静岡県静岡市にある鉄舟寺。
この寺には日本が誇る名笛が存在します。その名を「薄墨の笛」といいます。
いわゆる源九郎義経愛用の龍笛がこれにあたる可能性があります。
時は平安時代。鳥羽上皇が唐土の国王より、御堂造営のために献上した砂金や檜材のお礼品として贈られた品の中に“生きたる蝉の如くに節のつきたる漢竹”の笛材があり、これを笛に仕立てたとの記述が源平盛衰記にあります。
この笛、貴族である高松中納言実平が命ぜられて吹いていたときに誤って床に落とし、蝉の部分が取れてしまい、以降これも風流と「蝉折」の名で使用されたそうです。
この特徴的な蝉折れを持つ笛の記載としては義経と浄瑠璃姫の恋物語である『浄瑠璃物語』(蝉折)や、謡曲『橋弁慶』(虫喰)以外には見られず、また、薄墨の笛の蝉折部分がこの記述等と合致するため、蝉折は薄墨の笛だと推測され、保元の乱で勝利し、後白河法皇から蝉折を賜った義経の父義朝→常盤御前→牛若丸を伝えられたのだと思われます。あくまでも推測の域を出ませんが。
鉄舟寺の前身は、飛鳥時代に開基した名刹「久能寺」です。
久能寺の由来を纏められた南北朝時代の『久能寺縁起』には「頼朝将軍者 伊豆国之中寄進二百町之所領 此坊数三百六十坊衆徒一千五百人 仕奥座衆五百餘人也 源九郎判官義経為 末代重寶 薄墨云 笛有 御寄進」云々との記述があります。昭和三十九年(1964)に香村俊明現住職が寺の所蔵物の整理をしているとき薄墨の笛は添状とともに偶然発見され、現在に至ります。
発見後、笛に息が吹き込まれ、薄墨の笛は息を吹き返します。その音色の恐ろしいこと。まさに義経の魂が乗り移り、旋律が螺旋を描き、聴く者の心をえぐるような響きであります。
現在は横笛奏者の第一人者、赤尾三千子さんが定期的にメンテ及び演奏会でその恐ろしくも妖艶な音色を披露されております。
薄墨の笛はまさに日本が誇る“音の世界遺産”といっても過言ではありません。
当コミュニティでは主に、薄墨の笛の演奏会、さらには赤尾三千子さんをサポートしてまいりたいと思います。
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