妹がレイサーになると決心を打ち明けたとき、俺は祖父の血筋を感じずには居られなかった。
九月にネバダで行われるリノ・エアレース。レシプロ飛行機による史上最速のスピードレースだ。
妹が乗り込むのは黄色に染め抜いた、フルカスタムされたP-51ムスタング…かつての祖父の機体だ
祖父はWW2のエースだった。朝鮮戦争でミグから寮機を庇い被弾するも、祖父は基地へ帰って来た。
戦傷が元ですぐに亡くなったが、祖父の機体は運命の悪戯か、偶然俺達兄妹の手に渡る事になる。
俺がレストアし、妹が操縦手となる。空に魅入られた血筋は戦場をアンリミテッドクラスに求めた。
そこはまさに戦場だった。#4ダゴ・レッド、#7ストレガ、#77レアベア…生きた伝説に俺達は挑んだ
そして忘れもしないあの日…宿敵ダゴ・レッドに食らいついた妹。アナウンスに場内から歓声があがる
「レーススピード507!」オーバー
500mph。俺達が追い求めた夢の世界。だがそれは悪夢へ変わった
「オイルスモークだ!」白い噴煙を上げる青い機体。高度を上げろ!脱出するんだ!だが機体は…
「スピード520,30…ああ神様!」妹が爆発した。俺は涙を堪える。妹よ、お前は誰より速かったぞ!