James Hadley Chase ハドリーチェイス
スリラーの王様と呼ばれるジェームズ・ハドリー・チェイスは1938年に処女作「ミス・ブランディッシの蘭」を発表してはなばなしく登場したイギリスを代表するハードボイルド作家である。
十八歳のときから出版関係の販売員として勤めてきたチェイスは、アメリカのハードボイルド小説の需要が多いことを身をもって知り、ついに自分で作品を書きあげたのである。完全なアメリカン・スラングと暗黒街の知識に彩られた処女作は、たちまち大ロング・セラーとなり、チェイスのトレード・マークになっている。
第二次大戦中は英国空軍に入り、軍務のかたわらにもつぎつぎと小説を執筆し長編の作品数は約五十冊。作品の内容は大別してギャングものと悪女ものに分けることができ、前者の代表作が「ミス・ブランディッシ」、後者の代表作が45年の「悪女イブ」で、いずれも強烈なスリルと刺激的なサジズムが基調となって、開巻第一頁から否応なしに読者を引きずりこむストーリー・テラーとしてのうまさは定評がある。
チェイスは世界的な流行作家としてハードボイルドの本場アメリカにも逆輸入され、またフランスでは特に愛好されて全作品が翻訳されるかたわら多くの作品が映画化されている。
(創元推理文庫巻末の「作者紹介」より)