることになります。
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