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2013年01月23日11:15

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「東京家族」〜小津の魔法を使った王道作品

何も起きないことはないけど、刃傷沙汰も盗みも浮気もない。登場人物それぞれ、たまには感情を乱すものの、基本的にはつつましく抑制のきいた人間ばかり。そう、本来ほとんどの日本人にとっての喜怒哀楽というのはこの程度の節度を保ったものではないかと思った次第。小津安二郎監督の名作「東京物語」をモチーフにし、設定を21世紀の東京に移した山田洋次監督作品「東京家族」。これぞ日本映画の王道であります。

ツッコミどころを探そうにも美しく調和がとれたその小津調のアングルやカットに魅入られ、こちらはただ淡々としたストーリーを追うだけ。それでも最後には優しく温かな気持ちになる、そんな作品です。両親役に橋爪功と吉行和子、ふだんは脇役の多いふたりだけにさりげない感じがとてもよくて。妻夫木君も蒼井優ちゃんもしっかりと見せ場が用意されております。メインキャストのほとんどが実年齢より年上の役柄を演じているように思いましたがたまたまでしょうか。

この繊細で微妙な味わい、日本人にしかわからないだろうと思いつつも、外国の人にもぜひ観てもらいたいと願ったりします。でもそこには上質な刺身盛り合わせを外国人に提供して、さああんたらこの微妙な味の違いがわかるかと、やや優越感を抱くときの気持ちに似てなくもない。でも実際のところ本家小津作品を高く評価してるのは海外の映画愛好家たちなのですが。どちらにしても“美しい日本の文化”にふれたときのような清々しい気持ちになることは間違いなし。


8 10

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