mixiユーザー(id:2230131)

2011年09月26日21:01

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Bridge Over Troubled Water/Simon & Garfunkel

 もはや修復できないほど険悪な仲になってしまった二人が、「とりあえずヒットするアルバムを作ろう」という共通の目的に集約される形で、皮肉にも一致団結できているという印象がある。
 サイモン&ガーファンクルのラスト・アルバム『明日に架ける橋』を聴いていると、美しいハーモニーの裏側に、そのようなどこか大人びたビターな諦念を感じさせる一面がある。二度と分かりあえないと悟り、それでも最後の命を燃やそうと力を振り絞って結託する様は、皮肉にも美しい。そして僕たちは否応なく、この前年に発表されたビートルズの『アビー・ロード』を思い出してしまうこととなる。

 彼らがビートルズになりたかったかどうかはさておき、本作に含まれている音楽の数々は、まるで後期ビートルズのように幅広く、と同時に彼らの作品中もっとも焦点の定まった力作に仕上がっている。アンデス民謡の英語詞カバー“コンドルは飛んでいく”はお得意のトラッド趣味なのでいいとしても、まるでブロードウェイのようなゴージャスなホーンをあしらった“キープ・ザ・カスタマー・サティスファイド”、ポールのソロ転向後の仕事を予感させるエスニックなリズム・アンサンブル“いとしのセシリア”など多岐に及ぶ。

 なかでも、ゴスペルに接近したタイトル・トラック“明日に架ける橋”のスタンダードなアンセムっぷりはどうだろう。曲が生まれた瞬間からすでに長年歌い継がれることが手に取るように分かる、まさしく王道中の王道。おそらくこの曲によって、アーティのボーカリストとしてのエゴは十分に満たされたはずだった。

 このように多彩な音楽性を含みながら、(繰り返しになってしまうが)「ヒットできるアルバムを作ろう」という大衆化への良い意味での開き直りが、結果的に作品の統一性を高め、ひいては個々の楽曲に深みを与えることにも繋がっている気がする。「繊細なフォーク・ロック」という彼らのパブリック・イメージとは微妙にズレているし、それゆえ大衆が当初求めていた音楽性ともズレていた気がするけれど、僕は(偉そうに)一皮剥けたな、という印象を持った。今回ばかりは力作だと思う。

 というのも、サイモン&ガーファンクルのオリジナル・アルバムを最後まで聴き進めてしまった僕的には、どの作品も素晴らしいんだけど突っ込みたいところが必ずひとつはあって、実は完璧な作品ってひとつもないんじゃないかと思う節があった(その不完全さが、逆に彼らの「危うさ」という魅力をリプリゼントしていたが)。その点、本作は限りなく完璧に近い作品と言ってしまっていいと思う。
 まさしく「有終の美」…。なにも勝ち逃げしたのはビートルズだけじゃないのだ。
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