mixiユーザー(id:411965)

2014年12月23日23:12

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「凍りついた空」本

『凍りついた空―エウロパ2113』
<ストーリー>
 22世紀初頭に木星の衛星エウロパで小さな生物の死骸が発見された。エウロパの分厚い氷殻の下にある海に独自の発達を遂げた生物がいるのだ。探検に向かった女性科学者ボニーの一行は謎の生物の襲撃を受ける・・・
<コメント>
 ある星に降り立った探検隊が未知の生物の攻撃を受ける。生き残った隊員は必死で彼らから逃走し、対抗する手段を講じようとする。しかし、同時にその生物の意外な一面を知ることになる・・・と言ったらもう前世紀から宇宙SFの鉄板ストーリーであって、特に新味はないはずである。ところが、この作品のように舞台が木星の衛星エウロパで最新の観測で“木星の潮汐力によって氷の殻の下に海を持っていて、そこに生物が存在する可能性が高い”とされる惑星であればこれはまた話が別だ。決してワープ航法を必要としない火星の向こうの惑星なのだから。
 しかも、一昔前のSFだったら探検隊の意志や目的は地球人類のそれであり、探検の成果はひとえに人類のためのものだったはずだが、現代の世相のちょっと先の未来を舞台にしているだけあって、木星探検に関してもヨーロッパとアメリカと中国とブラジルが覇権を巡って争っていて、さらに探検隊の内部でもその発見による利権を巡っての争いが根底に流れているのだ。
 つまり宇宙探検ものでありながら舞台といい世情といいものすごく生々しいのだ。まるで『LAW&ORDER』の冒頭で流れる「この物語は実際の事件をモデルにしていますが、物語はフィクションです」というテロップと同じほど世相を反映しているのがうかがわれるのだ。
 前半はエウロパ原住種族である謎の生物サンフィッシュに襲われた主人公のサバイバルアクションでこれはこれでハラハラするのだが、後半はむしろこの生物を地球の利権から守ろうとする立場に立たされた主人公の知的な活躍が中心となり、これがまた面白い。
 後半からクライマックスにかけては意外な展開となって驚かされるがそこでサクっと終わってしまうのにさらに驚いた。「え?これで終わり」と。しかし、どうやら続編も執筆されているようなのでこれはこれで楽しみである。
凍りついた空 エウロパ2113 (創元SF文庫)
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