このコミュは哲学・思想のジャンルに入るコミュニティーです。
ノブレス・オブリージュまたはノーブレス・オブリージュ (フランス語:noblesse oblige) は「貴族の義務」あるいは「高貴なる義務」のことである。英語では「ノーブル・オブリゲーション」(noble obligation)と言う。一般的に財産、権力、社会的地位の保持には責任が伴うことを指す。一般的な用法ではないが、慇懃無礼あるいは偽善的な社会的責任について蔑視的に使われることもある。また、実際の歴史では、貴族などの特権と贅沢を正当化する隠れ蓑となった側面もある。
起源
この言葉の意味する概念自体は、新約聖書の福音書に由来している。「すべて多く与えられた者は、多く求められ、多く任された者は、更に多く要求される。」(「ルカによる福音書」12章48節)(新共同訳)。
ファニー・ケンブル(1809-93、イギリスの女優)が1837年に手紙に「‥確かに『貴族が義務を負う(noblesse oblige)』のならば、王族はより多くの義務を負わねばならない。」と書いたのが、この言葉が使われた最初である。
倫理的な議論では、特権は、それを持たない人々への義務によって釣り合いが保たれるべきだという「モラル・エコノミー」を要約する際にしばしば用いられる。最近では主に富裕者、有名人、権力者が社会の模範となるように振る舞うべきだという社会的責任に関して用いられる。
「ノブレス・オブリージュ」の核心は、貴族に自発的な無私の行動を促す明文化されない社会の心理である。それは基本的には、心理的な自負・自尊であるが、それを外形的な義務として受け止めると、社会的(そしておそらく法的な)圧力であるとも見なされる。
法的な義務ではないため、これを為さなかった事による法律上の処罰はないが、社会的批判・指弾を受けることはしばしばである。
実例
古代ローマにおいては貴族が道路や建物などのインフラ整備などの建築費を自腹を切って支払うこともあった。その代わり建設した道路や建物に自分の名前をつけることもあり、例えば有名なアッピア街道はアッピウス・クラウディウス・カエクスによって建設された。
現代のアメリカでは、裕福な人物や著名人がボランティア活動をする事は当然とされ、しない方が特異視されやすい。これは企業の社会的責任遂行(所謂CSR)にも通じる考え方である。「最近どういうボランティア活動をしていますか」と問われて、「何も」と答える事は、地域社会にとけ込む事を困難にしかねない。
貴族制度や階級社会が残るイギリスでは、上流階層にはノブレス・オブリージュ(ノーブル・オブリゲーション)の考えが浸透している。第一次世界大戦で貴族の子弟に戦死者が多かったのはこのためであり(皆志願して従軍した)、フォークランド戦争にも王族(アンドルー王子など)が従軍している。現在でも、例えば高校卒業後のギャップ・イヤーに、ウィリアム王子がチリで、ヘンリー王子がレソトの孤児院でボランティア活動に従事している。またウィリアム王子はホームレス支援事業のパトロンでもあり、自ら路上生活体験さえした。
用例
ウィリアム・フォークナーはこの言葉を、『響きと怒り』"The Sound and the Fury"や『エミリーへのバラ』"Rose for Emily"を含む小説や短編の中で度々用いた。
ジェニファー・トルバート・ロバーツの著書"Athens on Trial"によると、古代アテナイの公共奉仕におけるノブレス・オブリージュの例があるという。古代アテナイでは、戦闘用船舶の供給や饗宴の開催、合唱団の訓練などが公的な義務として裕福な市民に割り当てられていた。ロバーツによれば富裕者たちは非常に高価なこの種の特権に関し、明確に相反する感情を抱いていた。
(なお、この例は、現代のノブレス・オブリージュとは若干意味合いが異なるようである。古代ギリシア社会は奴隷制を取っており、奴隷に上記の義務を割り振ることはできなかったという側面もある。)
関連語
* 貴族制
* 騎士道
* 武士道
* ロータリークラブ
* 仮面ライダーカブト
関連コミュニティー
困ったときには