カリカリ…
ポリ…
真っ暗な小屋の中に彼はいる。
外は快晴。
しかし。
あたたかい太陽の光は
小屋に差し込まない。
そういうつくり。
暗闇の中にいるのは
一匹の豚。
『イベリコ豚』
彼はそう呼ばれている。
だが、それは総称。
彼に名前などない。
カリ…カリ…
漆黒の世界。
彼はひたすら食べ続ける。孤独と戦いながら。
彼が食べているのは
彼が唯一食べることを許されたもの。
『どんぐり』
もう一度言う。
『どんぐり』
彼がこの世に生を受けてから
口にするのは不味いどんぐりただ一つ。
彼は不味いどんぐり以外のものを
食べたことがない
食べてみたい
食べさしてもらえない。
しかし彼は生きる。
たくましく。
たとえ近い将来
美味しい生ハムになるとしても。
彼は生きる為
不味いどんぐりを食べ続ける。
どんぐり。
なみだ味。
困ったときには