ある男
尾崎淑久
見てみろよ
この三河の片田舎に住む男を。
三十路に手が届きかけた歳をして
ピンクの花柄シャツを着て街へくりだすんだ
「生きてるんなら目立たなきゃつまんないだろ」
そう、生意気に口笛を吹くんだ。
なんて奴だ!
(そんなことを言いつつも目立っていいものか葛藤しているに
違いない)
仕事帰りに
友人宅に押しかけ
「大人になんかいつでもなれるさ。大切なのはガキのまんまの
感受性を持ち続けることだ」
などと、缶ビール片手に
つばをとばすんだ。
なんて奴だ!
(本当は大人になりたくてもがいているに違いない)
思いついたことは
すぐに実行
「ためらい・はじらい・とまどい、を捨てなきゃ自身の成長は
ありえない」
ケータイにパソコン、手紙を抱えて
車で走り出すんだ。
なんて奴だ!
(考え、悩み、恐れているに違いない)
なんて奴だ!
そんな無頼を気取りながらも
睡眠時間を削って削って
詩を
書き留めているんだ
少しでも
前に進むために。
こんな男が
三河の片田舎に住んでいるんだ
希望を抱いて
今日も
歯を食いしばっているんだ
とぼけた顔をして。
三河を訪れる機会があるのなら
この男を訪ねてほしい
(その瞬間、三河の片田舎が世界の中心へと変貌を遂げるに
違いない)
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こんな男が、リクエストに応えて詩を紹介したり、詩に関する質問に答えたりします。
なんでも答えます、応えます、きっと。