市民公開講座「小さないのちから見える生と死」
映画「犬と猫と人間と」自主上映
飯田監督ミニ講演会
北多摩クリニックでは、かかりつけ医として、看取りの援助をすることがあります。その中で時に感じるのは、「入院」という言葉で表される医療というものが、必ずしも、治療や症状緩和の手段としてだけ、とらえられているわけではなく、多くの方は、「死は医療の中にあるべきもの」と考えているらしいことです。
病棟は、私たち医療者にとってホームでも、利用者にとってはアウェイです。家は、利用者にとって、最初からその方のあるべきホームであり、安心なはず。では、何を期待して、アウェイである入院を選択しているのか。案外、利用者にも医療者にも、はっきりとした答えがないのかもしれません。姥捨て山伝説には、生死と正面から向き合う姿勢がありますが、問題を実際には解決するわけではない「入院」は、死を医療の中に閉じ込め、自分の目の前から見えなくするだけで、まやかしの安心感を得ているだけなのかもしれません。その意味で「入院させれば安心」が、本当の姥捨てになってはいないでしょうか。
「生と死の教育の場」でもあった多世代同居、村社会が少なくなり、8割の方が、病院で最期を迎えることもあり、「人の死」を想像しづらく、死と死にゆく人は、身近にあってはいけない時代になっているようです。核家族として長期間、離れて暮らすうちに、心の距離が生まれ、大切であるはずの肉親の死にさえ責任をもてない方たちが多い印象もあります。
癒しをもたらすペットは、自らの腕の中に、いのちの終わりまで守るべきものとしてあり、家族感の薄れた肉親よりも身近にいる動物たちの、その小さないのちを通して、人の死も想像できるのではないかと考えます。大切な家族である動物を、腕の中で優しく包み看取ることができるのであれば、大切な人も、手を握りながら、家庭で最期を迎えさせてあげられるのかもしれません。
私たちは、「いのち」について考えるきっかけにしてほしく 2010年6月5日(土)15時から 東京都清瀬市 「きよせ児童センター ころぽっくる」において、勇美記念財団の助成を得、公開講座「小さないのちから見える死生観」を開催し、映画「犬と猫と人間と」を見ていただいた後、監督講演、監督とのディスカッションをすることにしました。
・映画「犬と猫と人間と」上映
犬や猫を、家族の一員として可愛がる人が多いペット大国 日本の現状は、必ずしも動物たちにとって恵まれたものではありません。営利優先のペットショップは、無責任な飼い方をし、不法投棄することもあり、日本全国で年間30万頭の犬猫が処分されていますが、動物好きの方でも、その現状を想像したり、直視できたりしているわけではなさそうです。自分、そして自分の家族(ペット)への惜しみない愛情の一方で、他人への無関心とも通じる、身近ではない距離にある、処分される犬や猫の姿が描き出されます。