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2010年12月10日04:05

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Parade/Prince & The Revolution

 プリンスが86年に監督した映画『アンダー・ザ・チェリー・ムーン』。
 僕はこれ全然知らなかったんですけど、大失敗作だったそうですね。興行的に振るわなかったのはもちろんのこと、評価の面でも最低作品賞、最低監督賞、最低主演男優賞、最低助演男優賞、最低主題歌賞を受賞するなど、酷評の嵐だったという。

 本人もまさかの大コケに堪えたようで、映画のサントラとして制作された本作『パレード』も、「“KISS”以外は失敗作だった」という非常に低い自己評価を下している。それでもCD自体は大ヒットしてしまうという不思議な現象が起きている。「天はニ物を与えず」とはよく言ったものですね。

 本作は、矢継ぎ早に繰り出される楽曲がシームレスに流れていくという、まさしくタイトル通り「パレード」を意識したコンセプト・アルバムになっている。プリンスの言う通り、収録曲では“KISS”が群を抜いて素晴らしいが、他にも特筆すべき楽曲が揃っているように思う。というかむしろ、特筆すべき楽曲しかない。

 まず、太鼓の音がどれも異常である。ひしゃげた音のドラムスから幕を開ける“クリストファー・トレイシーのパレード”から急速にプリンス的異世界へいざなわれる。除々に入っていくならまだしも、いきなりトップギアだ。
 その後も、“KISS”にも通じる音数を絞ったファンク“ニュー・ポジション”、フランスの童謡っぽいジャジーなバラッド“ドゥ・ユー・ライ?”など、またしても彼が新しい領域に踏み込んでいるのがわかる。
 カウベルやら東洋的な笛やらが鳴りまくっているジャンル不明な“ライフ・キャン・ビー・ソー・ナイス”なんて、プリンスの奇天烈さの極みとでも言うべし。その反面、美しいインスト“ヴィーナス・ドゥ・ミロ”では、深夜の天気予報で流れていてもおかしくないくらい(笑)イージー・リスニングに徹している。

 全体的にホーンなどオーケストラを多用しているのが特徴で、一見してかなりゴージャスな音に聴こえる。ただし、「引きの美学」を知り尽くしたプリンスのこと、ゴージャスでこそあるが決して重たかったり暑苦しかったりはしていない。むしろ全編に漂っているのは、どこかカラッとした渇いた質感である。前述したパーカッションへのこだわりもそう感じさせる一因になっているのかもしれない。

 この振り幅。この密度。どれをとっても失敗作と呼ぶにはあまりに惜しい。
 プリンスがなにをもって件の発言をしたのかはわからないが、ひょっとして映画の失敗のせいで音楽にもあまり良い記憶を持てずにいるのかもしれない。
 これだけ凄いんだから、映画なんて手を出さずに音楽に専念してればいいのに…。

 と、どっちの才能もない自分が語っています(笑)。
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