mixiユーザー(id:2230131)

2006年07月13日03:30

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The Wall/Pink Floyd

フロイドの二枚組の大作です。

なんでもこれは世界で最も売れた二枚組アルバムだそうです。(それまではビートルズの『ホワイトアルバム』)
こんな奇妙なレコードがバカ売れするって、一体どういう時代なんでしょう?ポップな曲に慣れた現代人には理解できません…。

さて、このアルバム。
二枚組と言ってもお得意の長〜い曲があるわけではありません。(3パートに分かれている曲はある)
ほとんどが4分程度に収まっていて、様々なタイプの曲が並んでいます。この辺が受け入れられた要因でしょうか。

フロイドの凄さとは、音ではなく演奏そのもので世界観を構築してしまうところだと思っています。
彼等自身はなにかと複雑なイメージを持たれがちですが、意外に奇をてらった演奏はしていません。今の感覚で聴くとそれほど奇抜な音も使われていません。日常にある雑音や奇妙に歪んだシンセの音が挿入されていますが、曲を引っ張っていくわけではない。
奇妙な音を聴けば奇妙な気分になるのは当たり前。
彼等は奇妙な音をここぞという時にだけ効果的に、あくまで自身の内面や哲学を表現する為の文学的ツールとして機能させている気がします。ミュジーク・コンクレート的な方法論と言えるかもしれません。
シンプルで隙間の多い演奏は、想像力の入り込む余地が大きく、空間的な映像を呼び起こす力があります。
行間で読ませる文章のように、彼等は「間」で聴かせてしまう。
視覚的に「ある情景」を喚起させてくれる演奏。緩やかなトリップ感を引き起こす音楽体験、とでもいいましょうか。ありそうでない音で、彼等が技術力勝負の数多のプログレ勢から頭一つ抜けているのはその点が大きいのではないでしょうか?
ただし、ボーっとしてればそのまま流れていってしまうので、想像力の乏しい人間はフロイドを聴いても退屈と感じるかもしれません。(少し生意気なこと言ってみた)

しかし、今までのフロイドのコンテキストに沿ってみると、今回の作品は残念ながら従来ほど刺激的な体験ではなかったかもしれない。
流動的で、頭の中にしっかりとしたイメージが浮かんでこないのです。
原因は、最初に記述した曲の「短さ」や、それに伴って楽曲がポピュラー寄りに変化したことが大きいと思います。
しっかり想像力を掻き立てる演奏ですが、映像が浮かんできた矢先にすぐ次の場面に移ってしまうので、なんとも言えないもどかしさを感じます。フロイドの持ち味は幾分か薄められてしまった感じです。
フロイドを聴くのは僕にとって、美術館で巨大なオブジェを色んな角度から眺めて時間をかけて楽しむ、という行為に等しい。
このアルバムは、数百点の絵画が所狭しに展示された美術館です。しかも人がいっぱいなので、じっくり鑑賞する間もなく強制的に進路を歩かされちゃう、みたいな。

フロイドはやっぱり長くて眠くなってしまうような曲が好きです(笑)
それでも曲単位では勿論素晴らしいものはあり、中でも"Comfortably Numb"や"Hey You"はベストにも収録されていますが、フロイドの持ち味が存分に出ている名曲だと思いました。
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