クロノスとレアーの娘で、ゼウスの姉にあたる[3]。ゼウスとの間に娘コレー(後の冥府の王妃ペルセポネー)をもうけたものの[4]、その経緯はゼウスがデーメーテールに無理やり迫った挙句、無理やり子供を作らされたため、ゼウスにあまり良い印象を持っていなかった(ただし子供であるペルセポネーには愛情を注いでいた)。さらに弟の海神ポセイドーンからも無理強いされ、秘儀の女神デスポイナと1頭の名馬アレイオーン(アリーオーン)を生んだ[5]。最も有名な恋人のイーアシオーンは愛する者をとられたゼウスの嫉妬によって稲妻に撃たれた。イーアシオーンとの間にプルートスと[6][7][8][9][10]ピロメーロスを生んだ[10][11]。
普段は温厚だが怒ると飢餓をもたらすため、ゼウスも一目置いている。テッサリアー地方の王エリュシクトーンがデーメーテールの聖地である森の木を根こそぎ伐採したときは、彼の下へ「飢餓」を遣わして、エリュシクトーンをいくら食べても満たされない激しい飢えで苦しめ、最終的にはエリュシクトーンが自身の体を貪り食う形で死に追いやった[12]。この火が燃えるような飢えの苦しみのため、彼はアイトーン(燃え盛るの意)と呼ばれるほどであった[13][14][15]。
デーメーテール信仰の歴史は非常に古く、紀元前10世紀(紀元前17〜15世紀頃からデーメーテールの祭儀であるエレウシースの秘儀が始まっていることからさらに古い可能性もある)にも遡ると考えられる。デーメーテールの名前も後半「メーテール」は古代ギリシャ語の母を意味する言葉である。前半の「デー」ははっきりとはしないが、大地を意味する「ゲー」(ガイア)が変形したものであるとの説が有力である。この名前が示す通り、彼女は本来、ギリシャの土着の農耕民族に崇拝された大地の女神、豊穣の女神と考えられている。