――1522年9月6日
その時、歴史は動いた。
ポルトガルの航海王マゼランが、『人類史上初』航海で世界一周するという偉業を達成したのだ。
地球は平面だという従来のキリスト教的観念が崩壊した瞬間である。
2009年、同日。
総勢38人に及ぶ紳士淑女が羽田空港に集結した。
指定チケットを手にした一行は、改札を我が物顔で通過した。
その姿は、一般車を横目にほくそ笑みながら夢のハイウェイランドへと入園するETC搭載車を彷彿させるモノだった。
いや、どこまで行っても10500円というこの旅は、まさに旅行界のETCと言っても過言ではないだろう。
スペースマウンテンのような通路を突破した一行を待ち構えていたのは、文明の利器とも云うべき細長い飛行物体だった。
しかし彼らは一瞬のひるみも見せずその中へとロケットダイブした。
機内アナウンスと共に、シートベルトを締める音が響き渡る。
出発を待つ一行の眼は、遥か北の地に燦然と輝く桃源郷へと確実に向けられていた。
機内の小刻みな震えが、徐々に不気味な揺れへと変わる…
その刹那、地を揺らす飛行物体は虚無の空へと大きく解き放たれた!
…
……
ふと、窓から見下ろしてみる。
全てが小さい。
あのビルも、そのタワーも、小指一本で倒せそうだ。
嗚呼、人間はこうして己の強さを愚かにも過信していくのだろうか。
good bye,東京
そして
hello,北海道
『キミニ、ワクワク。』
ワクワクさんは小さく呟いてみせた――
困ったときには