図書館本「外交(上下)」キッシンジャー著、岡崎久彦監訳、を読了。ニクソン大統領時代の名・米国務長官として名をはせ、ベトナム撤退やデタントを主導した著者による、有名な外交の参考書。訳の岡崎も有名な元・外交官。
あまりに有名なので読んでみたけど。メチャクチャ大部だし、膨大な背景知識が必要なので、監訳者の岡崎が各章の頭に付けている要約にかなり頼った。外交の参考書と言うより、米国外交を振り返った本。
バランス・オブ・パワー外交と、パワー・ポリティクス外交が欧州で支配的だった19世紀。アメリカは最初孤立主義、次にウィルソン主義(倫理主義、世界の警察官)と言う外交的立場を採る。
この2本柱(孤立主義とウィルソン主義)の間で揺れ動くアメリカ外交。イギリスの誤った宥和政策がナチスドイツの台頭、引いては第二次世界大戦を招き。戦後すぐはアメリカのソ連に対する好意と宥和政策が東欧のソ連衛星国化を招いてしまった。そこで反省したアメリカは、ケナン提案の封じ込め政策(ケナン自身は倫理的に米国が優れたところを見せ封じ込める、というつもりだったけど、実際には軍事的にだけ封じ込めてしまったが)を採用。その成果でソ連は倒れた。
途中、ベトナム戦争と言う大失敗をするが。これは、欧州の経験が政治も社会も経済も条件が異なるベトナムに通用すると誤解したこと。戦争の目的が不明確だったこと。軍事戦略も無かったこと。国内での戦略説明も不十分だったこと、などが原因。
今後のアメリカ外交は。やはり2本柱の間でバランスを取るべき。具体的には、ビスマルク型バランス・オブ・パワー外交(問題が起きる前に多数の関係国にコミットし、それを調整する)こそアメリカにふさわしい、とする。
息子ブッシュや鳩馬鹿に読ませてあげたかった本。日本を警戒対象にしている点、ロシアに好意的な点、キッシンジャー自身の外交には甘い点、がややキズかしら。
ログインしてコメントを確認・投稿する